gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

宮田珠己『ニッポン脱力神さま図鑑』

2021-04-10 05:47:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんの2020年作品『ニッポン脱力神さま図鑑』を読みました。

 まず、「はじめに」の部分を転載させていただくと、
「日本を歩いていると、いろいろな神さま仏さまに出会う。神さま仏さまだけでなく狛犬のような神さまの使いもいてにぎやかである。
 ふらっと神社仏閣を訪ねただけで、本殿や本堂にあがらなくても、門前で仁王や狛犬に出会ってしまうし、ただの道端でお地蔵さんや道祖神に出会うこともある。
 この国ではそこらじゅうにむきだしの神さま仏さまがいるのが当たり前になっていて、さして信仰心のない私のような人間でも、なんとなくその前を素通りするのがはばかられ、立ち止まって手を合わせたりする。どこまで本気なのか自分でもわからないが、手を合わせてなんとなく納得するのである。
 そういうものだと思っているから路傍に神さま仏さまがいても、これまでは当たり前すぎてさして気に留めなかったのだけれど、あるときふと、なかに気になる神仏が混じっていることに気がついた。
 べつに得体の知れない神仏という意味ではない。石仏であれ、道祖神であれ、仁王であれ、狛犬であれ、それが何者かということは私にもだいたいわかる。けれど、その姿がよく知ったそれと違っていて、一度見たら妙に心に残る、そういうタイプの神さま仏さまがいたのである。
 それらは素性は仁王や道祖神だったりするが、それにしてはその定型を逸脱しており、見た目がユルかったり、素朴だったり、ときに雑だったり稚かったりもするのだが、そんな自由な姿がかえって私を魅了した。
 これまで端正なお地蔵さんや、にこやかな石仏、いかにもホッコリする道祖神などに手を合わせていながらも、実際は何も心に響いていなかった。ただ機械的に手を合わせていただけだ。だが、こうしたユルい神さまがいるなら話は別だ。
 以来、どこか古臭いものという思いが抜けなかった路傍の神仏に、親近感を覚えるようになった。
 この本はそうして私が旅で見つけた気になる神さま仏さまほか、狛犬などの造形をまとめた記録である。
 これらを宗教美術と呼んでいいのかどうかわからないが、そのユーモラスな味わいは一見の価値があると私は信じている。」

 ということで、この本で紹介されている神さまは、鹿児島県の「田の神さあ」、青森県の「鬼コ」、大分県の「国東仁王さま」、鹿児島県の「鹿児島仁王どん」、秋田県の「人形道祖神」、佐賀県・長崎県の「肥前狛犬」です。

 この本の特徴は、掲載されている神さま仏さまの写真が必ず載っていることで、それにちょっとしたコメントが書いてあるだけなので、見て楽しめる(しかも短時間で)本だということです。
 神さま仏さまには、著者が名付けをしていて、例えば、妙に色っぽい田のかんには「モンローたのかん」とか、「人気ナンバーワンたのかん」、「ウイスキーボトルたのかん」、「ラフスケッチたのかん」、「のっそりたのかん」、「スライム系鬼コ」、「二次元鬼コ」、「明るい力士風鬼コ」、「ダンシング仁王」、「糸電話仁王」、「赤チンニオウさま」などなど、そのユーモラスな名前は枚挙に暇がない。

 それから本全体の中から面白いと思ったエピソードを引用させていただくと、

・田の神さあにまつわる風習でとくに面白いのは、オットイ田の神である。オットイとは盗むこと。豊作の続く地域の田の神を盗んできて自分たちの地域に祀り、豊作を祈るという独特の風習があった。
 盗まれた側は、怒るのかと思ったら、かえって豊作に恵まれるとして喜んだという。盗むほうも「出稼ぎにいってくる」などと書き置きをして、3年後に土産の米俵や餅、酒、ニワトリなどを添えて太鼓や三味線を鳴らしながら元の地域に返しに来たそうだ。そのときは盗まれたほうも迎えの準備をし、互いに交流を深めたというから、今で言うウィン=ウィンの関係というやつだろうか。

・霧島神楽には五穀豊穣を祈願した田の神舞(たのかんめ)という番付があり、エロチックだったりユーモラスだったりする舞で観衆を笑わせるそうである。

・世にヘタウマと評される絵や像はいろいろあって、私はそういうものが大好物なのだが、それを好きかどうか判断するとき、絶対譲れない基準がある。それは真剣であるかどうかということだ。
 見るものを和ませようとして作ったのではない、まして笑わせようとして作ったのでは決してない、ちゃんと真面目な動機があって、真剣に作られたものであること。それが絶対条件である。そのうえで、もし作り手に高い技術があればこうはならなかったであろう表現が発現しているとき、私は強く惹かれてしまう。

 以上で、この本の紹介を終わろうと思います。本の題名にも「図鑑」と出ているように、何よりも写真を楽しむ本です。公共図書館には、おそらく置かれない種の本なので、アマゾンで中古品を安く買うことをおススメします。

 →「Nature Life」(表紙が重いので、最初に開く際には表示されるまで少し時間がかかるかもしれません(^^;))(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

 →FACEBOOK(ご自分の名前を入れて、FACEBOOKに登録しておけば、ご覧になれます)(https://www.facebook.com/profile.php?id=100005952271135