石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(127)

2024-03-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(13

 

127イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(4/5)

 

状況を見誤ったのはフセイン大統領も同じであった。彼はイラクがクウェイトに進攻してもアラブや欧米諸国が強硬手段をとらないと踏んだ。こうして1990年8月未明、フセインは国境に配備した部隊にクウェイト進攻を命じた。寝耳に水で慌てふためいたのはクウェイトの支配者サバーハ家である。寝込みを襲われた首長を始めとする王家一族は命からがら国境の南サウジアラビアに逃げ込んだのであった。クウェイト国内では戦闘らしい戦闘もなく、わずか半日でイラク軍に制圧された。イラクのクウェイト占領は翌年1月の湾岸戦争まで約半年間続く。この間、日本人を含むクウェイト在住の外国人はイラクに拉致され「人間の盾」とされる災難に遭うのである。

 

イラクのクウェイト進攻が国際社会の誤算だったとするなら、その後国際社会が一致してクウェイト解放を唱えたことはフセインの思わぬ誤算だったと言えよう。フセインはクウェイトがもともとイラク南部バスラ州の一部であったと主張したが、戦後半世紀が経ち世界各地に生まれた国民国家を尊重する国際社会の中にあっては力ずくの領土併合は到底認められないことであった。11月には国連安保理で武力行使を容認する決議が採択された。米国を中心とする多国籍軍が編成され、アラブ諸国からはサウジアラビアなど湾岸君主制国家やイラクと同じバース党が支配するシリアも連合軍に加わった。イラン・イラク戦争では巧妙な戦略で全世界を味方に引き込んだイラクが、今度は全世界を敵に回したのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(16)  

2024-03-11 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0598OilMajor2023.pdf

 

III. 過去2年間の四半期業績推移(続き)

3.キャッシュフローの推移

(2022年には200億ドルを超えたExxonMobilとShellの営業C/F!)

(1)営業キャッシュフロー(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-72.pdf 参照)

 2022年1-3月期から2023年10-12月期までの四半期ごとの営業キャッシュフロー(以下C/F)の推移は概略以下の通りであった。

 

 営業C/Fはほぼ売上規模に比例するため売上高が大きいExxonMobil及びShellが毎期他社を上回っている。2022年1-3月期のExxonMobil、Shellの営業C/Fは148億ドルであり、他の3社は100億ドルを下回っていた。ExxonMobilは同年7-9月期に244億ドルの営業C/Fを、またShellも10-12月期に224億ドルの営業C/Fを達成している。

 

しかし2023年に入ると5社の差は徐々に縮まり同年10-12月期の営業C/FはTotalEnergiesが最も多い162億ドルであり、これに次ぐのがExxonMobil 137億ドル、Shell 126億ドル、Chevron124億ドルである。bpは5社の中で唯一100億ドルを下回っている。

 

(対照的な投資C/Fが多いShellと少ないbp!)

(2)投資キャッシュフロー(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-73.pdf 参照)

 2022年1-3月期の投資C/FはShell▲43億ドル、ExxonMobil▲39億ドル、TotalEnergies▲24億ドル、bp ▲19億ドル、Chevron▲7億ドルであった。その後Shellの四半期投資C/Fは▲62億ドル→▲50億ドル→▲69億ドル→▲42億ドル→▲30億ドル→▲48億ドルと推移し、2023年10-12月期は▲57億ドルであった。2022年度は60億ドル前後で推移し、2023年度は前年度を下回る水準に終始している。

 

 ExxonMobilの投資C/Fは各四半期とも30~40億ドル前後で推移しているが、両年とも第一四半期から第三四半期にかけて減少し、最終第4四半期で増加する傾向を示している。

 

 その他各社の四半期ごとの推移は以下のとおりである。

(単位:億ドル)

              2022年                      2023年

              1-3月  4-6月  7-9月  10-12月 1-3月  4-6月  7-9月  10-12月

bp            ▲19→ ▲25→ ▲26→ ▲67→ ▲28→ ▲42→ ▲35→ ▲44

TotalEnergies  ▲24→ ▲50→ ▲41→ ▲37→ ▲64→ ▲45→ ▲50→ ▲44

Chevron       ▲7→  ▲50→ ▲28→ ▲37→ ▲28→ ▲39→ ▲44→ ▲41

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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