全国封切りを前に、新作映画をみるなんて、生まれて初めての出来事かも。今日(3月12日)から一般映画館で上映開始の山田洋次監督の”家族はつらいよ”を、なんと、二日前(3月10日)に、鎌倉芸術館で観賞することが出来たのだ。鎌倉同人会主催の”春の映画会”で、山田洋次監督のトーク(山内静夫さんとの対談)とそれを挟んで、”家族はつらいよ”と”東京家族”の両作品が上映されたのだ。
”家族はつらいよ”は、山田監督が寅さんシリーズ以来20年振りに(もうそんなになるのか、びっくりぽん)手がけた喜劇映画。まるで寅さんが生き返ってきたような面白さでしたよ。素直に笑えるというか、自然と声を出して笑ってしまうような、これこそ、まさに、”寅さん映画”の笑いなのだ。はっきり言って、ほかの監督では無理、山田監督にしかできない喜劇ですね。大ヒット間違いなし!是非、”家族はつらいよ”シリーズにしてください。かっての寅さんフアンは必ず戻ってきますよ。
”東京家族”は、今回、二度目の鑑賞となる。山田監督が尊敬する小津安二郎監督の”東京物語”のオマージュ。笠智衆と東山千栄子の老夫婦の役を、こちらでは、橋爪功と吉行和子が演じる。原節子は未亡人だったが、ここでは次男(妻夫木聡)の婚約者として蒼井優が好演。妻の葬儀を終え、いよいよ島を離れるときに、”あんたはいい人だ”とはじめて口を開く橋爪に、”いい人なんかではありません”と涙ぐむ蒼井優の目はまるで原節子。現代版”東京物語”は、やっぱり山田監督にしかできないですね。
でも、山田監督は、(昭和29年に)松竹大船撮影所に助監督として就職した頃は、小津監督はあまり好きではなかったそうだ。どの作品もホームドラマみたいで、他社の黒澤明監督の方が面白くて、ずっとよいと思っていた。それが、年を重ねていくうちに、小津映画の良さが分かってきて、しまいには、自分でも家族映画を手がけるようになり、オマージュ作品までつくってしまったと、苦笑い。
小津作品はゆったりした流れだが、リズム感があるのは、カットが細かく、ていねいにつくられているからだそうだ。試視聴のあと、フィルムの二コマ分(1/8秒分)を切ったりしたそうだ。
”東京家族”のあと、同じメンバーで、もう一度やりたい、そして、そのときは、喜劇と考えていた。どんなストーリーにするか、みんなで話し合いしたときに出た、蒼井優さんの近所の話をネタにした。結婚50年を目前に控え、橋爪功がえらそうなそぶりで、おい、記念に贈り物したいが、何か欲しいかと、妻の吉行和子に尋ねる。わたし、400円でいいわ(手続き料として)、と言って、離婚届に印を押して、と云う。どうも本気なようだと、二組の子供夫婦と妻夫木聡と蒼井優カップルがあたふたする。
何故?と問う夫に、あんたがそばにいるのが、ストレスなのよ、という妻。その通り!前の席のご婦人が小さな声を発した。周囲に笑いが起こった。どこにもありそうな話ということ(笑)。でも、ご安心を。寅さんはいつも失恋でおわるけど、この映画ではハッピーエンドです。
さて、空も晴れてきた。家内のストレスにならないように、今日も出掛けよう!