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ケインズ博士:勇気こそ投資のカギ!

2016-10-19 20:23:21 | 経済・金融・投資
株式市場が大暴落すれば、われわれの誰もが一歩踏み出して大胆にも株式を買うことだろう――少なくとも想像の世界では。

 ところが、市場が大暴落しているときに株式を買うことの難しさは想像をはるかに超えています。偉大な経済学者であると同時に偉大な投資家でもあったジョン・メイナード・ケインズ博士が、米株式市場が最高値から最安値まで80%以上も下落した1929年のウォール街大暴落の直後にどのように投資したのかを調べた新たな研究が発表されました。ケインズ博士の経験は、すべての投資家に準備、勇気、忍耐の大切さを教えてくれるはずです。

 ケインズ博士は1920年代初めから死去した1946年までに数冊の本を著し、経済政策に大改革をもたらし、現在の世界金融制度の構築にも寄与しました。ケインズ博士は本業とは別に、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジの大学基金の運用も行っていました。最悪の株価大暴落、最悪の恐慌、近代史における最悪の戦争などがあった1922年から1946年までの期間、ケインズ博士の株式ポートフォリオは平均すると、英株式市場を年率6%ポイント近くもアウトパフォームしました。

 それでも、ケインズ博士は史上最高の投資家とは見なされてきませんでした。割安の株式を買うことを重視する今日で言うところのバリュー投資家だったケインズ博士は、1920年代の超強気相場で置いてきぼりを食ってしまいました。ケインズ博士は世界大恐慌の到来を予期しておらず、1929年当時には他の大学基金のほとんどが圧倒的に国債を選好していたにもかかわらず、大学基金の約90%を株式に投資したまま米株の大暴落を迎えていました。

 ケインズ博士のポートフォリオは、1929年の終わりまでの5年間の累積で、英株式市場を40%ポイントもアンダーパフォームしていました。しかし、ケインズ博士はすでにそのパフォーマンスを好転させたのです。

 ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールで金融学を教えるデービッド・チェンバース教授とバッキンガム大学の経済学者アリ・カビリ氏は、学術誌ビジネス・ヒストリー・レビューに掲載された新しい研究論文で、ケインズ博士が大暴落とそれに続いた大恐慌で打ちのめされた米国株に多額の投資を行うための勇気をどのようにして奮い起こしたのかを分析しています。

底値買いの好機

 ケインズ博士は1930年9月まで、その大学基金の投資先として米国株をほぼ完全に無視していました。驚くべき時期に米国株に関心を持ったものです。米株式市場はそれまでの12カ月間で38.4%も下落していました。ところがケインズ博士は、米国で広がっていると見た底値買いの好機に余りにも興奮し、その株式市場と自分の投資アイデアをリサーチするためにニューヨークの小さな証券会社ケース・ポマロイと連携しました。米国株が47.1%も下落した1931年とさらに5.9%下げた1934年には米国を訪問し、滞在期間の大半を自分の投資アイデアのリサーチの糧となりそうなウォール街、政府、企業などの関係者たちとの会合に費やしました。

 ケインズ博士は不景気のあいだずっと米国株を買っていました。米国株が38.6%も下落した1937年にも、それにひるむことなく買い増していました。1939年には、その大学基金の主要ポーフォリオの半分を米国株が占めるまでになっていました。ケインズ博士は高配当の優先株、投資信託(今日のミューチュアルファンドに似た分散型株式ポートフォリオ)、そしてのちには公益事業株を選好しました。ケインズ博士は株価純資産倍率(PBR)が低い少数の株式に的を絞り、株価が上昇してようやく純資産額が反映されるようになるまでそうした株式を8年以上も保有し続けることが多かったのです。

勇気も必要

 投資に影響を与えてきた人物はあまたいますが、ケインズ博士が80年前に著した「雇用、利子及び貨幣の一般論」の12章は、そのほとばしる才能が最も凝縮された章の1つであり続けています。その言葉からはウォール街が流血していたときに株式を買う上で必要だったはずの決意がうかがえます。

 「現代の投資市場の惨状はときに私をある結論に向かわせてきた。その結論とは、投資資産の購入を結婚のように永続的で、死やその他の深刻な理由なしでは解消できないものにすれば、現在の諸悪の有効な治療法になるかもしれないというものである。そうすれば投資家は長期的な見通しだけを考えることになるだろう」と。

 ケインズ博士は米国の伝説的なバリュー投資家、ベンジャミン・グレアム氏と同様、弱気相場は余りにも予測不可能なので、確実にそれを避けるのは不可能に近いということ、そして投資で資金を失うことの痛みにはほぼ耐えられないということを理解していました。

 それでも、ケインズ博士は弱気相場を避けようとするのではなく、そこに踏み込んで買うのが勝利する方法だということを知っていました。長い目で見ると、株式には下落の幅以上に上昇するという傾向があるので、下落相場で積極的に株を買うための度胸は投資家が持つことができる最大の武器の1つと言えます。

 これには資金と勇気の両方が必要になります。

 今日の米国株は過去最高値からまだそれほど下がっていないので、現金での保有がこれまで以上に得策に思えます。

 そして、勇気を強固にしておくことも大切です――退職している、または退職が近い場合は話は別で、おそらく株式の保有割合を縮小させておくべきでしょうが。25%、50%以上の株価暴落があったら、株式を買い増しすることを約束する自分との契約書を作成し、友人や家族に証人になってもらうといい。数年後にはそれをしておいて良かったと思うことでしょう。(ソースWSJ)

ブレグジット、英ポンドと英国債に打撃!

2016-10-14 10:55:36 | 経済・金融・投資
英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が金融市場に悪影響を及ぼし始めています。最も明白な犠牲を被っているのは、7日のアジア取引時間に対ドルで一時急落した英ポンドです。しかし同時に英国債も打撃を受けており、これは好ましい組み合わせではありません。

 英ポンドはブレグジットの是非を問う国民投票以来ドルに対して0.25ドル余り下落しており、今週だけでも約0.05ドル値下がりしています。7日のアジア取引ではわずか数分の間に6%以上急落しました。薄商いの中でアルゴリズム取引が下げを増幅したと指摘されています。ロンドン取引時間に入っても不安定な値動きが続きましたが、米雇用統計の発表後に1.24ドル超に回復しました。一方、英10年債利回りは今週、20ベーシスポイント(bp)余り上昇しています。英国債としては大きな動きで、英イングランド銀行(中央銀行)が超緩和的な金融政策を実施し、債券買い入れ措置を再開しているにもかかわらず、利回りは3カ月ぶり高水準に達しました。

 ブレグジットの問題は、6月23日の国民投票でEU離脱派の勝利につながった山積みの懸念を緩和する政治的な必要性と、欧州と深く絡み合った英国経済の実態との折り合いをつけなければならないことです。これを成し遂げるのは難しいように思われ、英国がこれまでに確立した関係の多くに影響を及ぼす破壊的な離脱となるリスクが高まっています。そのため先進国市場では必要に迫られた時にしか行われない政治リスクプレミアムの織り込みが必要となり、急激な調整を招くことになります。

 市場の変動自体も政策当局者には頭痛の種となり得ます。英ポンドの下落はある種安全弁の役割を果たしているのですが、これが暴落に発展すれば話は別です。4-6月期に国内総生産(GDP)比5.9%となった英国の経常収支赤字をめぐる懸念が再燃する恐れもあります。さらに、英ポンド安はすでに上昇傾向にあるインフレを一段と押し上げるでしょう。

 最終的に、これは相反する力への対応を迫られるイングランド銀にとって問題となりかねず、英国債利回りの上昇は金融環境の引き締まりを招くため望ましくありません。しかし、インフレが大幅にオーバーシュートすれば、イングランド銀が政策措置を講じる余地が限られる可能性もあります。金利を引き下げればインフレを促進するリスクが生じ、英ポンドをさらに圧迫する一方、ポンドの防衛やインフレ抑制のために金利を引き上げれば、経済活動を減速させる恐れがあります。非伝統的金融政策の便益と費用を疑問視する見方が強まっている世界では、これまでと異なる政策措置を打ち出すのもリスクが高いのです。

 英国はかつて、特にユーロ圏が債務危機に苛まれていた時には、セーフヘイブン(安全な逃避先)としての役割を担うことで相対的に恩恵を受けてきました。しかし英国の経済モデルが流動的で、将来的な姿が不確実な中で、セーフヘイブンの地位は明らかに損なわれました。市場が定量化しにくい新たなリスクに直面すると、その反応が小さくなることはほとんどありません。経済ではなく政治が主導している現状では、投資家は不安定な相場動向に備えるべきでしょう。(ソ-スWJS)

伊藤忠、純利益と株主資本の不協和音!

2016-10-13 18:30:59 | 経済・金融・投資
伊藤忠商事は、2016年3月期通期の業績を自ら称賛しました。同期には同業他社の一部が多額の赤字を計上したのですが、伊藤忠の純利益は5年連続で2000億円を上回り、同業でトップとなりました。

 岡藤正広社長は年次報告書で、伊藤忠が常に「『有言実行』を貫く企業」だと述べ、収益性のある事業に投資したとの自負をにじませる一方、同業他社の決算が自社を下回ったことについては「敵失」だとしました。

しかし、しっくりこない点がひとつあります。多額の純利益にもかかわらず、総資産から債務を引いた株主資本は2400億円減少したのです。原因には、為替などの避けられない要因もあったでしょう。しかし、投資案件の会計処理も影響したのでは。

 伊藤忠は出資先のコロンビアの石炭事業について評価額を前年度から800億円引き下げましたが、それ以前に会計処理方法を変更していたため、この変更は純利益に影響しなかった。一方で、ほとんど現金を生んでいない中国投資は純利益に貢献したのです。

 伊藤忠を取り巻いているのと同様の会計処理に関する話題は、過去数年の原油、天然ガス、石炭相場急落を受けて世界中で浮上しています。昨年にはシンガポール上場の資源専門商社ノーブル・グループが、石炭生産会社の権益の評価方法に関する匿名の批判をきっかけに、厳しい視線にさらされました。ノーブルはいかなる不正も行っていないとしています。米ニューヨーク州の司法長官は、石油大手エクソン・モービルが同業他社と違って資産の評価損を計上していない理由を調査しています。エクソンは、財務についてあらゆる規則を順守していると述べています。

 伊藤忠の会計処理は、空売り投資ファンドの米グラウカス・リサーチ・グループ(カリフォルニア州)が7月に発表したリポートで批判され、東京のアナリストの間で話題になりました。岡藤氏は自社の純利益を自賛し、多くの投資家は純利益を一番の業績指標だとみていますが、アナリストらは純利益が常に最良の指針とは限らないかもしれないと指摘しています。

 野村証券エクイティ・リサーチ部の成田康浩氏は「会計上の利益はそのまま利益が出ているからといって評価はしにくい」と述べました。「岡藤氏は純利益が好き。利益額で業界ナンバーワンの三菱を抜くというのを標榜(ひょうぼう)して、前期に抜いたわけですが、今期も抜きたい」と思っているといいます。

 伊藤忠は「適正に決算を実施している」と話す。直近の年度まで、純利益が株主資本の増加に貢献してきたといいます。同社は当局から何ら不正行為を問われていません。商社は子会社などが多く、価値の算定が難しい。伊藤忠は、コーポレートメッセージ「ひとりの商人、無数の使命」の下、6月末時点で世界中に子会社212社、関連会社や合弁会社108社を擁しています。

 2011年には、米アラバマ州のドラモンド社が率いるコロンビアの石炭生産・輸送会社の権益の20%を15億ドルで取得しました。石炭価格が下落し始めるなか、程なく問題が浮上しました。13年と14年にはコロンビア政府が、環境への懸念を理由にドラモンドの港の操業を一時停止させたのです。生産量は見通しを下回りました。一部のアナリストは、伊藤忠の権益の評価額が15億ドルを大きく下回っており、評価損計上により純利益が打撃を受ける可能性が高まっているのではないか、と疑い始めたと話しています。

 伊藤忠は15年2月に会計処理の変更を報告しました。同社によれば、コロンビアの石炭共同事業への追加出資を控えると決めたことから、14年10月に契約見直しが行われ、その結果、同社は事業の予算と設備投資を管理する権限を失いました。また、伊藤忠の20%の権益が将来的に希薄化されかねないことを意味する優先株を、ドラモンドが受け取ったといいます。ただ、権益比率は現在のところ20%で変わっていません。ドラモンドは再三のコメント要請に応じませんでした。

 国際財務報告基準(IFRS)によると、企業は出資先に重要な影響力を持つ場合、その出資先の純損益を自社の損益計算書に反映させることになっています。IFRSによれば、20%の権益は大きな影響力を生むと推定しています。

 伊藤忠はコロンビアの事業について、契約見直しにより重要な影響力を行使できなくなったとしています。これは、同権益の評価額の変化は純利益にではなく、株主資本にのみ反映されることを意味します。このシナリオは1年後に起きました。今年5月、伊藤忠はコロンビア事業の権益について、3月時点の評価額がそれまでの報告を800億円下回ると述べたのです。これは純利益に影響しませんでした。

 問題は詰まるところ、伊藤忠が行った同権益の区分変更が正当化できるのかどうか、そうだとすれば、区分変更と同時期に評価額を引き下げるべきだったのか否か、ということです。そうしていれば、IFRSベースの純利益に響いていたはずです。伊藤忠によれば、区分変更の際には、生産予想などに基づくと価値は維持されていたといいます。

 その他にも同社は、中国政府系の複合企業、中国中信集団の中核企業(CITIC)の20%を保有する投資会社の株式の50%も保有しています。伊藤忠は、CITICに対するこの間接的な少数持ち分により同社への影響力を得ているとして、保有比率に対応するCITICの純利益を自社分として反映させています。

 CITICへの投資は伊藤忠の16年3月期純利益を400億円押し上げました。アナリストらは、CITICからの現金配当が100億円未満だったと試算し、その多くは伊藤忠が出資のために借り入れた資金の利息で相殺されたとみています。ほとんど現金が入ってこないのに純利益が押し上げられたことになるのです。

 伊藤忠によると、こうした出資の会計処理は監査法人のトーマツから適切だとみなされています。トーマツはコメントを控えました。野村の成田氏は、伊藤忠の純利益については慎重にみているものの、CITIC投資の潜在力などから伊藤忠株は買いだと考えていると話します。

 グラウカスは7月27日に発表したリポートで、コロンビアと中国での出資の会計処理を批判しました。グラウカスはその中で、伊藤忠株を空売りしていると述べています。つまり、グラウカスは伊藤忠の株価が下落すれば利益を得る立場にあります。伊藤忠株は同リポートが発表された日に6%超下げたが、その後に値を戻しています。

 伊藤忠はコロンビア事業の権益について現在の評価額を開示していませんが、同国での投資額が1180億円だとしています。アナリストらは、これが実質的に石炭事業の(権益の)価値と同じだと話しています。伊藤忠はアナリストによるこの試算を確認することを控えました。

 英エネルギー調査会社ウッド・マッケンジーは、コロンビアの石炭事業全体を23億ドルと評価しています。伊藤忠の保有分が4億6000万ドル(約476億円)になる計算です。伊藤忠によると、16年3月期にはコロンビアでの石炭販売量が2年前の370万トンから590万トンまで回復し、国際石炭価格もわずかながら回復しています。

 伊藤忠が石炭価格と世界の長期需要について力強い回復を信じているのなら、ウッド・マッケンジーの試算の2倍を超える評価額を貫くことができるでしょう。しかし岡藤社長は年次報告書で、「『資源価格はいずれ戻るであろう』という安易な考えでは、経営を見誤ると考えている」と警鐘を鳴らしています。(ソースWSJ)

タカタ、米連邦破産法の適用申請を検討!

2016-10-11 15:51:43 | 経済・金融・投資
エアバッグ問題で経営が揺らぐ自動車部品大手タカタは、米国で連邦破産法の適用を申請することを検討しているそうです。リコール(回収・無償修理)費用の拡大に対応し、新たな出資者を迎えるための選択肢の一つになります。事情を知る複数の関係者が明らかにしました。

 関係者らによると、タカタの第三者委員会は、リコール費用の分担を巡る自動車メーカー各社との協議を連邦破産裁判所で進められる可能性があるとみています。この点で合意を取り付けることは、タカタ支援に関心を示す未公開株(PE)投資会社や自動車部品メーカーからの資本注入という次の段階へ進む上で決定的な重要性を持ちます。

 関係者の一部は、現在協議中の暫定的な計画の下、タカタの米国法人が連邦破産法を通じた債権者からの保護を求める可能性があると述べました。しかし必ず申請すると決まったわけではなく、いくつかある選択肢の一つにすぎないと付け加えました。

 タカタはまず自動車メーカー十数社との話し合いを示談でまとめることを目指す構えですが、全ての関係者から合意を取り付けることは厳しいとみられます。協議の行方によっては日米両方で債権者からの保護を求める可能性も考慮しているもようです。

 タカタ製エアバッグの異常破裂に関連付けられる事故により、世界でこれまでに10人余りが死亡し、100人以上が負傷しました。複数の関係者が以前語ったところでは、タカタは問題への対処に関連した刑事捜査で米司法省との和解に向けた協議も別途進めていると言います。(ソースWSJ)

ドイツ銀、巨額のデリバティブ保有高は不安材料か!

2016-10-10 11:13:09 | 経済・金融・投資
ドイツ銀行の株価は年初来で48%以上、下落しています。背景には、米司法省から多額の和解金を要求されていることや、中核の融資事業が低金利と景気低迷に苦しんでいることがあります。

 しかし一部のアナリストは、ドイツ銀行のデリバティブ(金融派生商品)に対するエクスポージャーや、同行が抱える大量の評価困難な資産についても懸念しています。

 ドイツ銀行はデリバティブの影響をどれくらい受けやすいだろうか。

 ドイツ銀行の2015年年次報告書によると、デリバティブに対するエクスポージャーは41兆9400億ユーロ(約4870兆円)でした。ちなみに、同年のドイツの国内総生産(GDP)は3兆0320億ユーロです。

 しかしこの数字はデリバティブの想定元本をベースにしているため誤解を招く恐れがあります。例えば、金利スワップの想定元本が多額だとしても、実際に受け渡される金利はごくわずかかもしれません。そのため、買い手と売り手がさらされるリスクは数字が示唆するよりはるかに小さいかもしれません。

 つまり、ドイツ銀行のエクスポージャーはデリバティブの評価額よりかなり少ない可能性があります。また、デリバティブの多くは損失が限られているということです。

 ドイツ銀行が抱えるデリバティブの大半はそれほど複雑ではありません。その約78%は金利変動リスクをヘッジできるものです。

 さらに多くの他行と同様、ドイツ銀行のデリバティブに対するエクスポージャーは減少しています。ユーロ危機のさなかの2011年には過去最高の59兆1950億ユーロに達していました。

 では何が問題なのだろうか。

 ドイツ銀行のデリバティブは数字が示唆するほど多くないかもしれませんが、同行は一部の投資家が大した理由もなくドイツ銀行株を売却した場合に評価が難しい資産を大量に抱えています。これらは、複雑なデリバティブやディストレスト債権など評価が困難な「レベル3」の資産に含まれています。

 ドイツ銀行のティア1(普通株などの基本的項目)資本に対するレベル3資産の割合は他行より大きい。この割合は財務の健全性を図る指標ですが、JPモルガン・チェースのアナリストらによると、ドイツ銀は72%と試算されています。グローバルな銀行12行の平均は38%でした。

 その差の一因はデリバティブです。ドイツ銀行自身の査定によると、非流動的なデリバティブの保有額は昨年末時点で102億ドル。一方、バークレイズは80億ドル、ゴールドマン・サックス・グループは59億ドルでした。

 非流動性資産については、投資家は主にドイツ銀行の内部評価に頼らざるを得ません。S&Pグローバル・レーティングは、こうした内部評価は基本的な前提の変化の影響を受けやすいとみています。

 これは心配すべきことだろうか。

 非流動性資産は評価が難しいため、銀行が市場で窮地に立たされると懸念が広がります。

 コンサルティング会社ビオラ・リスク・アドバイザーズのデービッド・ヘンドラー氏は、ドイツ銀行は「リーマンのような状況」で、同行は利益が少ないため、レベル3資産は同行の資本基盤に多大なリスクをもたらしていると指摘しています。

 もっとも、他の多くのアナリストは冷静だ。

 各銀行はここ数年よりも多くのデリバティブ関連情報を開示しています。調査会社クレジットサイツのサイモン・アダムソン最高経営責任者(CEO)は「ドイツ銀行の資本、レバレッジ、資産の質の評価にはすでに今までよりはるかに多くのデリバティブ関連リスクが織り込まれている」と述べました。

 UBSグループによると、ドイツ銀行は2230億ユーロの流動性準備金を保有しています。また、流動性準備金比率は規制当局が定めた最低基準を24ポイント上回っています。

 デリバティブと同様に、ドイツ銀行のレベル3資産が同行のビジネスに占める割合は以前より大幅に低下しています。今年4-6月期は289億ユーロで、07年の880億ユーロから大きく減少しました。

 ではドイツ銀行の株価下落はデリバティブが原因ではないのだろうか。

 そうでもない。ドイツ銀行にはもっと大きな懸念材料がある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先月、米司法省が住宅ローン担保証券の不正販売をめぐり、ドイツ銀行に140億ドルの和解金支払いを要求したと報じました。同行は「それほど多額の和解金」を支払うつもりはないとしており、多くの業界関係者は金額が減らされると予想しています。しかし、ドイツ銀行の業績見通しは極めて暗いため、同行の状況は一段と苦しくなっています。

 ファクトセットによると、ユーロ圏の銀行の1株利益予想は、08年初めのピークの約4分の1に減少していて、ドイツ銀行の減少幅はさらに大きく、1株利益予想はピークの15%程度に落ち込んでいます。

 こうした悲惨な業績見通しによって、ドイツ銀行株の魅力は薄れ、株価が下落しているのです。また、資金調達コストも上昇しています。

 ドイツ銀行は投資家の懸念を和らげようとしていますが、デリバティブの不透明感に対する懸念が足かせとなっているようです。(ソースWSJ)