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手塚眞監督『ばるぼら』

2021-04-22 01:21:00 | ノンジャンル
 手塚眞監督・編集の2019年作品『ばるぼら』を「あつぎのえいがかん kiki」で観てきました。

「映画『ばるぼら』公式読本」に掲載されている「STORY」に大幅に加筆・修正をさせていただくと、
「人気小説家・美倉洋介は、華やかな地位と名声を手にしつつも、どこか何か物足りない日々をやり過ごしていた。実は彼は、誰にも言えない悩みを抱えていた。
 街のショーウィンドウに立つマネキンや、自分の許嫁が飼っている犬にさえも、幻覚を見るように欲情してしまうのだった。
 ある夜、美倉は、街の片隅で薄汚れたコートを羽織って道に寝転んでいる、酔っぱらいの女・ばるぼらの存在に気づく。思いがけず彼女を連れて家に帰った美倉は、彼女にコートを脱ぐように言い、シャワーを浴びるよう命じる。彼女がシャワーを浴びている間に書いた文章をばるぼらは読んで、美倉を罵倒する。美倉はばるぼらを家から一旦は叩き出したのだすが、それ以来、彼女がいることで、不思議と創作意欲が湧き上がってくるのだった。
 また美倉が幻想を観て欲情すると、不思議と必ずそこにばるぼらが現われ、幻想を退治してくれた。
 常にウイスキーを片手にぶらぶら彷徨い、時に恥じらいなく服を脱ぎ捨てる、まさに天衣無縫なぱるぼら。そんなばるぼらが横にいてくれるだけで、美倉も酒を常に手にして、ばるぼらからもらった万年筆を使い、冴え渡った自らの感覚の導くままに、次々と文章を創り出すことができた。
一方、美倉の秘書は、これまでと変わってしまった美倉とばるぼらの仲を引き裂こうとするが、彼女はばるぼらの呪いによって、大型トラックに牽かれ、死線をさまよう。
 もはや、お互いに離れることができなくなった美倉とばるばらは、結婚式をあげることを誓い、ばるぼらの母は見たこともない文字で書かれた契約書に対して美倉にサインをさせ、血判を押させる。そして極秘で行なわれていた結婚式に、美倉が大麻をやっているアジトだと勘違いした警官らが乱入し、結婚式は中断。ばるばらの母は美倉に「裏切ったな!」と捨て台詞を残して逃げ、美倉は大麻をやっていたことが大々的に報道され、仕事を失う。
 大型トラックのケガから復活した美倉の秘書は、出版社に頭を下げまくって仕事を探してくるが、美倉は仕事に手を付けようとしない。そうした美倉の態度を叱責する秘書。
 ばるばらを失ってしまった美倉は廃人同然となり、生きる気力さえも失ってしまったが、街角で踊るばるぼらをたまたま発見。逃げるばるぼらを追いかけて抱きしめる。ばるぼらは「母の復讐が怖い」と言うが、美倉は「二人だけで暮らせる場所へ逃げよう」と言う。
 二人は車で山の奥へ逃げるが、途中で車のエンジンが止まってしまう。(ここでは大勢の信者とともに呪いの呪文をかける、ばるばらの母のシーンと、ばるばららが逃げるシーンがカットバックされる。)徒歩で森の奥へと進む二人。ばるぼらはもう歩けないと言って、木の下にしゃがみ込むと、美倉は「ここで二人で死んでもいい」と言い出し、それを聞いたばるばらは美倉に馬乗りになって、美倉の首を絞める。苦しくて我に帰った美倉がバルボラの体をはねのけると、ばるぼらの後頭部が岩に当たってしまい、ばるぼらは傷を負う。
 そして二人は森の中の小屋に達するも、そこには食べ物はなく、「寒い」と言い出したばるぼらのために美倉がストーブに薪をくべている間に、ばるぼらは死んでしまう。
 ばるぼらの死を信じられない美倉はばるぼらを全裸にし、体の美しさを絶賛し、キスをして、そして死姦をしてばるぼらを蘇らさそうとするが、ばるぼらは動く気配を見せない。やがて美倉は狂気に走り、ばるぼらの体を食べ始め、ばるぼらの母と契約した際の、謎の文字を猛烈な速さで紙に書き連ねていく。
 そしてラストシーン。映画の冒頭で示された、街角で寝転ぶばるぼらの姿がまたスクリーンに映され、またばるぼらの犠牲者が現われることを予感させながら、映画は終わる。

 若い頃からポップな映画を撮って来た手塚監督でしたが、この映画ではポップな世界を推し進めていくと、やがて狂気の世界へ至っていくという好例を示してくれていると思いました。主演の稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんの存在感は半端ないもので、この二人の姿を一度スクリーンで見てしまうと、他のキャスティングは考えられないほどの素晴らしさでした。原作を読んで映画を観たいと思うことはよくあるかもしれませんが、この映画の場合には映画を観た後、猛烈に原作を読んでみたい欲望にかられました。とにかく映画ファンは必見の映画です!!