えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

87歳のシャンソン

2014-09-24 09:15:09 | 歌う

           ♪♪♪   87歳のシャンソン   ♪♪♪

   真夜中のラジオにいまも中年の越路吹雪が「枯葉」を歌う   松井多絵子

 越路吹雪って何?って方も多いかもしれない。昭和の宝塚歌劇の男役の大スターである。、母が彼女のファンだったので宝塚歌劇はよく観た。もし私が容姿端麗で唄えたら宝塚に、、なんてこともあったかもしれない。囁くように歌う越路吹雪のシャンソンが好きになり、ほんもののシャンソンが好きになり、なぜか短歌を歌うようになってしまった。秋は私にシャンソンをぐいと近づける。87歳のシャンソン歌手が今日から日本で公演、22回目の日本公演をするのはフランスの歌手、ジュリエット・グレコ。24日に東京・すみだトリフォニーホール、26日に東京・オーチャ―ドホール、30日に大阪・フェスティバルホールで。

               われのシャンソン     松井多絵子

     町なかの広き家屋が壊されて名もなき遺跡にひかりが集う

     いまここにギターを抱えた青年があらわれラ・ビ・アン・ローズの唄を

     カセットのダミアよ「暗い日曜」を火曜に聴いてもかまいませんか

     おそらくは黒のドレスで唱ってるダミアの声はしだいに豪雨

 老女の皆様、 87歳のグレコが異国の大劇場で唄うなんてうれしいですね。フランスは日本と並ぶ女性の長寿国だそうです。地中海を望む庭に、大きなレモンが実ってるのを眺めながら観葉植物に囲まれて広いリビングで暮しているグレコ。 隣家の出窓の観葉植物を眺めながら狭いリビングで暮らしている私。    松井多絵子  9月24日

       ※    ※    ※    ※     ※     ※     ※

◆ 文芸情報   第1回新潮ミステリー大賞 (新潮社主催)

    彩藤アザミ (24) 川崎市在住    受賞作 『サナキの森』

         ☀☀☀  賞金は300万円  ☀☀☀


田丸まひる歌集・『硝子のボレット』

2014-09-23 09:16:18 | 歌う

         田丸まひる歌集・『硝子のボレット』

 三年前に 「未来」の会員になった 田丸まひる は30代の女子、いただいた彼女の歌集を緊張しながら読んだ。10年前に第1歌集『晴れのち神様』を上梓、未来入会後1年で 「未来賞」 を受賞している。選考委員の一人の加藤治郎は応募作 「ひとりひとり」を初めて読んだとき「問いと否定を畳みかけてくる、欲望を隠さない、その熱量」に圧倒されたらしい。『硝子のボレット』の帯は紫、白文字の加藤治郎の言葉は<行為の果てにあるもの>

 おなじ結社でも彼女に私は会ったことがない。彼女についての情報は作品からである。恋の歌が多いが、私は精神科医らしい彼女の仕事の歌に関心がある。

  ♠ もぎたての不定愁訴をぶちまけた診察室の壁がふるえる

  ♠ 眠れずに白身魚を焼いたこと電話報告される真夜中

  ♠ 一生眠れる薬ほしがる女子生徒に言い返せない 夕立ですか

 恋は誰でも詠める。相手がいなくても架空の恋。この3首は医者でなければ詠めない。

  ♠ 父親になってくれないひとなんか捨ててしまえと書く診断書

  ♠ やわらかな睫毛がゆれる思春期の恋のはじまりカルテに記す

 精神科の患者は恋を患う女が多いのだろう、田丸まひる医師も恋の患者になることも?

  ♠ 愛してるどんな明日でも生き残るために硝子の弾丸を撃つ

 歌集最後の頁に1首のみ収められたこの歌から 「ボレット」とは弾丸であることを知る。

         ※   ※   ※   ※   ※   ※ 

  田丸まひるサマ  生き残るために私もガラスの弾丸を撃ちたいです。

                       9月23日   松井多絵子


女か、男か

2014-09-22 09:02:27 | 歌う

              → 女か、男か ←

✿ 女が強くなったのではない男らが子猫のようになっただけです   松井多絵子   

  数日前の夕方、わたしは渋谷から地下鉄半蔵門線に乗った。運よく座れた。私の前につり革をつかみ、立っている人がいた。老人だと席を譲らなければならない。でもその人は若いひとらしく見えて安心した。老人の私が老人に席をゆずる必要はないのに。私の方が年上かもしれないのに、長年の習慣でつい 「どうぞ」 なんて言ってしまうのだ。

 ピンクベージュのジャケットに青いハイネックのシャツ、灰色のズボン。髪はやや長く前髪をたれていた。ショルダーバッグも男女兼用タイプ。はじめは女に思えたが男にも思えたころ、赤坂見附でその人は降りた。女か男かわからない人が。冬になると街ですれ違う人の性別がわかりにくくなる。コートは体の線を消す。さらにマフラー、フード、マスク、私はおそらく男に見えるだろう。

 このごろ若い男の女装が流行っているらしい。女装イベントが盛んだとか、学園祭でも 「可愛すぎる男」 が話題になっているとか、ほんまかいな と言いたいが、歌舞伎の女形の人気が続いているのだ。男たちにも、可愛がられたい という願望があるのだろう。可愛がられることは受け身だから楽である。可愛く装うことは楽しい。女の最大の楽しみを男たちも欲しくなったのか。「女装サロン」 や 「女装通販」 まであるらしいが、ファッション業界は女だけでは売り上げが伸びない、男たちにも、、、かもしれない。男子たちよ、女子たちの服や装身具の売れ残りの品々を買わされているのかもしれませんよ。女子たちよ、あなたの古着を彼にプレゼントしたら、そしてA級グルメをおごらせる。私もあの男子にやってみようか。

 見られたいという願望は人間だけかしら。出窓のサボテンも私に見られたいかしら。

                       9月22日   松井多絵子


リンゴ・りんご・林檎

2014-09-21 09:24:42 | 歌う

           ● リンゴ・りんご・林檎 ●

 3日前にスーパーでりんごを2個買った。Lサイズ1個98円、本日限りのセール。積み上げられたのりんごは形が歪んでいるものばかりだ。それだけで特売品にされるなんて気の毒なりんごたち。メロンは贈答に使われることが多いためか、見た目が悪いものは有名でないスーパーではとても安い。野菜だって見た目。わたしは外見を無視して安くていい品を買うことにしている。今は見てくれの時代。かわいい子、イケメン、カッコいいことを言うひとが大活躍。マスコミ、特にテレビが軽薄人間を育てているのではないか。歪な、でも安いりんごを買うことは、私のマスコミへのささやかな反抗かもしれない。

 リンゴ・りんご・林檎、おなじ果物でも表記でイメージが変わる。北原白秋の代表作として知られている1首の下句、 雪よ林檎の香のごとく降れ はリンゴだったら名歌になっただろうか。斉藤史の りんごの花のゆふべは霞むほの明かり は林檎だったら霞まないのでは。

 私もりんごをよく詠んでいる。「りんご」の表記が少ないのは平仮名表記の多い歌のなかに「りんご」では「りんご」の存在があいまいになるからだ。斉藤史の場合 初句がりんごの花だ。斉藤史は長野県に住み、りんご倉庫の端に畳を入れて生活した時期もあり、多数のりんごの歌を詠んでいる。特に意識することもなく、りんごが詠まれているようにおもえる。

                林檎、リンゴのうた    松井多絵子  

      わけありの果物売る店ひと山のリンゴそれぞれわけありの顔

      静物となりて林檎は卓上に明暗のある歪な球体

      剥きゆくに林檎の皮がつと切れて我はまもなく今日を失う

      私より私に賀状を書いてみる、今年は青いリンゴになります 

          

         もうじき10月、そして年賀状、、、あら、まあ、もう12時

                       9月21日  松井多絵子

 

 

                   

    


平成生まれの詠う男子

2014-09-20 09:34:32 | 歌う

           ・・・ 平成生まれの詠う男子 ・・・

 昨夜わたしは平成生まれの男子たちとオシャベリすることができた。彼らは私より半世紀も遅く生まれている。昭和という時代を知らない世代。あの得体の知れない膨大な歳月間を知らない男子たち。彼らが短歌界のリーダーになろうとしている。如水会館スタールームで開催された短歌研究の授賞式で、新人賞も評論賞も大学短歌会の平成生まれの男子たちだった。

 ★ 第57回 短歌研究新人賞  石井僚一 受賞作 「父親のような雨に打たれて」 

 昨夜の祝宴にはご両親も祖父母も出席されていたそうだが私はお目にかかれなかった。父上にぜひお会いしたかったのに。受賞作についてはすでにブログに書いている。「亡くなった父」として。その父の亡霊ではなく北海道から上京された父上。受賞作が虚構であると石川は檀上で言った。胸には赤いバラが。寺山修司も生きている母を亡き母にした歌を作ったことはあったが。虚構とはなんだろうか。私はわからなくなってきた。

 ★ 第32回 現代短歌評論賞  寺井龍哉  受賞作品 「うたと震災と私」

 (略)しかしこの作品の読みに必要なのは、作中主体と作者を分離し、石川のように両者をつなぐ作歌行為の意義を読み取る。変質した私性の概念だろう。(略)

 これは昨日頂いた受賞者リストに載っている寺井龍哉の受賞作のごく1部である。短歌研究10月号に掲載されるので私はまだ読んでいない。読んでも難しくて理解できないような気がする。彼は1992年生まれ。東京大学入学とともに本郷短歌会へ入会、大野道夫氏の指導を受ける。2013年、短歌研究新人賞最終選考通過、半月歌会に参加。現在、本郷短歌会、半月歌会所属、東京大学文学部在学中。長身でカッコイイ。ああ眩しい平成男子。

    寺井龍哉サマ  あなた 「満月歌会」 に所属なさったらいいのに。

                      繊月歌会会員  松井多絵子 9月20日