石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(123)

2024-03-01 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(9

 

123 ヒジュラ暦1400年(西暦1980年)前後(5/5)

このようにヒジュラ暦という尺度で歴史的事件を並べてみると、ヒジュラ暦1400年前後は中東イスラーム世界の大きな地殻変動、パラダイムシフトの時代であったと言えよう。その原動力はイスラームという宗教である。ヒジュラ15世紀の最初の10年の間(西暦1980~1989年)にムスリムたちはイスラームの教えに反する敵対勢力、背教者たちとの闘いを開始した。最初の敵が無神論の共産主義者アフガニスタン中央政府との闘いであった。その後現在に至るヒジュラ15世紀前半は、ムスリムの戦いはスンニ派対シーア派というイスラーム二大勢力の対立からイスラーム穏健勢力と原理主義が対立する構図となり、さらにイスラム国(IS)と呼ばれるカリフ制の仮想国家が既存の世俗国家に戦いを挑んだことは周知のとおりである。

 

日本の一向一揆のように宗教の鎧をまとった運動は始まったが最後どんどん過激化して行くものである。現代のイスラーム運動もその様相を色濃く帯びている。この運動は過激の極に達し、大衆の支持を失ったときに自滅して終焉する。仏教思想では「盛者必滅」ということになる。ただ争いがいつ終焉するかはわからない。まさに「神(アッラー)のみぞ知る」である。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(12)

2024-03-01 | 海外・国内石油企業の業績

III. 5カ年(2019-2023年) 業績推移の比較(続き)

(コロナ禍で2020年に激しい落ち込み、そして2022年は史上最高の利益!)

2.利益[1]

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-21.pdf 参照)

 2019年から2023年までの5年間の5社の利益の推移を見ると、2019年はShellが158億ドル、次いでExxonMobilが143億ドルと続き、bp及びChevronの利益は3社を大幅に下回る40億ドルおよび29億ドルであった。

 

 しかしコロナ禍が本格化した2020年には全社が赤字に転落、特にExxonMobil、Shell、bp3社は▲200億ドルを超す巨額の損失を計上、TotalEnergies、Chevronもそれぞれ▲72億ドル、▲55億ドルの赤字を余儀なくされた。2021年には一転して各社とも業績が急回復しExxonMobilの230億ドルを筆頭に全社が利益を計上、利益額は2019年の水準に戻った。

 

2022年には前年にも増して利益が急騰、ExxonMobilは史上最高の557億ドルの利益を達成し、その他各社もShell 423億ドル、Chevron 355億ドル、TotalEnergies 205億ドルの利益を確保している。但しbp1社のみはロシアプロジェクトの特別損失により▲25億ドルの欠損であった。2023年は世界経済の減速により業績は再び低下した。しかしExxonMobilの360億ドルをはじめ、各社の利益は軒並み高い水準を維持し、前期赤字であったbpも152億ドルの利益を計上している。

 

(2020年にマイナスに落ち込んだが過去3年は軒並み高い利益率を確保!)

3.売上高利益率

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-22.pdf 参照)

 2019年は全社がプラスの利益率であったが、トップのTotalEnergies、ExxonMobilが5%台にとどまり、最も低かったbpは1.4%であった。そして2020年には全社の業績が赤字に転落、損失率もbpの▲19%を筆頭にExxonMobil及びShellが▲12%、Chevron及びTotalEnergiesが▲5%であった。

 

2021年は各社とも業績がV字型に回復し、Chevronの10.0%を筆頭に、ExxonMobil8.1%、TotalEnergies7.8%、Shell7.7%、bp4.6%といずれもプラスに転じた。2022年は各社の収益格差が拡大し、Chevron、ExxonMobil及びShellは二桁台の利益率を確保している。これに対して、bpは5社の中でただ1社▲1%のマイナスに転落している。

 

2023年も業績は順調に推移し、Chevron及びExxonMobilは共に10%台の利益率を確保した。他の3社も押しなべて好調でTotalEnergies9.0%、bp7.2%、最も低いShellも6.1%の利益率であった。5年間を通じて見るとChevronが高い利益率を維持しているのに対してbpは5社の中で最低水準にとどまっていることが特徴である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行

 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

     Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

     E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] 「利益」は各社決算資料から下記項目を抽出している。

ExxonMobil:        Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

Shell:     Incom/loss attributabel to shareholders

bp:         Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders

TotalEnergies:     Netincome (TotalEnergies share)

Chevron:             Net income

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする