立秋の日、由比ヶ浜にシロナガスクジラを見に行ったときに(結局、見られなかったが)、近くの鎌倉文学館にも寄ってきた。特別展の富安陽子展が楽しめたし、庭園ではほとんどの薔薇はおわっていたが、何と、”春の雪”が消えないで(笑)、酷暑をものとせず、咲いていたのには驚いた。文学館は旧前田侯爵家の別邸で、三島由紀夫が”春の雪”の執筆のためにここを訪れ、取材した。バラの品種名はこれに由来する。それに、熨斗蘭(のしらん)がもうあちこちで咲いていたのもうれしかった。
”春の雪”から。青葉に包まれた迂路を登りつくしたところに、別荘の大きな石組みの門があらわれる。(中略)先代が建てた茅葺きの家は数年前に焼亡し、現侯爵はただちにそのあとへ和洋折衷の、十二の客室のある邸を建て、テラスから南へひらく庭全体を西洋風の庭園に改めた。
春の雪
熨斗蘭
富安陽子の世界展
夢かうつつか妖怪か。楽しい物語がいっぱい。つい、読みふけってしまった。大きな鬼をやっつける、小さいけれど力もちの山んばのむすめの話や、お母さんがキツネの信田家の話とか。ぼくが気に入ったのは、”クヌギ林のザワザワ荘”という物語。ここに引っ越してきた科学者の矢嶋先生はお豆腐をつくるのも上手。池の水が干上がって、住むところがなくなった水の精や、いろんな妖怪やお化けと一緒に住んでいる。ここで紹介されているのはごく一部。本を買って読んでみたい。
妖怪やお化けは庭園のあちこちに潜んでいた。
近くに栗の木がないのにイガグリくん。ひょっとして、妖怪かも。
妖怪やお化けの棲みかをもうこれ以上奪ってはいけません!と、富安陽子先生は言っているのかも。