阿部先生には 星槎親の会 星槎大学をはじめ
各種セミナーでお話いただいた。
冷静な分析と熱い思いが あたたかいユーモアにくるまれていて
楽しくて タメになるお話である。
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その阿部先生の新しいご本が、本日発売である。
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『教師の力で明日できる特別支援教育
スペシャルサポートをナチュラルサポートにつなぐ埼玉県所沢市の挑戦』
柘植 雅義 監修/阿部 利彦 編
本書に寄せて
はじめに
序章 所沢市の特別支援教育の特徴(冒頭)
第1章 特別支援教育を通常の学級でどうすすめるか?(冒頭)
第2章 特別支援教育コーディネーターはどう動けばいいのか?(冒頭)
第3章 子ども,保護者,教師を応援するシステムとは(冒頭)
第4章 学習支援員活用マニュアル/活動ガイド(冒頭)
おわりに
http://www.meijitosho.co.jp/shoseki/shosai.html?bango=4%2D18%2D071616%2D6
以下 阿部利彦先生のあいさつ文です。
とても思いのこもった文なので ぜひご一読ください。
はじめに
「ありがとう」からはじまる特別支援教育
「特別支援教育って具体的に何をすればいいのか?」
「私は専門的知識がないので」
「通常の学級で『特別なこと』をするのは無理だ」
「そんな時間は作れない」
特別支援教育への期待とともに,
学校現場では不安や戸惑いの声をたくさん耳にする。
我が国では,特に通常の学級において,特定の一人へのスペシャルな,
周りから目立つような支援を実施することは難しいのである。
その原因の一つは,周りの子どもたちに「寛容さ」が育っていないことにある。「あいつだけずるい」「どうしてあの子だけ特別なの」といったジェラシーが
周囲から湧き上がり,そこから新たな問題が生じる可能性が高いからである。
それなら子どもたちの理解を得ればいい,というのは正論だが,
現実はそう甘くない。
学生ボランティア等を活用した学生支援員,特別支援教育支援員等の制度も
最近は進んできたが,ただ人員を就けただけでは,
支援対象となる子のプライドを傷つけたり,孤立を招いたりする恐れもある。
また,他の保護者がどう受け止めるかによっても,成果は異なる。
発達障害のある子を支えるべきスペシャルサービスが,
その子をクラスから浮かせ,苦しめているケースが実際多く聞かれる。
また,現場には,担任クラスに他の教師や学習支援員が踏み込むことに
慣れていない教師や,皆に分け隔てなく接しようとするあまり,
特定の子に特別な支援を行うことに抵抗のある教師もいる。
発達障害に対する理解にしても,管理職から教師や支援員のすみずみまで
浸透しているとは言いがたいのが実状なのである。
そこで,本書では,スペシャルなサービスを,自然にさりげなく導入し,
その子を支える「ナチュラルなサポート」にしていくための努力を
紹介していきたい。
通常の学級での自然な支援を構築するための,基本的な学級経営の在り方,
コーディネーターの動き方,子ども・保護者・教師を支える組織の体制作り,
そして学習支援員の有効な活用法等であるが,どの章にも貫かれているテーマ,
それは「さりげなく,ささやかで,しみこむ支援」である。
子どもが学習でつまずいたり,クラスメイトとうまく関われなかったり,
気持ちの調節が上手にできなかったり,といった「辛さ」や「うまくいかなさ」を
持っている場合,障害のあるなしに関わらず,
その子にあった指導や援助をできる限り工夫していくことが求められる。
独特の「生きにくさ」を抱えた子どもたちの中には,
「苦しんでいる」と口にできない子,それを認めたくない子,
そのことにすら気づかない子もいる。
「苦しんでいる」サインをより早くキャッチし,
適切な援助の手を差しのべるために,私たち大人が腕を磨くこと,
それが「特別支援教育」の要であると私は考える。
しかし,子どもが困っている時に何らかの手を差しのべる。
それは,制度やきまりによって行われることではなく,
先に生まれてきた我々に与えられた当然の使命ではないだろうか。
一人ひとりの子どもの特徴に合わせた指導を実践してきた教師にとっては,
ここで紹介する特別支援教育の中身は,決してこれまでと「別の取り組み」とは
思えないはずである。
「特別支援教育」は,
これまでとはまったく新しい発想や取り組みなのではない。
すでに心ある教師たちが実践してきたこと,
まさに教師の知識と経験と勇気こそが核になっている取り組みなのである。
本書を読んで,それをぜひ感じてもらいたい。
そして,特別支援教育にはもう一つ重要なことがある。
それは,いつもお互いが周囲の人々に感謝の気持ちを持ちつづけることである。
例えば,担任が子どもへの対応を少し工夫してくれた時には,
「担任だから当たり前」ではなく,「ありがとうございます」と言いたい。
落ち着きがないと言われる我が子の学習支援のために
毎日学校に足を運んでくれるお母さんには「親だから当たり前」ではなく,
「いつもありがとうございます」と言いたい。
子どもが頑張ってくれている時には,「中学生なんだから当たり前」ではなく,「君が一生懸命でうれしいよ。ありがとう」と。
「相手への感謝」こそが,人と人が支え合う,
支援の基本であることを忘れてはならない。
所沢市において,「特別支援教育」ははじまったばかりである。
それぞれの立場で細々と努力していた小さな取り組みが,今つながりはじめ,
花開こうとしている。
完璧な「特別支援教育」等は最初から存在しない。
保護者,教師,専門家,そして子どもたちとで「特別支援教育」という花を
咲かせていきたいと思っている。
この本はお忙しい先生方や保護者の方のために,
いつもは専門書に向かう時に必要な肩の力をちょっと抜いて,
どの章,どの項目から読んでいただいてもいいように構成したつもりである。
そして,明日から少しずつ実践できるようなポイントをまとめてみた。
もし,この本が少しでも皆さんのお役に立つなら幸いである。
今を精一杯生きている子どもたちに,お父さん・お母さんに,現場の先生方に,
そして,この本を手にとってくださったあなたに,
心から……「ありがとうございます」。
2007年(平成19年)5月 編者 /阿部 利彦
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