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伊藤たかみ『八月の路上に捨てる』

2006-12-19 16:19:06 | ノンジャンル
 昨晩の「コンバット」は珍しくリック・ジェイスン扮するヘンリー少尉が主役で、サンダース軍曹は出てきませんでした。また、1月からは放映時間が土曜深夜0時30分からになるそうです。要チェック!

 ということで、先日来話題にしている「2006年 この一冊」の対談の中で「ニートやフリーターがたくさんいる時代の、若い男性の微妙な感覚が見事にとらえられている」(松田)、「『今』を描いた作品」(真鍋)と紹介されている芥川賞受賞作、伊藤たかみさんの「八月の路上に捨てる」を読みました。
長篇「八月の路上に捨てる」と短編「貝からみる風景」の2作品からなっています。
 「八月の路上に捨てる」は、自動販売機の缶の補充を離婚歴のある女性の先輩とやりながら、離婚したての自分が、そこへ至った話を語る、という話です。
 大学時代に知り合い、映画の脚本家をめざす主人公は雑誌編集者をめざしていた智恵子とすぐに同棲し始めますが、希望通り編集者になれた智恵子は人間関係のもつれからその仕事を辞めてしまい、20万近くかけて通信制のアナウンス講座一式を買ってアナウンスの勉強を始めます。脚本家の夢は諦め、バイトを続け、そんな平凡な生活の先にもまっとうな幸せがあると考えるようになった主人公は、いつまでも夢を見て現実を直視しない智恵子に怒りを覚え、智恵子への気持ちが萎えて行き、逆にファミレスで知り合った美容師と愛人関係になります。そして土下座して離婚してくれ、と智恵子に頼み込み、今隣にいる女性の先輩に離婚届の証人になってもらい、明日離婚届を提出するという話です。
 「貝からみる風景」は、女性の主人公が勤めるスーパーの苦情ボードに「『ふう太郎スナック』が売り場から消えて困ってる」という苦情が頻繁に出されますが、そのような商品は存在しないことが分かります。その推理を夫婦でする、という話です。
 「ニートやフリーターがたくさんいる時代の、若い男性の微妙な感覚が見事にとらえられている」。そうでしょうか? 「『今』を描いた作品』」。これも違うような気がします。ニートやフリーターじゃなくたって、夢を捨て現実的に生きることによって、逆に日常的な幸福を追及する人はたくさんいると思うし、ニートやフリーターはいつまでも実現しそうにない夢にしがみついたり、そもそも働く気のない人たちのことをいうんでしょう?的外れもいいとこです。また、今でなくても昔から主人公のような人はたくさんいます。
 本自体はすんなり読めて、それなりに面白かったですが、引き続きこの著者の作品を追っかけていこうというところまでは、気持ちが惹かれませんでした。暇な人にはオススメです。