えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

自殺したひと

2014-09-13 09:12:18 | 歌う

            ❤ 自殺したひと ❤

 昨日は102回、あと8回で朝日連載の「こころ」は終わりか、Kの自殺は来週か、と思いながら読んでいたら突然すさまじいシーン。先生と襖をへだてた隣室でKは自殺していた。眠っていて気がつかなかった先生の衝撃。~襖に迸ばしっている血潮を始めて見たのです。~

 1年4か月前だった。わたしがEさんの自殺を知ったのは。おなじ結社の会員だが全く知らない方だった。ある日届いたハガキに 「歌集・厚着の王さまを1部購入させていただきたく、、。」と書かれていた。私が郵送するとすぐに丁寧なごあいさつに図書券5000円が添えてあった。私は恐縮した。歌集は1700円なのに。第1歌集をさしあげることにした。「えくぼ はわたしの長女で売れ残りの娘です。すこし生意気な娘ですがつき合っください」。と謹呈用紙を添えて。その後Eさんから 「えくぼチャンと仲良くしてます。大切にします」と。

 誌上で見る彼の作品は抽象的で個人情報は全くわからない。歌人名簿にも掲載されていない。わたしの歌友はだれもEさんを知らない。名前から男性だとわかるだけだ。『えくぼ』 には自殺をテーマにした連作「自害谷付近」20首が収められている。Eさんはどのように読まれたか、昨日「こころ」を読んでから私はEさんのことばかり思っている。

        「自害谷付近」 より六首     松井多絵子

 書かぬまま遺品となるかも引き出しの原稿用紙百二十枚

 自殺する人がいるかも球場のこの三万の観衆のなかに

 昨年の形見のように柿の実がいくつか枝に残りていたり     

 はだか木の根方に立ちいてはだか木を支え続ける根っこが愛しい

 北風に押されてわれは自害谷付近にきている何も持たずに

 氷結の垂水が迫り木漏れ日がふいに見えなくなってしまった

                   9月13日   松井多絵子