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マキノ雅弘監督『人生とんぼ返り』

2008-03-09 16:21:48 | ノンジャンル
 W0W0Wで「マキノ雅弘生誕100周年記念特集」と題して放送された、脚本も担当した'55年作品「人生とんぼ返り」を見ました。
 大正10年、大阪。斬られ役に殺陣の基本を教える頭取の段平(森繁久弥)は、酔っぱらい元役者だったんだと欄干の上でとんぼを切りますが、2回目に失敗して川に落ち風邪を引き、妻のお春(山田五十鈴)に怒られます。新国劇の座長の沢田(河津清三郎)が初めての時代劇をやると聞き、風邪をおして段平は駆け付け、演出家の倉橋(水島道太郎)にもっと激しい立ち回りがしたいと不満をぶつけていた沢田は、殺陣をやらせてほしいという段平にさせてみますが、沢田はリアリズムのある立ち回りがしたいのだ、と段平を相手にしません。お春の使いでお菊(左幸子)が舞台に酒を届けますが、段平は落ち込みます。が、酔ってケンカした段平はリアルな立ち回りが分かったと言います。段平の殺陣で舞台は大入りに。沢田は東京の明治座に打って出ますが、受けずに大阪に戻って来るという噂をお春は聞きます。お春はその時健康を害していましたが、段平には黙っていました。そこへ沢田から至急東京に来てくれと段平へ知らせが届き、段平が行ってからは沢田は生き返ったようになり大入り満員が続きます。沢田は病状が悪化したお春のもとに段平を返すため、立ち回りのない芝居をすると言います。段平は沢田に見捨てられたと誤解し沢田に抗議しますが、逆に何で奥さんのもとに帰ってあげないのだ、と叱られます。そして段平に会えないまま、お春は亡くなります。酔っぱらう段平。
 昭和3年、京都。段平は中風で床に臥せっています。昔の仲間が見舞いに来ると、先生の芝居が見たいと言うので舞台に連れて行くと、沢田は中風の国定忠治の立ち回りをしていました。沢田と倉橋は段平をバカにしていたと反省し、会いたいと話します。段平は中風の芝居がリアルでないと言って家で立ち回りをし、階段から落ちてしまいます。そして沢田に立ち回りを指導させてもらい、30円を借りて来てほしい、と仲間に言います。段平は夢でお春が明日迎えに行くと言っていたと言い、お菊には自分が実の父であることを匂わせます。段平はお菊の仕送りをこつこつ貯めた50円とこの30円、合わせて80円を沢田に借りていたので、自分が死んだら返してくれ、とお菊に頼みます。段平はお菊を相手に立ち回りを教えます。お菊は舞台に急ぎ、沢田は舞台を中断させ、お菊に立ち回りをつけてもらいます。そしてその立ち回りは喝采を浴びるのでした。段平はそれを見る事なく亡くなり、皆その死を悼みます。沢田と倉橋はお菊の実の父は段平だと言います。沢田には舞台の中で仲良くする段平とお春の姿が見えるのでした。

 自作「殺陣師段平」のリメイクです。最初から最後まで全編、愁嘆場の連続。立ち回りの華やかさを期待すると裏切られます。そうした中でひときわ光るのは、山田五十鈴の気が強いが夫思いのお春の存在でしょう。彼女が亡くなる場面をあえて撮らないマキノ監督の腕も冴え渡っていると思いました。前作は'50年作品、主演は月形龍之介ですから、森繁作品よりずっとシリアスなものだったのでしょう。しかし、前作もお春は山田五十鈴が演じています。マキノ監督も山田五十鈴のお春が気に入っていたのでしょう。おそらく'50年作品よりも、リメイクの方が楽しめると思います。オススメです。