おじさん山伏です

修験道の修行から見た心の散歩です。
アイヌのアシリ・レラさんからの命名です。
「キムン・マタギ」になりました。

いのちの仕舞い(小笠原 望医師)から

2014-02-19 | 読書感想

四万十川のゲリラ医者走る!

「いのちの仕舞い」 小笠原 望著 春陽堂 ¥1300

つい最近、NHKTVで「こころの時代」で小笠原 望先生の話を見ました。

今、僕は保江先生の「愛魂」に熱中していますので「愛」について

いろいろと考えています。

小笠原先生をテレビで拝見していてその「愛」に感動しました。

早速、「いのちの仕舞い」を読み始めました。

四万十では、

「痛まず、苦しまず、できたら何か食べられて、

そして住み慣れた環境で最後を迎える」それを「いい仕舞い」と

地元の人たちは言う。(前書きから)

稽古では、小笠原先生のイメ-ジを抱きながら技を掛けて見ました。

やはり上手く行きます。

保江先生は、相手を愛するだけでなく世界でも神様でもを愛したら、

技が掛かりますと。

 

そのなかからの紹介です。

 

「まだ生きられるかね」

 

 ぼくの診療所の朝は早い。

八時から診療を始めるのだが、七時に診療所を開けると、

「順番を取る」ため、受付に名前を書きにぽつぽつと患者さんや家族の人が訪れる。

 

田舎のかかりっけ医が全部を予約診療というのもどうかと、今は午後の一部だけを予約している。

 

四万十川に架かる赤鉄橋は全長六百メートル以上はあり、

診療所から鉄橋を渡ると中村の町に入る。

この鉄橋を歩いて、町から受診する人もいる。

この橋の上は川風がけっこうきつく、とくに冬はお年寄りが歩くにはなかなか大変だ。

山本さんはこの鉄橋を手押し車を押してくる。

   グ-グルから

それも、朝早く一度「番を取りに来て」から、都合2往復するのだ。

 

 山本さんは八十四歳になった。

「ゆっくり、来たらどう」と言うと、

「朝は一番に診てもらわんと落ち着かん」と言って、八時にはまた来て待合室の椅子で待っている。

 

この頃は腰痛が辛く、整形外科で入院したり、

老健施設に入所したりしたが、長く続かない。

高知市に住む娘のところでも生活したが、やっぱり家がよいのだろう、また帰って来た。

 

 今度は風邪を引いてから、喘鳴が強くなった。

いつもは強気な言葉が多いのに、「困った、困った」の話が多くなった。

同居する息子に頼らずに、全部自分でしないと気がすまないのだ。

どんなに腰が痛くても、朝は息子の弁当を作る。

「コンビニかどこかで息子さんに買ってもらったらいいのに」とぼくが言おうものなら、

「弁当は作らないかん。あの子はそんなことはできん」の一点張り。

 

 「調子が悪くて、所帯ができん」と、いつもは強気の山本さんの弱音が出だした。

ケアマネ-ジャ-に電話をしたらしい。

老健施設に入所したいと伝えたそうだ。

もちろん、病気を治してからじゃないといけないと言われ、

どうしてもならそれまで入院をと勧められたらしい。

診察室でその話になった。

呼吸器の症状は落ち着いてきたし、血液検査もよくなってきた。

要は生活の問題になっていた。

 

 「ヘルパーさんにもっと来てもらったら」と、

ケアマネ-ジャ-によく頼むように話をした。

「家が一番いいんじゃないかな。

前のことを考えたら、

病院も施設も必要になったらそのときはそのときだけど……」とぼくが言った。

息子にも話してくれと言われ、迎えに来た息子にも念を押した。

「言い出したら聞かないあんな性格ですから、

わたしも手を焼いています」と、苦笑いだった。

 

 このように山本さんは、言葉が率直だ。

ぼくは、お年寄りの遠慮のない言葉は嫌ではない。

直接要求してくれるほうがやりやすい。

診察室でぼくの視線が一定しないと、

 

「どこを見ているのかね。ちゃんとわたしの話を聞いてくれんといかん」と手厳しい。

 

「わたしのことをもっと真剣に考えてくれ」と、それはそれはその通り。

刑事コロンボのように、一度診察が終わっても確認のために、

診察室に質問に来ることもしばしば。

 

この頃は、鉄橋を歩いて来なくなった。

息子が車で送ってくることが多い。

ス-パ-が閉店して、買い物が遠くなったと嘆く。

生活の輪郭がきちっと見えてくるのは、

山本さんが診察室できちんと自分を語り、

自分の今になにが足りないかを伝えているのだろう。

苦笑いをしながらの会話が続く。

少し話が長いのには閉口するが、ぼくはそれを楽しんでいる。

 

  大野内科医院です。

この本を読んでいると心が温まってきます。

テレビのなかで先生が話されていましたが、

四万十川の自然が自然と人を育ていると。

訪問看護で患者さんの家を訪れると

寝ているベットから四万十川の土手が見えて

その土手を歩く人を眺めているという。

 

保江先生の「テレサ・ケア」の講習会で

好きなこと、自分の気持ちが良い感じで

行動すると不随意筋が働き疲れないそうです。

四万十川を楽しんでいる患者さんは、自分で自分を元気にしているのでしょうね。

 

ありがとうございました。

 

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