6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(4):世界の天然ガス貿易:パイプラインとLNG
1. 地域及び国による生産と消費のバランス
前々回及び前回で天然ガスの地域別・国別の生産量及び消費量について説明したが、本稿では生産と消費のバランスについて分析を試みる。
先ず地域別の生産と消費のバランスを見ると(上図参照)、欧州・ユーラシアは生産と消費が世界6地域の中ではもっとも多い。しかし同地域は消費量が生産量を7百億立方米(以下㎥)上回っている。アジア・大洋州も6百億㎥の消費超過である。これに対してアフリカは消費量(760億㎥)を大幅に上回る生産量(1,800億㎥)があり、中東も5百億㎥の生産超過である。そして北米、中南米はほぼ需給が均衡している。
次に国毎に生産量と消費量の乖離が大きい上位5カ国を取り上げると以下の通りである。(単位:億㎥)
(1) 生産量が消費量を上回る上位5カ国
国名 生産量(A) 消費量(B) バランス(A-B)
ロシア 6,121 4,321 1,800
カナダ 1,870 966 904
ノルウェー 876 44 832
アルジェリア 845 237 607
UAE 474 -(*) 474
(2) 消費量が生産量を上回る上位5カ国
国名 生産量(A) 消費量(B) バランス(A-B)
米国 5,241 6,197 -956
日本 -(*) 846 -846
ドイツ 156 872 -716
イタリア 110 771 -661
ウクライナ 191 664 -474
* BP統計では不詳(10億㎥以下のため)
上記のデータからいくつかのことを読み取ることができる。北米の場合はカナダから米国への輸出により地域内での天然ガスの需給がバランスしている。また欧州・ユーラシアについては域内のロシアやノルウェー等からドイツ、イタリア、ウクライナ等へ天然ガスが供給されているが、それでも不足する量はアルジェリアなどアフリカ地域或いは中東から輸入している。アジア・大洋州についても、域内では生産国のインドネシア、マレーシアから消費国の日本、韓国等に輸出されているが、不足分はその他の地域(特に中東)からのLNG輸入に頼っている。
2. 天然ガスの貿易動向:パイプラインとLNG(1997~2006年)
天然ガスの輸出にはパイプラインとLNGの2種類がある。伝統的にはロシアから西ヨーロッパ向け或いはカナダから米国向けのように気体のままパイプラインによって輸出されていたが、最近では極低温で液化(LNG)し、専用のLNG運搬船で輸出するケースが増えている。下表は1997年から2006年の貿易量(単位:億㎥)をまとめたものである。
貿易量に占める割合
パイプライン LNG 合計 前年比増加率 パイプライン LNG
1997年 3,217 1,113 4,330 - 74.3% 25.7%
1998年 3,331 1,130 4,461 3.0% 74.7% 25.3%
1999年 3,605 1,232 4,838 8.4% 74.5% 25.5%
2000年 3,893 1,370 5,263 8.8% 74.0% 26.0%
2001年 4,113 1,430 5,543 5.3% 74.2% 25.8%
2002年 4,314 1,498 5,812 4.9% 74.2% 25.8%
2003年 4,549 1,688 6,237 7.3% 72.9% 27.1%
2004年 5,021 1,780 6,800 9.0% 73.8% 26.2%
2005年 5,327 1,888 7,215 6.1% 73.8% 26.2%
2006年 5,371 2,111 7,481 3.7% 71.8% 28.2%
(BP統計より筆者作成)
1997年の天然ガスの貿易量はパイプラインとLNG合わせて4,330億㎥であったが、2006年には1.7倍の7,481億㎥に拡大し、その間の年間平均増加率は5.9%であった。因みにこの間の天然ガス全体の消費量の平均増加率は2.3%であり、天然ガスの国際間貿易が急速に拡大していることがわかる。また1997年には貿易量に占めるパイプラインとLNGの比率はほぼ1:4(パイプライン74.3%、LNG 25.7%)であったが、その後LNG貿易の伸び率がパイプラインのそれを上回っており、2006年にはパイプラインが全体のほぼ7割(71.8%)に対してLNGは全体の3割近く(28.2%)に達している。
今後天然ガスの国際間貿易は更に拡大し、またその中でLNGの比率が増大することは間違いないものと思われる。
(天然ガス篇完)
(これまでの内容)
(前田 高行)
本稿に関するご意見、コメントをお寄せください。
E-mail: maedat@r6.dion.ne.jp