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美味礼讃 (上) 著者:ブリア-サヴァラン 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2005-08-19 |
標準的フランス人なら誰でも、体の一部になっている言葉のひとつに「gourmand(グルマン/美食家)」というのがあって、それはこの18世紀の名著が起源。前に読んだフランス語のテキストに一部が抜粋されていて、全部読んでみたかった。紀伊国屋書店でワイド版岩波文庫のコーナーができていた中に発見して嬉しく購入。
さすがフランス人のバイブル、哲学的構造的にあらゆる美味について豊かなボキャブラリー駆使して論じる。美食というと奢侈、つい、もどしてまで長時間の宴会を楽しんだローマ貴族をイメージしてしまうが、とんでもない、サヴァランは、健康とさわやかな気分を維持するためのものと冷静に割り切って、「料理は皿数を多くせず、重いほうから軽いほうへ、反対にお酒はあっさりしたものから芳醇なものへ」なんて実際的。ホットチョコレートは最も弱い胃に効く、百薬の長だそう。他たくさんの料理への考察すばらしく、我々の短い人生の中で他のあらゆる享楽の疲れを癒してくれるのは美味学、と言い切られると、深い説得力にうんうんとうなずいてしまう。
ちなみにこのワイド版、おなじみ藍の唐草模様の装丁に、少し明るい群青に金で同じ模様をいれたしおりの組み合わせが知的に美しい。とても秀逸だ。本のデザインというのは大事で、これは手にとるたびにいいなぁと思う。下巻も愉しみ。