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小川洋子『薬指の標本』

2006-12-17 17:00:10 | ノンジャンル
 先日も取り上げた朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の対談の中で触れられていた小川洋子さんの「薬指の標本」を読みました。「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の2編の中編からなっています。
 「薬指の標本」は、標本室でバイトをする女性が主人公です。標本を作り保存する弟子丸氏と、標本にしてもらう物を持って来る人の対応に当たる主人公の二人が主な登場人物で、標本室に標本にしてもらいたい物を持ち込む人から費用を払ってもらうことで、標本室の経営は成り立っています。持ち込まれるものは生き物以外にも髪飾り、カスタネット、毛糸の玉、カフスボタン、化粧ケープ、オペラグラスなど多様な物で、大半の物は試験管の中に保存されます。ある日、火事で家を失った少女が焼跡に生えていたきのこを持ってきます。そしてしばらくすると、今度は自分の頬の火傷痕を標本にしてくれ、とやって来ます。弟子丸氏と彼女は標本を作る標本技術室に入ったまま、いつまでたっても出てきません。主人公は少女の顔から弟子丸氏が火傷痕を剥がしていく姿を想像します。そして最後に、かつて工場での事故で失った自らの薬指のえぐられた傷跡を標本にしてもらうために、主人公は標本技術室をノックするのでした。
 「六角形の小部屋」は、ある女性に目を止めた主人公は、引かれるように彼女の後を追って森を抜けるとそこには小屋があり、小屋の中には男女と六角形の小部屋があります。男女の話では、六角形の小部屋は、一人になって言いたい事をすべて言えるための空間で、入り口付近には料金を入れるガラスの入れ物も置いてあります。主人公も何度か小部屋に入り、二人とも仲良くなってきた頃、小部屋と男女は忽然と姿を消し、次の町へ向かうのでした。
 「薬指の標本」はフランスで映画化され、日本で映画化された「博士の愛した数式」は文庫も含めて200万部も売れたという世界的な作家なのだそうです。が、私が読んだ限りでは、そんなに面白くはありませんでした。一册で判断するのは危険なので、「博士の愛した数式」や、谷崎潤一郎賞を受賞した「ミーナの行進」も読んでみようと思っていますが、それにしても、とても「世界的な作家」だとは思えないのですが、どうでしょうか? 皆さんの意見も伺いたいところです。