6月12日、BPは毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2007」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
天然ガス篇(3):世界の天然ガスの消費量
(1) 地域別・国別消費量
2006年の世界の天然ガス消費量は2兆8,508億立方メートル(以下㎥)であった。地域別では欧州・ユーラシアが1兆1,463億㎥と最も多く全体の40%を占めている。これに次ぐのが北米(7,703億㎥、27%)であり、これら2地域だけで世界の3分の2の天然ガスを消費している。3番目に多いのがアジア・大洋州4,385㎥(15%)で、その他の地域は中東2,893億㎥、中南米1,306億㎥、アフリカ758億㎥であった。アフリカの天然ガス消費量は世界全体の3%で、欧州・ユーラシアの15分の1に過ぎない。
(詳細は「天然ガス消費量1965~2006年」参照)
次に国別に見ると、最大の天然ガス消費国は米国であり、同国の2006年の消費量は6,197億㎥であった。これは全世界の22%に相当する。第2位はロシア(4,321億㎥、15%)、これに続くのがイラン(1,051億㎥)、カナダ(966億㎥)、英国(908億㎥)である。6位以下にはドイツ(872億㎥)、日本(846億㎥)、イタリア(771億㎥)、サウジアラビア(737億㎥)、ウクライナ(664億㎥)、中国(556億㎥)が名を連ねている。
(詳細は「国別天然ガス消費量1965~2006年」参照)
(2)天然ガス消費量の推移
1965年に6,552億㎥であった天然ガスの消費量は、2006年までの41年間常に前年を上回っている。1971年には1兆㎥、1991年に2兆㎥の大台を超え、2006年の消費量は1965年の4.4倍の2.85兆㎥に達している。
石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品と同様の現象がある。しかし天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGの形であり、生産国と消費国が直結している点が石油とは異なっている。そしてこれら輸送施設を整備するために多くの時間とコストを必要とする反面、一旦設備が稼動すると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が過去41年間にわたり一貫して増加しているのはこのような天然ガスの特性によるものと考えられる。
上図「天然ガスの地域別消費量推移(1965~2006年)」は、全世界及び欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州3地域の消費量の推移を見たものである。地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1965年の世界の天然ガス消費量のうち71%は北米、残る24%を欧州・ユーラシアが占めており、その他アジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカを合わせてもわずか5%にすぎなかった。その後、北米の消費量は6~7千億㎥前後を維持したままであるのに対して、欧州・ユーラシア地域は1970年以降急速に消費が拡大し、1980年には北米を追い抜いている。そして91年には遂に年間1兆㎥を超え、世界全体に占める割合は50%に達している。その後一時的に消費は落ちたが、2000年以降は再び増勢を示し、2006年の消費量は1.15兆㎥、全世界の40%を占めている。
一方、1965年に消費量わずか59億㎥であり、1980年初頭まで低迷していたアジア・大洋州は、90年以降天然ガスの消費が急激に増大している。そして2006年の年間消費量は4,385億㎥、全世界に占める割合も15%に達している。
これら3地域の違いは先に述べた輸送設備の拡充が消費の増大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果もあったと考えられる。そしてアジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及したことにより天然ガスの消費が拡大した。中国などもLNG利用に熱心であり、アジア・大洋州における天然ガスの消費は他の地域を上回るペースで増大している。
天然ガスは石油に比べて炭酸ガスや有害物質の排出量が少ない「環境に優しいエネルギー」として今後ますます需要が拡大することは間違いない。世界的にも新しいパイプラインやLNGの搬出・運搬・受入設備が増強されている。また石油の可採年数が40年に対して天然ガスのそれは63年であり(本シリーズ石油篇及び天然ガス篇第1回参照)、天然ガスの開発と生産拡大の余地は大きく、今後消費拡大のペースは落ちないものと思われる。
(天然ガス篇第3回完)
(これまでの内容)
(前田 高行)
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