マックンのメモ日記

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アベノミクスの効果はどこに表れているか!

2015-12-26 07:33:34 | 経済・金融・投資
11月半ばに発表された7-9月期実質国内総生産(GDP)速報値は、日本が定義上リセッション(景気後退)に逆戻りしたことを示すものでした。安倍晋三首相に批判的な向きは安倍政権下で2度目のリセッションだと指摘、「アベノミクス」は失敗に終わったと決めつけました。 

 しかし、2週間後に発表されたGDP改定値は、リセッション入りしたどころか、前期比年率換算で1.0%の成長を遂げたことを示すものでした。日本が引き続き安定した経済成長を追求するなかで厳しい逆風に直面していることはほぼ間違いないのですが、GDPに注目するあまり、改善や明るい兆しがみられる重要な分野が見過ごされていると指摘する声もあります。

 一例がコーポレートガバナンス(企業統治)です。ある米系大手投資銀行の日本拠点のトップは「企業経営のあり方をめぐる環境をアベノミクスがいかに変えつつあるかが見過ごされている」と述べました。経済改革が進まない主犯の一人が日本企業だとみられている中では意外なコメントです。

 日本では2010年以来、設備投資は概ね横ばいで推移し、企業は推計2兆ドル(約242兆円)以上に上る大量の現金を抱え込んでいる。さらに、賃上げは小幅にとどまり、個人消費に水を差しています。

 日本企業が投資を控える理由についてはいくつもの説明があります。最もよく聞かれる言い訳は、安倍首相の経済改革に対する信頼感の欠如です。具体的には、政府が徹底的な構造改革を遂行する能力を欠いていることです。アベノミクスの「第3の矢」と呼ばれるこうした改革は、安倍氏が12年暮れに首相に就任して以来進めてきた政策の中で最も進展がみられません。

 安倍首相はこの夏、長年にわたり必要性が叫ばれていた農業改革を推進しました。それは限定的なものでしたが、改革の狙いは、農協の影響力を弱め、農地の集積や売却を容易にすることにあります。首相はまた、法人実効税率を引き下げ、エネルギー業界の規制緩和を進める意向をとあらためて表明しました。

 労働法改定など他の改革の歩みはずっと遅く、その結果、企業が設備投資や賃上げを控える可能性があります。一部の人々は、責任は安倍首相ではなく企業側にあるとみています。東京に長く住むある外国人ビジネスマンは「大手企業は世界に目を向けることを拒否している」と批判します。日本企業は相変わらず女性幹部の起用や外国人取締役の選任を拒んでおり、生産性低下に甘んじています。

 日本企業はしばしば、行動に移す前に社内でコンセンサスを得ることを重視していると批判され、リスク回避を重視しているのかもしれないのですが、その結果、ライバルの韓国、台湾、そして中国に比べて市場の変化への対応が遅れがちです。

 しかし、先の米投資銀日本拠点トップはそうでもないとして、「日本ではコーポレートガバナンスが急速に変化している」と言います。そうした変化には構造的なものも、文化的なものもあります。一つの重要な動きは、この夏の「コーポレートガバナンス・コード」施行です。これに基づき、企業は一定数の社外取締役を選任し、株式持ち合いを減らすことが義務付けられることになり、それに従えなければその理由を説明しなくてはなりません。

 コーポレートガバナンス・コードと並んで重要なのが、昨年制定された「スチュワードシップ・コード」です。株主に議決権行使と積極的な関与を奨励することで、株主利益を重視する姿勢が強まるはずです。米投資銀日本拠点トップによれば、これまで投資先企業の経営に口を挟むことがなかった年金基金や生保の行動が変わり始めています。

 金融庁はスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの実効性を審査する有識者委員会を招集しました。また、利益率や社外取締役の数などの基準で選抜された400銘柄で構成される「JPX日経インデックス400」の算出が昨年始まりました。今では東証株価指数(TOPIX)構成企業の87%が、外国人取締役を少なくとも1人置いています。

 もう一つ大きな出来事に、小泉純一郎元首相が郵政民営化を掲げてから10年後に実現した日本郵政グループの上場が挙げられます。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険のグループ3社が11月4日に上場しました。資本市場に与える潜在的な影響は巨大です。政府が日本郵政の持ち株比率を50%未満に引き下げた場合はなおさらのことです。

 日本の企業改革による恩恵はまだ経済に行き渡っていません。企業の利益が増え、投資家の懐が豊かになっている可能性はありますが、労働者には富が回っていません。改革のゴールは雇用機会の増加、賃上げ、起業家精神でなくてはなりません。普通の労働者が恩恵にあずかって初めて、アベノミクスは成功だと言えるのです。

 日本のコーポレートガバナンス改革はその初期段階にあり、その影響が感じられるまでには時間がかかりそうです。これは日本企業の一段の国際化に向けた最初の1歩ですが、他の改革スキームと同様、それに伴う短期的混乱が大きく取り上げられ、反対の声も強まりそうです。日本経済が戦後の重化学産業から情報化産業に転換する一環として、今日の変化が大きな影響をもたらすかもしれません。 (ソースWSJ)