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星槎教育研究所ブログ★相談員の部屋

みんなちがって、みんないい。一人ひとりの宝物を見つけながら。

『LD教授(パパ)の贈り物  ふつうであるよりも個性的に生きたいあなたへ』

2007-08-16 05:18:26 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


   上野 一彦 著   講談社〈1,300円税別〉


 『LD教授(パパ)の贈り物
         ふつうであるよりも個性的に生きたいあなたへ』



    御自身の性向を「LD・ADHDの特徴と類似している」と自覚され
    つつ、LD(Learning Disabilities=学習障がい)と関わってきた
    ご経験の中で、考えられたことをエッセイ形式でまとめてくださって
    います。
    机に向かいかしこまって読むよりも、楽しく文字を追いリラックスしながら
    読むことを、本書には求められているような気がして、わたしは時に横に
    なりつつ、そして時には机に向かって、読みすすめていきました。
    LD教授(パパ)と自称して、「徒然日記(1)(2)」「教育論」「雑学考」
    「短編」「夢」とそれぞれが章立てで分けられています。
    特に、「徒然日記(1)(2)」には、手に汗握るLD教授(パパ)ならではの
    失敗談を多く紹介くださっています。
    このLD教授(パパ)の失敗談は、例えば、物をなくす、大いなる勘違い
    をする、片づけができない、字が汚い、ノートが上手くとれないなどの
    子どもは、LD・ADHDがそうさせているという可能性があることを
    示唆してくれます。
    その子本人は十分すぎるほど気を付けているのですが、なぜかそう
    なってしまうのですよね。
    LD教授(パパ)はそういった失敗談を気軽(?)に告白くださって、
    「たいへんなんだ」と思わせつつ、私たちを笑わせてくれています。
    「教育論」では、LD、ADHD、広汎性発達障害を含め、そのお子
    さんの親として、教師として、関わっていく側の大人が心と頭に留めて
    おくべき内容として残ります。
    「徒然日記(1)(2)」で笑わされ、「教育論」では頭を垂れ、思わず
    背筋を伸ばして読んでしまう、そんなバラエティに富んだメリハリのある
    エッセイが一冊の本にまとめられています。




          ~本書の一節より~

     LDやディスレクシアと呼ばれる人々は、これまでの一般的な学習法
    では成果が上がりにくいが、「いったんコツをつかめばより早く、より
    多くのスキルやテクニックを身につけることができる力」をもつ。まさ
    に学び方のちがう、LD(learning difference)と呼ぶべき人々なの
    である。
     彼らは障がいを克服して、成功したのではなく、他の人とはちがった
    考え方、発想法に長けていたから成功した。いいかえると、障がいがあ
    るのに成功したのではなく、障がいがあったから、他の領域がより強く、
    より広く発達し、異なる解決法を採り入れる力が伸びて成功したのだと
    LD教授(パパ)は確信する。



    ・・・この一節は、「LD教授の夢」の章立て中の「LD偉人伝 こぼ
      ればなし」にある文章です。
      発達障害は「克服」するものではなく、自分の個性として受け入れる
      ものだということを考えます。
      自分の「コツ」をつかむことがとても大切で、特別支援教育は、この
      「コツ」を自覚させることが求められているのだと感じます。
      「ふつう」ではないということが、世の中を進歩させていきます。
      障害の名のもとにくくられてしまってはいますが、発達障害を持つ
      人たちこそ、世の中(それは思想・技術・芸術のどの分野でも)
      すべてにわたり、進歩・変革させる力を持っているのだと思うのです。

どこを切ってもおもしろい 『アスペルガー当事者が語る特別支援教育 スローラーナーのすすめ』

2007-08-10 21:03:01 | 本の紹介
この写真では 表紙のおしゃれさは見えないだろうな・・・

深い紺の夜空に浮かぶ満月と星
羽ばたく「こうもり」は闇にうっすら溶けている.



著者は高森明さん、26歳でアスペルガーと診断された当事者である。

帯には、よこはま発達クリニック 内山登紀夫先生推薦の言葉
”教育論であると共に
少数派の視点から語られた
優れた日本文化論である”


高森はもちろん「こうもり」。

「当事者の中には大人になってから中途診断(注)されるものもいる。
 そして彼らは 鳥にも獣にもなれないコウモリのように
 居場所がなかったのである。
 健常者の世界では奇異な目で見られ、
 障害者の世界では「お前は恵まれている」と言われる。
 そんな経験をしてきた中途診断者は非常に多い。(本文より抜粋)」


本の構成
第1章 「こうもり」の生い立ち---私のたどった発達迷宮
第2章 発達迷宮にようこそ---スローラーナーへの道
第3章 可逆的なもののもとへ---医療・療育・教育支援のアプローチ
第4章 環境改善からの出発---特別支援教育で実現できること

どこから読んでも こうもりさんの考え抜いた思想と哲学にみちみちており
読み応えがあり充実している。
「迷宮」の隅々まであじわうという考え方も好きだ。異論はあるが。


上野一彦、内山登紀夫、倉本智明、3氏との対談収録。
これが 三人三様 それぞれにおもしろい。

内山登紀夫先生!! わたくし、ウッチーの大ファンになりました。

本やHPなどでしか知らなかった 高名な内山登紀夫先生に
初めてお目にかかったのは 
この本の出版記念シンポジウム&パーティのとき。
先生のまわりの空気はやわらかく (何と形容すればいいのだろう)
垣根がなく、懐かしい少年にやっとめぐり会えたような不思議な雰囲気。

この対談がまたメチャメチャおもしろい。どこをとっても面白いし
抜粋することに抵抗を感じるのですが
皆様にすこしおすそ分け・・・でも全部読まないと伝わらないかも。

★内山発言 「~僕なんかノートとんなかったもんね。小中学校のときは
       ずっと空想してた」
       
      「僕はとりあえずいるだけみたいな状態だった。でも先生たちは
       一緒にいることに価値があると思っている。『ずっと一緒に
       いましたよ。何も迷惑かけなかったですよ。善かったですね』
       って、それで終わっちゃうんだ」

      「やはり人によって 学び方のスタイルも違うから、一斉授業が
       好きな人はそれでいいし、本を読んだほうが頭に入る場合もある。
       みんなで授業を受けさせるのがいいのか、選択させればいいんだ        よ。今は選択肢がないし、頭から想定してないもんね。」

      「~高機能の教育で一番問題はね、とにかくみんな一緒とか、
       SSTやれば社会性がつくとか、誤解しているんだよね。SSTも
       アホみたいなことやってる先生いっぱいいるよね。『人の目を
       見て話しましょう』とか ~見たくない目だって顔だって
       あるじゃないですか(笑)ほんと、子どもに同情するよ」

       ああ きりがない もっとおもしろいところがたくさん。
       コウモリさんの話もおもしろいし、全部書きたくなって
       しまいます。
  ぜひ おすすめです。
  みなさん、読んでください!!

『うちの子、なんかちがう? 学習障害(LD)と、その周辺の子どもたち』

2007-08-02 13:45:20 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です

  監修 上野一彦
  原案 植木きよみ
  取材・文 代居真知子      小学館〈1,300円税別〉

 『うちの子、なんかちがう?
     学習障害(LD)と、その周辺の子どもたち』


   「うちの子、なんかちがう?」と感じながら、実際に子どもが
   幼稚園・小学校に入ったあとに、LDなどの軽度発達障害が
   明らかになることがあります。
   LD児の保護者の方が、障害を受けとめ、理解し、子どもが
   その子らしく生きていくための環境を整えるためにどのように
   してきたのかが、読んでいく中でわかってきます。
   保護者にとって大切なのは、子どものために何を求めていったら
   良いかということと、どのように育てていったら良いのかという
   ことが、明確になることです。
   未来に向けての方向性を示してくれることなのです。
   現状のみの提示では救いがありません。また「これは大事なこと
   である」という言葉の羅列だけでは動けません。
   保護者としてどのようにやってきたのか、子どものために考えて
   いかなくてはならないことは何か。
   子ども、保護者、教師、医師、大人になったLD児、それぞれの
   声で、それぞれの方々の生活の中で起きたこと、その体験の様子
   を伝えてくれます。



         ~本書の一節より~

      子育てのゴールはなんでしょう。それは自立です。とくに
     LDやAD/HD、高機能自閉症の子どもたちは、どうやっ
     て社会に送り出していくかということを、ふつうの子以上に
     考えて育てることが必要です。


       ・・・子育てのゴールという考えを改めて教えてくれました。
        経済的自立・生活自立・精神的自立。
        これらができるようになることが、保護者にとって子育て
        終了の合図ということになるのですね。
        自立を目的に、子どもの個性にあわせた力をつけさせて
        いくことが子育てなのだという、とても基本的なことを
        ここで学びました。

『嫌な子・ダメな子なんて言わないで ADHDを持つ子の姿と支援法』

2007-07-27 09:38:12 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です

 
   監修 高山 恵子(えじそんくらぶ代表)
   著 品川 裕香               小学館〈1,300円税別〉
    


 『嫌な子・ダメな子なんて言わないで
          ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ子の姿と支援法』
          



    本書では、保護者の方々の格闘の姿が見えてきます。
    子ども自身が抱えるADHDゆえの悩み・つらさと向き合う
    格闘のみならず、子どもと保護者が対峙する周囲との格闘が、
    より大きな負担を保護者に与えているのがわかります。
    人は社会の中で生きています。
    保護者だけでは、その子へのサポートができないのは当たり
    前なことです。しかし、保護者のみに子どもの成長の責任を
    押し付け、排除し、保護者の方を苦しめています。
    ADHDを理解すること、ADHDはその子が持っている特性
    のひとつだと認識すること、その上で、周りの大人、学校、
    地域社会がサポートに関わらなくてはなりません。
    サポートの求め方、サポートする側の理解、その子に合った
    サポートを見つけるための手段を探る方法を伝えてくれます。



         ~本書の一節より~
      早期発見・早期治療が大切だと考える理由は、ADHDの症状によって
     二次的に発生する問題を避けるためです。つまり、不注意だとか落ち着き
     がない、衝動的といったADHDの症状が原因で、「嫌な子」「やる気の
     ない子」とレッテルをはられたりする。それがまた、本人セルフエスティームを
     下げてしまう。セルフエスティームが下がったことで、ますます「何をやっても
     ダメだ」と思うようになり、人間関係がいっそう苦手になり、社会的不適応が
     進んでしまったりする・・・。その結果、たとえばいじめにあったり、不登校に
     なったり、自傷したり、自分を認めてくれない大人や周囲の環境に反抗的に
     なったりするというような二次障害が出てくるケースは少なくないのです。




      ・・・本来ならば苦しまなくてもいいはずの二次障害が出てしまうこと、
        二次障害は、結果として出てきてしまう障害であることがわかります。
        結果として出てきてしまうならば、二次障害が出ない結果も当然ある
        はずです。
        昔はああだった、こうだった、と昔と今を比較して育て方が言われる
        ことがあります。わたしが思うのは、昔の方が、自分を受け入れて
        くれる大人に出会うチャンスが格段に多かったということです。
        おじいちゃん、おばあちゃん、おじちゃん、おばちゃん、いとこ、
        近所の方々・・・。今を生きる二次障害に苦しむ子どもの、どこにも
        自分を認めてくれる場所がないという絶望の深さを思うのです。

『LD・ADHD・アスペルガー症候群 気になる子がぐんぐん伸びる授業』

2007-07-19 16:46:12 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


  高山 恵子監修  品川 裕香著  小学館〈1,300円税抜き〉

 『LD・ADHD・アスペルガー症候群 気になる子がぐんぐん伸びる授業
        すべて子どもの個性が光る特別支援教育』


   学級の活動の中で、学習の中で、困っている事例を子ども・教師
   双方の視点から抽出し、助言を与えてくれます。
   問題として生じている事態に対する本当の原因を提示して、対策・
   対処と考え方を教えてくれる本です。
   「なまけている」「ばかにしている」などと当該の子どもを捉えて
   いる先生、対応に困っている先生、どのように改善したらいいのか
   わからないと考えている先生のために、その子をこのように捉え、
   考えていくと良いという方向性がきちんと示されています。
   漫画を使ったわかりやすい状況の説明、親切な解説は、困っている
   子どもと先生を孤立させないための、先生を迷わせないための
   道標となります。


         ~本書の一節より~

      自己理解を進めるとき、大事なことはダメなところだけを
     理解させるのではなく、いいところもダメなところ以上に理
     解させることです。簡単なようで、実はこれはかなり難しい
     と考えています。
      というのも、これまで何十人もの子どもたちを取材してい
     るのですが、実に多くの子どもたちが「自分に何ができない
     か、自分のどこがダメか」はわかっているのに、「自分のい
     い点、すばらしい点」についてはほとんど気がついていない
     のです。もちろん「すこしはこれができる」程度の意識はあ
     るのですが、すぐ「でも○○ができないから、これくらいで
     きても全然ダメだよ」と言います。


        ・・・切ない思いをしている子どもがたくさんいることを思います。
          人は、自分のいいところを知ることによって自信が生まれ、
          そして、自分に自信を持つことで初めて、自分の弱点を自分の
          持ち味として見つめることができるのでしょう。
          このことは子どもに限られることではなく、大人にとっても同様で、
          人が生きていくための、しあわせになるための、大切な大切な
          ことだと感じます。

『コーチングの教科書』

2007-07-17 05:36:52 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


   本間 正人著  自由国民社〈1,600円税別〉

 『「最高の能力」を引き出す  コーチングの教科書』



  コーチングとはコミュニケーションスキルの一つです。
  現在は企業でも広まってきていますが、教育の世界でも
  注目されはじめています。
  この本は、教育現場における可能性・有用性を、コーチングの
  基本理念から説明し、コミュニケーションスキルとしての
  用い方・考え方を、やさしく詳しく説明してくれています。
  教育学と学習学のちがいについて理解を深めることにより、
  子どもが受動的に知識を伝えられる教育と子どもが主体的・
  自律的に学ぶ学習では、後者が勉強のみならず人生のいたる
  ところで大切になってくることがわかります。
  コーチングは学習を目的としています。
  コーチングによるコミュニケーションスキルによって、
  個人の内側へ働きかけ、子ども一人一人のやる気を
  引き出す理論と実践を知ることができます。



          ~本書の一節より~
     人 「どうして君は合格点を取れなかったんだ?」
     事 「合格点を取れなかった原因は何かな?」
     人 「なんで君はこんな問題を起こしたのだ?」
     事 「こういう問題が起こった原因は何だろう?」

   「人の質問」は、質問を受けた人にとっては、自分が責められている
   感じを持ちがちです。そうすると、防衛的な反応が引き出されてしま
   います。
    他方、「事の質問」は、ある程度、事態を客観的に見ることができ
   ます。自分が批判の的、矢面に立っていないときには、ある程度冷静
   な分析が可能になるわけです。
    コミュニケーションはキャッチボール。「事の質問」は、「ボール
   を相手のとりやすい位置に置く」やり方だといえるでしょう。





        ・・・発する言葉をかえるのは、物事をつくりかえるのと
          同義だと感じます。人の認識が言葉一つで変化していく
          様子を見ることができました。
          言葉によって、世界が構築されます。
          言葉を知ること、言葉を扱えること、言葉に敏感である
          こと。このスキルを高めることは、子どもにとっても
          教師にとっても、非常に大切であると思います。
  

『子ども虐待という第四の発達障害』

2007-07-13 13:48:58 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


  杉山 登志郎著  学研<1,700円税別>

『子ども虐待という第四の発達障害』



  虐待が脳に影響を及ぼすことを、医学・精神・学習・発達の
  さまざまな角度からわかりやすく伝えてくれる本です。
  虐待された子は、発達障害の様相を示しますが、子ども虐待
  による障害の方が、軽度発達障害よりも広範囲で、治療も
  困難となるのです。
  力による脳の損傷ではなく、虐待された事実によって脳の機能が
  損なわれてしまうということが明らかにされています。
  逆説的にとらえると、養育者の無償の愛情は、子どもの脳を
  育てる必須の要素となっていることになるでしょう。
  教育現場では、「虐待」ということで解けるケースも多々ある
  ようです。
  教育にかかわる私たちは、虐待による子どもの症状のあらわれ
  方を知っておく必要があります。


       ~本書の一節より~
   自閉症児への作業療法の経験の深い担当作業療法士の
   感想は、次のようなものである。
   「自閉症は、連合野を刺激すれば皮質まで届くという感じが
   あるけれど、(虐待を受けた)Lさんにはそういうところが
   見られなかった。脳がまるでいくつかのブロックに分かれて
   バラバラに動いている感じだ。」



     ・・・治療にあたる人の生の手ごたえとしてのこの言葉を
       読んだとき、虐待による脳の損傷の度合いというものを、
       生々しく臨場感をもって感じました。
       力を加えなくても、脳の機能が損傷してしまうことが、
       確実に伝わってくる言葉でした。

『発達障害のある子の困り感に寄り添う支援』

2007-07-13 13:33:47 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


 佐藤 曉著  学研〈1,800円税別〉


『通常の学級に学ぶLD・ADHD・アスペの子どもへの手立て
    発達障害のある子の困り感に寄り添う支援』


 わがままな子、自分勝手な子、怠けている子、このようにとらえて
 しまっている子どもの中に「困り感」が存在している可能性がある
 ことを知らせてくれます。
 やりたいのにできない、何をしたらいいかわからない、言われた
 ことがわからない・・・ここに子どもの困り感があるのです。
 この困り感を正しく知ることによって、一人ひとりに合った適切な
 手立てを構築することができるのです。
 問題として見えているのは、困り感から発生した結果として表面に
 あらわれている現象です。
 根本にある子どもの困り感を発見することで、支援の仕方は
 ずいぶん異なってくることがわかります。


       ~本書の一節より~
    はじめに着手すべき作業は、「子どもに何を身につけさせるのか」を
   明らかにすることである。
    「これができないし、あれも問題だから、どのようにしたらいいか」と
   いう質問をよく受ける。そう尋ねる教師に、「では、先生はこの子に何を
   身につけさせたいのですか」と問うと、「そう言われると困るのです
   が・・・」と口ごもってしまうことがある。



      ・・・問題だけを見つめてしまう教育現場となっていることが
        伝わってきます。
        出発点が問題の凝視ということになっているのが問題で、
        問題の原因を出発点に定めていないということが問題である
        ことを実感しなくてはなりません。

『自閉症児のための絵で見る構造化 パート2』

2007-07-13 12:01:03 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


  佐々木 正美監修 宮原 一郎画   学研 〈1,900円税込み〉


『自閉症児のための絵で見る構造化  パート2』


  保育園・幼稚園から、就労に関するまで、自閉症児の一生にわたる
  サポートを展開しています。
  TEACCHプログラムによる視覚的構造化、物理的構造化の実践の
  ために、わかりやすい画とともに説明がされているのが特徴です。
  現在、自閉症児の生活・学習空間に関する物理的構造化の意義は
  だんだんに浸透してきているといえるでしょう。
  しかし、ただ単にモデルとなる構造化を進めればいいというわけでは
  なく、その子の個性に合った構造化が必要とされています。
  保育園や学校で、家族とともに過ごす場で、就労先で、それぞれの場
  での構造化と、その必要性を理解することが大事です。
  調理に関する視覚的構造化は、将来の自立につながる
  実践報告であり、視覚的構造化の工夫をすることによって、
  自閉症児の将来の可能性を大きく引き出すことができる
  ということを教えてくれています。



      ~本書の一節より~
   いつ、どこで、何を、どれだけ、いつまでにすればよいか、したいのか、
   あるいはすることが期待されているか。これへの適切な答えが環境や
   状況への適応である。学校はそれらを学ぶところである。



     ・・・「期待」されていることを読み取ることができないのが
       自閉症児です。「期待」を大きく期待する学校という場では、
       不安と混乱のきわみで緊張し続けることになるでしょう。
       TEACCHプログラムの構造化は、見通しを持たせ、
       安心させ、自立につなげるための支援として有効に働く
       ことがわかりました。

『本当の TEACCH 自分が自分であるために』

2007-07-13 10:17:58 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


 内山 登紀夫著  学研〈1,800円税込み〉


『本当の TEACCH 自分が自分であるために』


  自閉症を持っている子どもたちへの、そして将来の自立のために、
  本当に必要な支援を考えているプログラム「TEACCH」を
  成り立ちから内容、現在のあり方まで多岐にわたって概要を
  伝えています。
  支援としては、得意な点、弱点を見極めて、個人個人に合った
  プログラム作成による個別化と、安心できる環境を用意し、
  落ちついてものごとに取り組むための構造化の設定を理解する
  ことが大事です。
  自閉症を正しく理解することと、自閉症特性に配慮できることが
  支援と教育の大きな柱となるのです。


         ~本書の一節より~
    定型発達の子どもだったら、同じ場所でやることが昨日と今日とで
    違っていても驚かないだろう。定型発達の子どもは「だれ」と「何」
    をやったかには関心があっても、「どこで」やったかはあまり気に
    しないし記憶にも残りにくい。自閉症の子どもは「どこで」「何」を
    やったのかのつながりが記憶に残りやすい。



     ・・・だからこそ、構造化による安定が必要となるということが
       わかります。構造化は、子どもの自由にさせなくていいのか
       という批判を受けるときもありますが、まず枠組みという安定を
       つくらなければ、自閉症の子どもは自分の意志で動けない
       ということなのです。
       枠組みという安定があってはじめて、ようやく落ちついて
       自分自身の行動ができるのです。

『発達の気になる子といっしょに  ココロとカラダ ほぐしあそび』

2007-07-13 09:51:44 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


  二宮信一著  学研〈1,600円税別)

『発達の気になる子といっしょに  ココロとカラダ  ほぐしあそび』


  軽度発達障害を持っている子のカラダは、かたいことが多いのです。
  かつ、末端の指先などを細かく思い通りに動かすことに困難を感じて
  いる子もいます。
  カラダをうごかしながら、指を動かしながら、自分の意志どおりに
  カラダが動くという経験を多くさせて、自分のカラダが動くという
  認識のチャンスを増やすことを目指しています。
  また、動きを練習するだけではなく、遊びを通してコミュニケーションの
  仕方を学ぶこと、表情を学ぶこと、姿勢や歩き方などの基本動作が
  身につくことまでを含めて、考えている本です。



           ~本書の一節より~
       体は、自分自身が入っている器です。


     ・・・まさにそのとおりで、自分の体を自分が動かしているという
       認識がなければ自分という世界を保つことが難しくなることを
       改めて思います。   

『こころからのごめんなさいへ 一人ひとりの個性に合わせた教育を導入した少年院への挑戦』

2007-07-12 16:35:48 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


     品川 裕香著   中央法規 〈1,900円税別〉

『心からのごめんなさいへ
 一人ひとりの個性に合わせた教育を導入した少年院への挑戦』


  「メタ認知」能力が弱いために、自分の気持ちも相手の気持ちも知ることが
  できず、自分の体さえも制御することができない子どもたちがいるという
  ことを、新たに認識しなくてはなりません。
  LD、ADHD、アスペルガー症候群など軽度発達障害を持つ子どもに
  共通しているのは、メタ認知能力の弱さであり、宇治少年院では発達障害の
  ない在院生にも見られる傾向でした。
  安全で安心が確保される環境を整えることを土台として、スモールステップ
  の導入、モデリング、それぞれに創意工夫を重ね、個人個人の認知能力、
  傾向(=個性)に合わせた教育を浸透させていく実践と効果は、教育に
  かかわるすべての場所で取り組まなくてはならないことです。


         ~本書の一節より~
   しっかり人の話を聴く経験。
   人の話を聴いて自分はどう思うのか考える経験。
   そして自分が考えたことを言葉で人に伝える経験。
   少年院に来るまでそんな機会も経験もなかった、という彼らの言葉は重い。
   どういう事情があったにせよ、だ。そんな、一見些細に見える経験のなか
   から、人が学ぶものは非常に大きいのだから。


     ・・・わたしたち教育にかかわる者は、どの段階で、メタ認知能力が身について
       いない子どもを見つけることができるのでしょうか。
       自分自身で分析できる、あるいは自分自身を分析できる
       思考能力・思考過程を、随時意識的に確認できるメタ認知能力を、
       個性に合わせてつけることができるのは、小学校でしかないと
       感じています。
       いま、メタ認知能力が身についているかどうかを、
       学校教育の過程で確認していくシステムづくりが
       必要とされているのでしょう。

『困り感に寄り添う支援の実際――通常の学級に学ぶLD・ADHD・アスペの子どもへの手立て』

2007-07-12 16:11:27 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


     佐藤 曉著 学研〈1,700円税別〉

『見て分かる 困り感に寄り添う支援の実際
――通常の学級に学ぶLD・ADHD・アスペの子どもへの手立て』


  読み進めていくうちに、LD・ADHD・アスペルガー症候群の
  子どもを支援するための本ということを忘れて、豊かな学級づくりを
  展開させていく本なのだなと認識してしまうでしょう。
  なぜなら、子どもが安心する環境・規律・授業の組み立てなどの
  すべては、定型発達の子どもたちにとっても、落ち着いた学習の
  ためには必要なことであるからです。
  まず、安心・安全な場をつくりあげないと、発達障害を持っている
  子どもたちは、学習に取り組めません。
  しかし、定型発達の子どもたちにとっても、これは同様のことです。
  今すぐにでも取り組める環境・学級づくり、学習への向かい方、
  それをわかりやすく示してくれています。


            ~本書の一節より~
   全部できたら、好きなシールをはる。終ったあとに、子どもが望むことを
   ほんの少しでも用意するのがコツである。ただし、こうした手だてには
   賞味期限があるので、「今日は乗りがもうひとつだったな」と思ったら、
   次の日には目先をちょっと変えてみる。そういう教師の勘は磨かないと
   いけない。


      ・・・学級の作り手は教師であるけれども、受け入れるのは子どもたちである
        ということを「賞味期限がある」という言葉で端的に表していて、
        おもしろく感じます。読み手にやさしく、ちゃんと伝えたい!
        という意志を感じます。

『発達障がいを持つ子の「いいところ」応援計画』

2007-07-12 15:54:23 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です

     阿部 利彦著  ぶどう社 〈1,700円税抜き〉

『発達障害を持つ子の「いいところ」応援計画』


  子どものいいところ探しは、見方をかえることからはじまります。
  それは、言葉での認識の転換を図ることと同義となるでしょう。
  まず、教師である大人の側が子どもを前向きな目でとらえるように
  認識の転換をうながしてくれています。そして、明るい面として
  とらえた上で、「やってみよう!」という流れをつくり上げる
  ことを勧めてくれています。
  誰でも、暗いことがらには、こころがすさんで続かないと思います。
  まず、認識をかえてみようというのは、斬新な視点です。
  もちろん、具体的な提示の方法、指導の方についても、
  常に現場を念頭に置いて考えた方法を、
  やさしい言葉で、わかりやすく伝えてくれています。


          ~本書の一節より~
     AD/HDを持つ子にしても、「多動で落ち着きのない、
     どうしようもない子」と見るのか、「活発で、元気な、
     憎めない子」と見るのかによって、私たちがその子の
     応援団になれるのかどうかが決まります。



     ・・・「見る」と表現されていますが、言葉での認識の転換を図るということです。
        表現をかえることで、そのものに対する認識がかわっていきます。
        子どもに対する認識をかえることが、まず、応援する第一歩を踏み出す
        ベースとなることを思いました。

『わかってほしい! 気になる子 自閉症・ADHDなどと向き合う保育』

2007-07-12 15:29:07 | 本の紹介
研究員(Mae)の本紹介です


  田中康雄監修  学研 (1,680円税込み)

『わかってほしい! 気になる子 自閉症・ADHDなどと向き合う保育』


   保育者にやさしい配慮がちりばめられています。
  「~べきである」という保育者を追い詰める言葉はなく、
  保育現場を十分に考慮し、保育者がどのように「気になる子」と
  かかわっていくことができるのかについて、具体的に教えてくれています。
  また、保護者も「気になる子」の行動が気になっているがゆえに、
  保育者にとってはどうしても保護者との対応は難しく
  デリケートなものになってしまいますが、
  具体的な方法・言い方も提示してくれています。
  うわべだけの、言葉だけ言っているような保育実践ではなく、
  臨場感のある、現実的な保育実践の報告ともいえる本です。
  わかくさ保育園のリソース・システムの実現、活用も
  保育者・保育園にとっては有益な情報です。


             ~本書の一節より~
    どうしても、子どもの怒りがおさまらないこともあるでしょう。
    その場合は、ひるまずに次の行動を促し、予定どおりに進めたうえで、
    「ごめんね、もっとあそびたかったのにね」と子どもの気持ちに添うことばをかけ、
    「えらいね。よくがまんしたね」と評価してほしいと思います。


      ・・・「ひるまずに」という言葉を読んだとき、保育者をできるだけ
         支えていこうとする姿勢と、保育者を突き放さず、守り育てて
         いこうとする視点を感じました。