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フィリップ・クローデル『リンさんの小さな子』

2006-12-21 16:20:03 | ノンジャンル
 今日も朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の対談で、松田筑摩書房編集員が推薦していた「リンさんの小さな子」というフランスの本の紹介です。
 戦争で家族を失ったリンという老人は、まだ赤ん坊の孫娘を抱いて、異国へ亡命します。ある日孫を抱いてベンチに座っていると、見知らぬ男バルクから声をかけられます。言葉が通じないことに男は気付かず、リンさんに話しかけ、リンさんが挨拶の「タオ・ライ」という言葉を言うと、男はそれがリンさんの名前だと勘違いしてしまいます。男は2ヶ月前に妻を亡くし、彼女がベンチの向かいの公園に見える回転木馬を動かす仕事をしていたのだ、と言います。
 リンさんは一人になると、孫に言葉を教えるために歌を歌います。「いつでも朝はある いつでも朝日は戻ってくる いつでも明日はある いつかはおまえも母になる」。リンさんはタバコをひっきりなしに吸うバルクと何回も会ううちに親しくなり、リンさんはバルクにタバコを、バルクはリンさんに孫娘のためのプリンセス・ドレスをプレゼントしあいます。
 やがて、リンさんはそれまで住んでいた難民施設から、鉄条網で囲まれた立派な屋敷に移されますが、そこでは外出ができず、バルクに会えなくなります。リンさんはバルクに会うために、屋敷を脱出し、町に出ますが、迷子になり、疲れきったところで、バルクにやっと出会えます。離れたところから、「こんにちは、こんにちは」と呼び合い、駆け寄る二人。しかし、そこへ車が突っ込んできてリンさんは重傷を負い意識を失います。優しく孫娘の名前を呼び、リンさんに話し掛けるバルク。リンさんは意識を取り戻します。そしてその腕にはリンさんの孫娘である人形がしっかりとかかえられているのでした。
 合間にリンさんの美しい故郷の様子、難民として非難する苦難、難民施設の様子などが語られますが、やはり松田さんが言っているように、ラストの「実は孫は人形だった」ということに驚かされます。とても平易な文章で、字も大きく、読みやすい文章です。日本の小説ばかり読んでいる方も、時にはこんなフランス小説もいかがでしょうか?