ヒラリー・クリントン前国務長官の私用メール問題は五月雨式に詳細が明らかになってきましたが、ここにきて豪雨に変わりました。クリントン氏がなぜ私的な通信設備を使用していのか、そこには何が隠されていたのかが、先週ようやく判明したのです。悪名高い同氏の私用サーバーは、クリントン氏が3年間クリントン財団の「長官」を務めていたことを隠すために設置されていたことが明らかになったのです。
3月に本欄で、クリントン氏の秘密情報の不用意な扱いは重要な問題ではあるが、より重要なポイントが別にあると指摘しました。クリントン氏は国家秘密を暴露しようと思って私用サーバーを設置したわけではありません。それは偶発的な出来事にすぎません。同氏がサーバーを設置したのは、私生活の細部が明るみに出ないようにするためだったのです。すなわち、入念で広範囲に及ぶ資金調達や自己プロモーションのための組織、クリントン財団を取り巻く生活を秘密にしておくためだったというわけです。
クリントン氏が――明確な倫理基準にのっとって――国務長官時代に財団と距離を置いていれば、私用サーバーや私用メールなどそもそも必要なかったはずです。そうであれば、クリントン氏の電子通信の大部分は国務省の職務に関連したものにとどまり、たまにヨガのスケジュールに関わるものが混じる程度だったはずです。連邦情報公開法当局者がのちに国務省のメールを精査したときも、明らかな「私用」メールをさほど苦労することなく選別し公表できたはずです。普通ならこうなっていたはずです。
クリントン氏の私用サーバーのアカウントでやり取りされた同氏の側近、ヒューマ・アベディン氏のメールが先週公表されました。その内容から分かる通り、クリントン氏の問題は公私の区別がなかったことです。同氏にとって国務省と一族の基金であるクリントン財団は一体化された組織だったのです。同じスタッフを雇い、スケジュールを照らし合わせていたほか、財団の献金者が国務省に接近できるようにもなっていました。秘密のサーバーを保持していたのも、本来政府に提出すべき1万5000通のメールを削除したのもそのためです。
財団献金者の優遇を働きかけ
先週公表されたアベディン氏のメールで最も注目されているのが、クリントン財団幹部のダグ・バンド氏が財団献金者を優遇するよう国務省に働きかけていたという憂慮すべき事実です。メールは保守系の行政監視団体「ジュディシャル・ウオッチ」が国務省を相手取った訴訟で公表したもので、その725ページに及ぶメールからは、メールのやり取りの頻度やその大半がいかに陳腐な内容であったかもうかがい知ることができます。バンド氏はクリントン氏にこの会議はできるか、あの会合は開けるか、いつブラジルを訪問するのかといったことを尋ねていました。アベディン氏の返事は、クリントン氏はそれに取り組んでいる、これに関する回答やあれに関する回答を得るだろうといったものでした。これらは単なるちょっとした知り合い同士のメールではありません。彼らはあいさつの言葉や署名は省いていました。これらは同じ目的に従事する2人の間で交わされたメールです。その目的とは、国務省とクリントン財団が1つになった組織のために働くことだったのです。
今回もう1つ明らかになった重要な点は、マスコミの目の付けどころが間違っていたことです。マスコミが焦点を当てているのはクリントン氏が削除したメールです。確かに連邦捜査局(FBI)が復元した1万5000通のテキストの中に価値ある情報も含まれているでしょう。しかし、クリントン氏は忙しい人であり、国務省と財団を取り巻く日々の生活の細かいことの大半は信頼する側近が処理しています。彼らも私用メールを持っていたのはそのためです。初めからアベディン氏のファイルに目をつけていたジュディシャル・ウオッチは大したものです。次に急いで調査する必要があるのは、クリントン氏が国務長官時代に首席補佐官を務めていたシェリル・ミルズ氏の同様のメールです。
今回明らかになった最も重要なことは、クリントン財団の問題が利益相反「のように見える」というだけにとどまらないことです。これは紛れもなく見返りを求める献金でです。バンド氏はクリントン氏に「われわれの親しい友人」であるバーレーンの皇太子と会談するよう求めるメールを送っていました。これは皇太子がクリントン財団の奨学金制度に数百万ドル寄付することで面会時間を買ったと言っているようなものです。疑いの余地はありません。
点と点がつながらない
この点は先週のAP通信の報道でも明らかにされていました。AP通信は、クリントン氏が国務長官1年目に会った外部関係者154人のうち半数以上がクリントン財団の献金者だったと報じました。新興ウェブメディア「Vox Media」のコラムニスト、マシュー・イグレシアス氏らクリントン氏の擁護派は、154という数字には外交当局者や米政府当局者との数千回に及ぶ会合は含まれていないため、その数字は誇張されていると主張しています。
確かにそうでしょう。国家の外交トップとしてクリントン氏は多くの外交当局者や米政府当局者と会う義務がありました。しかし、それ以外の人とはその義務はなかったのです。多忙な国務長官との面会にこぎつけたのは一部の幸運な人たちであり、驚くべきことに、そのほとんどがクリントン財団の献金者だったのです。
クリントン氏にとって幸いなのは、(汚職疑惑は往々にしてそうだが)点と点を線で結ぶことが依然、難しいことです。「もらったもの」(財団への献金)と「見返り」(バーレーンの武器取引)はあちこちに見つけることができますが、それらを結びつける確固たる証拠は見当たりません。
しかし、そこは重要でしょうか。今回発覚したのは、政府高官の1人が設置した私用サーバーの中に、倫理規定があるにもかからず高官が一族の基金とひそかに関わりを持ち続け、公的記録を破壊したことを示す証拠が保存されていたということです。これだけでも、クリントン氏を大統領候補として失格にするには十分ではないでしょうか。(ソースW
3月に本欄で、クリントン氏の秘密情報の不用意な扱いは重要な問題ではあるが、より重要なポイントが別にあると指摘しました。クリントン氏は国家秘密を暴露しようと思って私用サーバーを設置したわけではありません。それは偶発的な出来事にすぎません。同氏がサーバーを設置したのは、私生活の細部が明るみに出ないようにするためだったのです。すなわち、入念で広範囲に及ぶ資金調達や自己プロモーションのための組織、クリントン財団を取り巻く生活を秘密にしておくためだったというわけです。
クリントン氏が――明確な倫理基準にのっとって――国務長官時代に財団と距離を置いていれば、私用サーバーや私用メールなどそもそも必要なかったはずです。そうであれば、クリントン氏の電子通信の大部分は国務省の職務に関連したものにとどまり、たまにヨガのスケジュールに関わるものが混じる程度だったはずです。連邦情報公開法当局者がのちに国務省のメールを精査したときも、明らかな「私用」メールをさほど苦労することなく選別し公表できたはずです。普通ならこうなっていたはずです。
クリントン氏の私用サーバーのアカウントでやり取りされた同氏の側近、ヒューマ・アベディン氏のメールが先週公表されました。その内容から分かる通り、クリントン氏の問題は公私の区別がなかったことです。同氏にとって国務省と一族の基金であるクリントン財団は一体化された組織だったのです。同じスタッフを雇い、スケジュールを照らし合わせていたほか、財団の献金者が国務省に接近できるようにもなっていました。秘密のサーバーを保持していたのも、本来政府に提出すべき1万5000通のメールを削除したのもそのためです。
財団献金者の優遇を働きかけ
先週公表されたアベディン氏のメールで最も注目されているのが、クリントン財団幹部のダグ・バンド氏が財団献金者を優遇するよう国務省に働きかけていたという憂慮すべき事実です。メールは保守系の行政監視団体「ジュディシャル・ウオッチ」が国務省を相手取った訴訟で公表したもので、その725ページに及ぶメールからは、メールのやり取りの頻度やその大半がいかに陳腐な内容であったかもうかがい知ることができます。バンド氏はクリントン氏にこの会議はできるか、あの会合は開けるか、いつブラジルを訪問するのかといったことを尋ねていました。アベディン氏の返事は、クリントン氏はそれに取り組んでいる、これに関する回答やあれに関する回答を得るだろうといったものでした。これらは単なるちょっとした知り合い同士のメールではありません。彼らはあいさつの言葉や署名は省いていました。これらは同じ目的に従事する2人の間で交わされたメールです。その目的とは、国務省とクリントン財団が1つになった組織のために働くことだったのです。
今回もう1つ明らかになった重要な点は、マスコミの目の付けどころが間違っていたことです。マスコミが焦点を当てているのはクリントン氏が削除したメールです。確かに連邦捜査局(FBI)が復元した1万5000通のテキストの中に価値ある情報も含まれているでしょう。しかし、クリントン氏は忙しい人であり、国務省と財団を取り巻く日々の生活の細かいことの大半は信頼する側近が処理しています。彼らも私用メールを持っていたのはそのためです。初めからアベディン氏のファイルに目をつけていたジュディシャル・ウオッチは大したものです。次に急いで調査する必要があるのは、クリントン氏が国務長官時代に首席補佐官を務めていたシェリル・ミルズ氏の同様のメールです。
今回明らかになった最も重要なことは、クリントン財団の問題が利益相反「のように見える」というだけにとどまらないことです。これは紛れもなく見返りを求める献金でです。バンド氏はクリントン氏に「われわれの親しい友人」であるバーレーンの皇太子と会談するよう求めるメールを送っていました。これは皇太子がクリントン財団の奨学金制度に数百万ドル寄付することで面会時間を買ったと言っているようなものです。疑いの余地はありません。
点と点がつながらない
この点は先週のAP通信の報道でも明らかにされていました。AP通信は、クリントン氏が国務長官1年目に会った外部関係者154人のうち半数以上がクリントン財団の献金者だったと報じました。新興ウェブメディア「Vox Media」のコラムニスト、マシュー・イグレシアス氏らクリントン氏の擁護派は、154という数字には外交当局者や米政府当局者との数千回に及ぶ会合は含まれていないため、その数字は誇張されていると主張しています。
確かにそうでしょう。国家の外交トップとしてクリントン氏は多くの外交当局者や米政府当局者と会う義務がありました。しかし、それ以外の人とはその義務はなかったのです。多忙な国務長官との面会にこぎつけたのは一部の幸運な人たちであり、驚くべきことに、そのほとんどがクリントン財団の献金者だったのです。
クリントン氏にとって幸いなのは、(汚職疑惑は往々にしてそうだが)点と点を線で結ぶことが依然、難しいことです。「もらったもの」(財団への献金)と「見返り」(バーレーンの武器取引)はあちこちに見つけることができますが、それらを結びつける確固たる証拠は見当たりません。
しかし、そこは重要でしょうか。今回発覚したのは、政府高官の1人が設置した私用サーバーの中に、倫理規定があるにもかからず高官が一族の基金とひそかに関わりを持ち続け、公的記録を破壊したことを示す証拠が保存されていたということです。これだけでも、クリントン氏を大統領候補として失格にするには十分ではないでしょうか。(ソースW