石油と中東

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (4)

2018-07-30 | BP統計

 

2018.7.30

前田 高行

 

1. 世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数(続き)

(埋蔵量を食いつぶすカタール、シェールガス全盛でも頭打ちの米国!)

(5)主な天然ガス資源国の過去17年間の埋蔵量の変化

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G04.pdf 参照)

 2017年末の天然ガス埋蔵量上位7カ国(イラン、ロシア、カタール、トルクメニスタン、米国、サウジアラビアおよびベネズエラ)について2000年~2017年までの埋蔵量の推移を見ると、ロシアは2000年の埋蔵量は33tcfであり、2008年には34tcfを突破、2017年末の埋蔵量は35cftに達しており、17年間を通じて埋蔵量を着実に増加させるとともに世界一の座を保っている。イランの場合2007年までは埋蔵量27tcm(兆立方メートル)前後を上下していたが、2008年から2011年にかけて埋蔵量を急増させて33tcmとし、2017年末の埋蔵量は33.2tcmである。

 

世界第3位の埋蔵量を誇るカタールは2001年に埋蔵量を14tcmから26tcmに大幅に上方修正したが、その後は新規開発を凍結するモラトリアム宣言を行った。その結果、2002年以降は年々減少し2017年の埋蔵量は24.9tcfまで下落している。危機感を抱いた同国は2017年4月にノース・ガス田の開発再開を宣言している。

 

イラン、ロシア、カタール3カ国の埋蔵量はその他の国を圧倒しているが、近年トルクメニスタンの伸長が著しい。同国の埋蔵量は2007年まで2.6tcmにとどまっていたが、2008年には8.2tcm、更に2011年には19.5tcfと、2007年の7.5倍に増え、2017年もその水準を維持している。

 

 イランとトルクメニスタンは2007年以降共に埋蔵量が急増している。しかしイランは米国の経済制裁により国際石油企業との協同事業が進まず自前の技術で探鉱開発を行っており同国の技術が時代遅れのものであることは周知の事実である。このような状況下で埋蔵量が増加しているのは石油篇で述べたと同様、イラン政府が政策的に埋蔵量の水増しを行っている可能性が否定できない。これに対してトルクメニスタンの場合は外国民間企業との全面的なタイアップにより国内で探鉱作業を行った成果であり埋蔵量の数値は信頼性が高いと考えられる。

 

 米国も2006年以降埋蔵量が増加する傾向にあり2011年には2006年比1.4倍の9.1tcmに達し、サウジアラビア(7.6tcm)を上回り、2014年は10.0tcmと過去最高の水準に達している。その後2015年に8.3tcfに落ち込んだ後、2016、17年の埋蔵量は8.7tcmである。このことは2014年まではシェールガス開発が盛んに行われていたが、その後価格の下落により消費量に見合う生産量を維持することでマクロ的には埋蔵量の追加につながる開発が行われていないことを示している。

 

(天然ガス篇埋蔵量完)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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