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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ニュース解説:争奪戦模様のカタール天然ガス(上)

2011-07-29 | OPECの動向

(注)下記HP「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0192QatarGas.pdf

 

1.カタールからLNGを輸入するマレーシアとオランダ
 今月(7月)に入りカタールはマレーシアとLNGの輸出契約を締結し、またオランダ向けに最初のLNG輸出を行った。マレーシアとの契約は年間150万トンのLNGを2013年から20年間にわたり供給するというもので、これは同国の天然ガス年間消費量の5%に相当する 。オランダでは同国ロッテルダム港北部に新設されたLNG再ガス化設備(Gate Terminal)にカタール籍のQ-Max型LNG運搬船が初荷を積んで入港、盛大な記念式典が行われた 。

 言うまでも無くマレーシアもオランダも天然ガスの輸出国である。BPの統計資料「Statistical Review of World Energy 2011」によれば、マレーシアは日本向けを含め、年間305億㎥のLNGを輸出しており、その輸出量はカタール、インドネシアに次ぎ世界第3位である。またオランダは古くからパイプラインにより天然ガスを近隣諸国に供給しており、その輸出量は世界第5位である 。
 
 両国がカタールからLNGを輸入する理由は国内のガス産出量が減少する一方、輸出は顧客との長期契約により削減することが難しいためと考えられる。加えてマレーシアの場合は経済発展により国内の消費が年々増加しており輸入が必要になったのであろう(注、同様の状況にあるインドネシアはすでに日本向けLNG輸出量を削減している)。

2.カタール天然ガス輸出の歴史
 カタールが天然ガス(LNG)の輸出を始めたのは1997年であり、この年の輸出量は29億㎥、輸出先は日本とスペインの2カ国のみであった。その後、同国のLNG貿易は飛躍的に拡大、2000年には69億㎥、輸出相手国も日本の他韓国、米国など6カ国になった。2004年にインド、2007年に英国、そして2009年に中国が新しい輸出先に加わった。昨年(2010年)にはLNG輸出量は758億㎥と10年間で10倍以上に増え、輸出相手先も16カ国に達している。

 さらにカタールは2007年からパイプライン(ドルフィン・パイプライン)によるUAE及びオマーンへの輸出を開始、2010年には両国に合わせて192億㎥の天然ガスが供給されている。因みに2009年までは日本が輸出先トップであったが、昨年はUAEがカタールの天然ガスの最大の輸出先(174億㎥)となり、またLNGについても英国(139億㎥)が日本(102億㎥)を上回った。LNGとパイプラインを合わせた2010年のカタールの輸出量949億㎥は、ロシア(1,672億㎥)、ノルウェー(1,006億㎥)に次いで世界第3位である。

カタールは昨年LNG7,700万トン体制を確立、今後輸出を大幅に拡大する余地が生まれた。また輸送面でもスエズ運河の航路幅一杯のQ-MAX級LNG船を含め50隻以上の船団を保有しヨーロッパ方面への輸出に力を入れている。

(続く)

(参考レポート)
1.「BPエネルギー統計レポート2011年版解説シリーズ:天然ガス篇」
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

2.「シェールガス、カタールを走らす」
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0148ShaleGasQatar.pdf

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
 

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