マックンのメモ日記

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2050年の日本:高齢化を逆手に世界リード!Ⅰ

2015-12-03 12:06:36 | 経済・金融・投資
東京都心のオフィスビル建設現場で、斉藤健一さん(67)は重さ約20キロの板を、まるで年齢が半分若返ったかのように軽々と積み重ねていた。

 その秘密はロボットスーツです。腰回りと太ももを囲むように外骨格型のロボットスーツが装着され、肌にはセンサーが取り付けられています。このセンサーは斉藤さんが筋肉を動かし始めるのを感知し、その動きをアシストするよう機械に命令を出し、これで斉藤さんが実際に感じる重さは8キロほど軽くなります。ヘルメットをかぶった斉藤さんは「まったく10年前と同じだ」と話しました。

 斉藤さんのロボットスーツは、この建設プロジェクトを請け負う大林組が行う実験の一部です。それは同社だけでなく、日本が直面する最大の問題の1つ、つまり急速な高齢化による慢性的な労働力不足に取り組むためのものです。ロボットスーツのおかげで、斉藤さんの働ける期間は延び、大林組も建設を続けることができたのです。

 高齢化が進めば経済が縮小するという言葉通り、過去に例を見ないペースで進む高齢化が日本に厳しい未来を突きつけています。このロジックに従えば、高齢者は非生産的で年金や医療の資源を浪費する存在であり、一方で労働や収入、消費、納税を通じて成長にほとんど貢献しないことになります。

 現在、日本の人口の25%が65歳以上です。この割合は米国では13%にとどまる。日本では、高齢者と15歳未満の子どもからなる「従属人口」1人を支える生産年齢人口は1.6人にすぎません。

 この割合はすでに持続不可能なほど低いと考えられています。2050年までに、日本では従属人口1人を生産年齢人口1人で支えるようになると予想されています。1980年代の高度成長期、日本では2人以上で1人を支えていましたが、これは現在の米国の割合とほぼ同じです。

 悲観論者らは、容赦ない破滅への道から日本を救う唯一の方法は、急激かつ大規模な移民受け入れなどの劇薬しかないと指摘します。ただ、日本が世界でもまれなほど同質性の高い文化を維持してきた歴史を考えると、これは実現しそうにありません。

 しかし、高齢化の課題に取り組む日本の経営者や政治家、学者の数は増えています。彼らは緩やかな適応が高齢化社会の痛みを緩和するのか、負担を恩恵に変えさえするのか、見極めようとしています。

 楽観主義者の場合、増え続ける健康な60代や70代の人々を職場に戻すことから始めます。これにより生産的な社会構成員が増えるばかりか、人口減少で手が回らない現場の仕事を手助けすることにもつながると考えるからです。

 また楽観主義者らは、高齢化に関連する新たな成長エンジンにも言及します。例えば、労働力減少を見込んだオートメーション化(自動化)への投資ブーム、あるいは現役時代の勤労と倹約で積み重ねた貯蓄を使う高齢者をターゲットとした「シルバー市場」の成長などです。日本のシルバー市場はすでに100兆円以上の規模に達しており、年間1兆円の成長が見込まれているのです。

 ビジネスコンサルタントで「シニアビジネス:『多様性市場』で成功する10の鉄則」などベストセラー書籍の執筆者である村田裕之氏は、「『アンチエイジング』から『スマート・エイジング』に発想を転換する必要がある」と指摘しています。

 巧妙な高齢化戦略を作り上げる日本の能力は世界にも示唆を与えています。他の国々もすぐに日本と同じ道をたどるからです。国連の予測によると、2050年までには32カ国が、現在の日本よりも大きい割合の高齢人口を抱えることになると予想されています。

 先陣を切って高齢化社会に対処することをチャンスと捉える日本人もいます。ちょうど前の世代が、まずは日本国内で磨きをかけてから輸出した自動車や電化製品で世界的リーダーになったようにです。ただ、現時点で日本から見えてくるのは、人口動態の変化による利益よりも痛みの方です。

 安倍晋三首相によって打ち出された公共事業計画は、若い肉体労働者の不足で行き詰まっています。大胆な金融緩和で急速な円安をもたらした経済政策「アベノミクス」のおかげで、世界展開する日本の大企業は過去最高益をたたき出していますが、これら企業は利益を国内投資に向けるのをためらい続けています。人口縮小による長期的な成長余地の限界を嗅ぎ取っているからです。こうした状況すべてに暗い影を落としているのは、年金負担で膨張する日本の巨額債務です。

 それでも、この悲観的見通しは、その通りにはならないかもしれない前提条件に依拠しています。つまり、65歳に達したら、社会を支える側から支えられる側に退かなければならないという前提です。いまの60代や70代は、そして80代でさえ、前の世代に比べると活力があり、社会的負担も小さいことは明らかです。こうした中、日本は「高齢化」を再定義しています。(ソースWSJ)