メロディック・ハード/メタルが好き~♪

シンフォニックでメロディアスなのHM/HRのCDを中心に感想を書いていきます。サッカーやバレーのことも。

スコットランドからの喝采

2009-06-21 09:07:49 | 中村 俊輔

マーティン・グレイグ著

マーティン・グレイグは、グラスゴー生まれのヘラルド紙の上級スポーツ記者である。
俊輔と同世代だ。
本著は、スコットランド人である彼の目を通し、俊輔がどう映ったのか、俊輔がスコットランドに与えた影響等が、詳しく考察されている。


読み終えて感じたのは、セルティックでの俊輔の一番のハイライトシーンは、やはり『2006年11月21日』だということだ。
俊輔は、ホームで行われたチャンピオンズリーグの、マンチェスターU戦で、残り10分を切った時点で、見事FKをゴールの右コーナーに叩き込んだ!
名手ファン・デル・サールの長身をもっても届かない、“切手を貼る位置”へ、千載一遇のチャンスをモノにした、奇跡的な得点!!
これにより、セルティックはチャンピオンズ・リーグの決勝トーナメント進出を果たし、俊輔はセルティックの伝説の選手になったのだ!

日本人が大舞台で活躍した事実を、私はものすごく誇らしく思ったが、グラスゴーの人々も、俊輔のサッカーに取り組む真摯な態度に心打たれ、俊輔を迎え入れてくれいたのがうれしかった。
それだけじゃない、俊輔の謙虚でサッカーに対するひたむきな態度は、いつしか子供達やチームメートのお手本になっていたのだ。
まるで俊輔の祖国がそこにあるかように、一緒になって祝福してくれたスコットランドの温かい対応に感動した。

言葉や文化が違っていようと、サッカーは世界共通言語。
どこにいようと、プレーだけで人々の心は掴める。
私はセルティックへの移籍は、俊輔にケガを与えるのではと初めは懸念していたが、2006年度のMVPも取ったし、大きな結果を残せて大成功だったと確信する。

常に努力し、人の倍練習して、さらなる高みを目指す俊輔には、教わることが多い。
身体能力の低さから、当たり負けするし、足も速くないと本著も書いているが、それを補って余りある視野の広さとパスの精度。
私がずっと俊輔の魅力だと思っている面だ。
それを磨き、激しいスコットランドサッカーに、ある意味正反対のパスサッカーをもたらしたのが驚きだ。
さらにセルティックに来て、守備をしなければレギュラーは取れないと悟り、プレースタイルを変えた柔軟性は、尊敬に値する。

本著を読んで初めて知ったのが、俊輔がレッジョ・カラブリアやグラスゴーとの文化の架け橋になっていたことだ。
俊輔の存在により、日本人観光客が応援に来て、経済効果を上げ、友好が深まる。
決して嫌な顔はされない。
一人の日本人を共に応援するといったシンプルなことで、お互いの好感度が増したのは、本当に喜ばしい。
レッジョ・カラブリアの地で、未だに俊輔の名前が笑顔をもって語られる事実はうれしい。

概ね好意的に書いてあるこの本を読んで、俊輔がいなくても、いつしかセルティック・パークに行ってみたいと思った。
スコットランドのサポーターの温かさと親切心に触れてみたいのだ。

『スコットランドからの喝采』は、サッカーが、セルティックのサポーターが、そして俊輔がどんなに素晴らしいかを投げかけてくれる本だ。


Eleuveitie の Evocation I: The Arcane Dominion

2009-06-14 10:06:09 | メロディック・ハード
民俗音楽にメタル色を取り込み、高尚なレベルで音楽性を極めているスイスのEluveitieの3rdアルバム。
今回も、ツインギターのヘビーでありながらメロディアスなメタルを聴かせてくれぇ~!と期待したものの、何かヘンだな。。

それもそのはず、今回はメタルを排除し、ケルティック音楽で勝負しているからだ。
いわば、アコースティック盤での新作。

ちょっとヘヴィーめなケルト音楽とすれば、なかなかの出来だ。
風景を思い起こさせる、哀愁を込めた情景描写は相変わらず冴え渡る。
2名の女性による2台のフィドル、アイリッシュ・フルート、ティン・ホイッスル、ロウ・ホイッスル、イーリアン・パイプなどのケルティックの楽器の、音色の持つもの哀しい特性がフルに生きている。
ギターは、アコギに変化し、アルペジオを奏で、脇役に徹している。
主役はホイッスル類(縦笛)だ。

Annaのボーカルは、力強さを増し、しっかりと地に足をつけている。
哀愁も感じさせるが、女性のしたたかさと切なさを感じさせる。
今回は、呪文のような一定のリズムを持ったボーカルが妖しく入る。
ラップではなく、あくまでも呪文に思えるのが彼ららしい。
男性のデス声は、少しだけあるが、違和感はない。

これはもはやプログレだろう。
70年代プログレと位置づけ、その中に浸って初めて良さを理解した。
あくまでも音楽性を求めた自然な流れと、時代に左右されない普遍的なメロディ。
一般受けを期待せず、あくまでも自分達の音楽性を求めた思い切りの良さがいい。
予定不調和が意識を掻き乱す。

土着的な崇高さが、どこまでも内面に食い込んでくる。
これも悪くはないが、メタルでギターザクザクの従来路線が、ずっと魅力的だ。