メロディック・ハード/メタルが好き~♪

シンフォニックでメロディアスなのHM/HRのCDを中心に感想を書いていきます。サッカーやバレーのことも。

海辺のカフカ→ウミベノカフカ→ウイデモカクカ

2005-08-28 12:35:24 | Weblog
村上春樹氏の「海辺のカフカ」を読んでみた。
話題になったことあったし、書店の“大人になってからでもいいが、15歳の時点で一度お読みするのがお勧め”とあったので、16歳の息子に読ませるのもいいかもと思ったからだ。

内容は。。う~ん、出てくるファッションとか音楽とか、古い時代のものばかりで、私ならわかるけど、息子には到底理解できないだろうと思った。私の年代でも古いと思われる。作者の趣味なんだろう。

まず、この趣味の部分に引っかかって、素直に読めない。
書物の引用にしても、「このくらい読んでおけ」みたいな作者の希望というか脅迫を感じて、知らないことが悪いことのような引け目を感じてしまった。

普通、小説を読み終わったあとは、説明部分があっととしても、「そうなんだぁ~」と教わるような素直な気持ちで読み進み、読み終わったあとは知識が増えたため、自分が頭が良くなったような、軽い満足感を覚える。
が、「海辺のカフカ」では、引用部分を知らないといけないような難解さを持っている。一瞬シェークスピアを読んでみるかと思うが、思っただけで終わってしまう。
それはきっと、引用部分が物語の内容とうまくリンクされていないからだと思う。引用部分を知らなくても、物語を進めていけるのだ。
その引用に対する“無意味さ”が、私には作者の“脅迫”と映ってしまうのだ。
ない方がすっきりしていて良かった。


それらの装飾部分を取り除けば、なかなかに興味深い小説だった。
あり得ない設定、ありえない内容にもかかわらず、先を急いで読んでしまった。
そんな人物なんて絶対にいないと思いながらも、一見社会との関わりを持たない登場人物達の根底に、人に対する親切心、謙虚さが見られ、先の展開を心配しながら見守りたかったからだ。
時空にからめとられてしまった人たちの結末には納得できなかったが。

また、ホシノさんの言葉にあるように、私もまたナカタさんの存在や一風変わった話し方に好意を持ち、このようなしがらみのない生き方に惹かれたのかも知れない。

本筋は、カフカ少年の自分の忌まわしい過去と予言から決別するための、苦しみと葛藤、そして成長の物語なんだろうと思う。
私はその筋を追いながらも、なぜか共感は持てなかった。
それは、少年の判断力、洞察力、知識等が、この15歳の時点で私を上回っていたからだと思う。
私は淡々と違和感を感じながら少年の行為を追っていただけに過ぎない。
さらに、カフカ少年と大島少年との会話は、遥かに私の知的レベルを飛び越え、異次元の会話のように思えた。
そして何だか、実体がないのだ。

物語の中にも実体のない時間帯や異次元社会が登場する。
つまりは、この小説自体に実体がないんじゃなかと思う。

性の描写が多いのが気になったが、これは“実体感”を持たせるためのものとして、作者が意図的に組み込んだのでなはいかと勘ぐってしまう。
う~ん、悪くはないけど、むしろいいんだろうけど。。不思議な作品だ。


16歳の息子は、お笑い番組を見て笑っている。
その年齢の少年とは、そんなもんなんだ。