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鈴木清順監督『峠を渡る若い風』その3

2021-04-01 05:04:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 馬。花火。信太郎「野宿も楽しいですね」「お前みたいにのんきで楽天的な奴は珍しい」「世間はやっかいなことばかりだから、陽の当らないところから陽の当たるところへ、と考えてます。要は気の持ちようです」。花火。
 美佐子「東京に落ち着きたい」。
『昭和かれすすき』の歌。手を振る信太郎。船に乗った一座の者も手を振り返す。
 大太鼓。山車。
 夜。ねぶた祭。
 海岸沿いの道を歩く一座。
 秋田の竿灯祭り。
 夜の竿灯まつり。
 夕べに歩く一座。
 夜のバス。千場組の連中。「あの奇術の一家はどこへ行ったんだろう? あの娘っこたちは?」。信太郎、開けた窓に向かって大声で「おーい、おーい」。
 井戸の水を飲む恵。歩く一座。母「やっぱりストリップを加えた方が。あたしだけ東京に行って適当な子を捜してくいるから。5日もあれば追いつけるけど」座長「奇術が売りなんだ。俺の芸で客は集まる」。
 興行師「ふざけんじゃないよ。今時のお客がね。ストリップなしで来ると思うのかい? それが認識不足って言うんだ」(中略)「逃げた者はしょうがない。その代わりストリップなしじゃ看板と違うんだ。契約の金だけ払えねえよ。あっ、おカネちゃん。おカネちゃん。この小屋はね、おカネちゃんの歌でもってるんだから、しっかり頼むよ」おカネ「じゃあ歌ってきます」「まあ半分ってところだな」「日数も3日から2日に」座長「冗談じゃありません。うちの一座は奇術がうりなんです。ストリップなんて(中略)」「それが嫌ならキャンセルだ。この一座はな、メインの明美でもってたんだ。あんた一人じゃダメだから、あの歌手と抱き合わせにしたんだ」。
 舞台で歌う島倉千代子。
 バスから降りる千場組の者たち。井戸で水を汲む老女に信太郎「代わりにやってあげるよ」。“今井金洋一座”のポスター。静まりかえる楽屋。くだらないシャレを言った男「つまんないですね」。座長「会津の山口さんに泣きつこう。古い付き合いだし、興行界でも顔ききだ。困ったことがあったらいつでも相談に乗るって言ってくれてた。老いぼれたな。俺も」。
 道端で信太郎「ケンさんじゃないか」。
 恵「まあ、信太郎さん。お父さん、お母さん、信太郎さんよ。あなたの商売どうだった?」「まあまあだ」「いいわね」「はい、お土産」「ねえ、お父さん、開けて」信太郎「どうしたんです?」座長「あんたの出る幕じゃない」母「景気が悪いの」「奇術じゃもう客が集まらないのよ。栗田さん、お茶煎れてちょうだい」美佐子「見切り時が来たんだわ」座長「バカ」「お父さん、さっき勝俣さんから思い知らされたじゃない」「バカ。バカ。バカもん!」「お父さんの方がよっぽどバカだわ」母「お父さんも意地があることだし」座長「帰ってもらいましょうか。あなたには関係のないことなんだ」美佐子「他人の意見も聞いてみるべきだわ。私たちだけじゃ、またこの道をずるずると進んでいくことになるわ」「僕は失礼します」「信太郎さん。あなたの意見も聞かせて」「僕はあんたたちが好きだ。むき出しの人生に惹かれます。無責任かもしれないけど、できれば解散してほしくいないな」。驚く美佐子。(中略)
 信太郎「顔に傷のある男知ってる?」恵「知ってるわ。栗田さんのこと、しつこく聞いてたわ。右肩に刺青をしているかって」。
 山車。屋台。本を読んでる信太郎。「ケンさん!」「ぼつぼつ交代といくか?」「ケンさんって誰なの?」「ただの風来坊さ」。一座の望月、信太郎に「今晩10時に神社の裏に来い。組にちょっかい出しやがって。仲間を連れてきてもいいぞ」。
 栗田「とんでもねえ」。ケン、栗田に拳銃を向けている。「何かの間違いだ。金はない。座長から大切な手紙を預かっている。一座の運命を決める手紙だ」「ゲンさん、刺青を見せてくれ」「お前は誰だ?」「江崎組の客分よ」「やっぱり」「わしはもう足を洗った。タレコミもしてない。ヤクの扱いに嫌気がさしたんだ」「おかしいな。俺は殺すように言われてる」「わかった。ただこの手紙だけは届けてくれ。早くやってくれ」。信太郎、ケンの背中にペンを当て、ケンから拳銃を奪う。「あんたも嘘を言ったんで、これで五分五分だ」。信太郎、拳銃をケンに返す。拳銃を信太郎に向けるケン。「狂犬でもない限り、理由もなく人は殺さない」「しかし俺はその狂犬なんだ」。しかしケンは撃てない。「しゃくに触る奴だ」。信太郎「頼みがある。一座の望月に決闘を申し込まれてる。この際、あっさり片づけた方がいい。介添え人を頼む」「憎めねえ奴だ」。
 望月「やっぱり一人で来なかったな?」「オブザーバーだ。先に話しておきたいことがある」「ふざけんな」。喧嘩する二人。小豆の皿に首を突っ込む望月。赤いシロップ、黄色いシロップ、緑のシロップを浴びる信太郎。二人はお互いの顔を見て、笑いだす。

(また明日へ続きます……)