WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『猿の見る夢』(著者:桐野 夏生)

2017-03-12 19:59:48 | 本と雑誌

平穏な日々が続いている。忙しいが、寝室のエアコンを撤去してからこっち、今までの不眠の日々が何だったのだろうというくらい良く眠れる。エアコンはマンションを買った時に付けたものの、冷えすぎて一晩もオンにしたことがなかった。ベッドの枕に頭をもたせかけた10秒後には、ぐっすりと深い眠りの世界に落ちてしまう。食欲も旺盛で、週に1回は行くビストロのマダムにこの前「健康そのものですね」と顔をじいっと見ながら感心された。毎週、今週末こそは風邪でダウンすると思っても乗り切ってるし。前には口内炎ができるといつまでもひどく荒れて、ズキズキと治らずにいたのに、今週会社の打ち上げでビールを深夜まで飲みすぎて翌朝、あ痛いなと思っても翌朝にはちゃんとふさがっている。睡眠食事と基本的な欲望がちゃんとあるのは、春が来たからかしら。

このところ、子供の頃に読んだ「戦争と平和」を本腰入れて読み始め、これがなかなかの読み応え。私はだいたい週に1冊のペースで本を読む。膨大に本を読む読書家の先輩諸氏から、面白そうと買った本を最後のほうまで読み進め、ん?何かこの箇所は読んだ気がするぞと気になって本棚を捜索すると、奥の方にやっぱり同じ本がある、それも1冊じゃなくて2冊ある(笑)と聞いて、私ももう少しトシをとってくると同じことになるかと怯えているのだけれど、ほっとしたことにかなり覚えている。キンドルで6冊くらいの量だが、一度プルーストを読破するとどんなに長大作でも余裕なものだ。

トルストイの合間、気分転換に現代ものを読んだら非常に面白かった。家族に愛人、それに気になる美人の会長秘書の間で独楽のようにクルクル回る、自己中心を絵に描いたような定年間近の男。ケチで見栄っ張りで上昇志向が強く、自分のことしか考えてなくて、そのくせ小心者で・・・という主人公が、自分では出世も女関係も周到に計算しているはずなのにいつしかジワジワと重たい砂の穴に落ちていく。この人の作品はちょっと異常なくらいの価値観のシュールさが普通の世界と抱き合わせになっていて、いつも、濃さとバランスに感心する。描き切られた煩悩の重たさに、読み終わってふうとため息をついたら、周囲はうららかになりつつある春。日が長くなり大気は爽快、読書に最適な季節である。

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