WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『ミレニアム5(上)(下)』(著者:ダヴィド・ラーゲルクランツ 訳:ヘレンハルメ 美穂/久山 葉子)

2018-02-12 20:30:05 | 本と雑誌

年末から年始にかけて大量の本を処分した。思いたったきっかけは文庫本。掃除のとき本棚にクリーナーをかけると、薄いのでだんだん背表紙が傷んでくる。今や夏目漱石も森鴎外もkindleで読めるし、本棚を新しくして入りきる分だけ残せばいい。ここで大抵の場合、捨てようと思う本をつい読みふけったりして意外に長い時間が経過するものであるが、心を鬼にしてどんどん整理を進め、20分ほどで分別完了。にしても最後まで残そうか残すまいか迷ったのがこの「ミレニアム」シリーズである。

10年ほど前、日本で初の翻訳が出た頃からのファン。特にリスベット・サランデルが峻烈なデビューを飾る1巻目が大好き。ミカエルが極寒のヘーデスタで暮らす静かな日々は何度も繰り返して読んだ。ハヤカワの書体と行間の雰囲気、ページをめくるときの味わいもいい。だが厚いハードカバーで上下合わせて8冊、しかもこの最新刊からkindleにしちゃったし、残すと本棚のスペース的には、数年前に苦労して読みきり半端ない達成感を得られたプルーストの「失われた時を求めて」を捨てることになる。うーん・・・と迷うことしばし、やっぱりこちらを選んでしまった。「失われた」は次にまた、最初から最後までじっくり読みたい気力があれば(あるのか?)、新訳のほうをトライすればいいし。

前3部作が世界的大ベストセラーとなっただけに、ダヴィド・ラーゲルクランツが続編を引き継いだ4作目は、著者が変わって大丈夫なのか期待と不安の前評判が交錯したものの「うわ、面白いじゃん。それにミレニアムっぽい」と読者から圧倒的な支持を得た。今回はじっくり試される作品であろう。私的には、欲を言えば、もっとリスベットの多面性を破天荒に描いて欲しかったかなぁ。だけど個性と世界観を残しつつ迎合せずに新しさを取り入れるのは至難のワザで、そういう意味でとてもバランスよく、読んでいて楽しめた。冒頭に「今までになかったヒロイン」を鮮やかに登場させ、3作かけて壮大な物語を社会的な課題も織り交ぜて結実させた前作みたいに、どこかで大きなテーマがつながるのか。次作も期待。