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紺青小鉢

ミニマムな和の空間で、日本の伝統文化を再発見

白い壁

2015年06月04日 | 美術館・博物館
フィンランドを代表する画家、ヘレン・シャルフベックの展覧会が東京藝大美術館で開催されています。このヘレン某なる人物…存じませんでしたが、チラシに載っている絵が自分好みだったので、まあ見に行こうかと。
19世紀末から20世紀初めに活躍したシャルフベック。幼い頃から足の不自由という重荷を背負いながらも、画家として確実に人生を歩んでいきます。様々なものから影響を受け、時代とともに変化していった画風。そして死ぬるそのときまで、ひとりの画家として在り続けたシャルフベックの生涯。見たあとにはちょっと心に雨が降りそうです。
『扉』、『少女の頭部』、『パン屋』、『お針子の半身像』がマル。

大英博物館展

2015年04月22日 | 美術館・博物館
知らないうちに始まってました、大英博物館展。実はきのう別の展覧会を見に上野に行ってたんですが、それはまあのちほど。
大英博物館だからエジプトものが多いという、ベタな構成ではなさそうな今回の展覧会。石器や縄文土器、金貨など世界中から収集(寄せ集め!?)されたモノを通して、人類の創造の歴史を見ることがテーマのようです。個人的にはイラクで出土した「ウルのスタンダード」が良いですね。この「青い箱」が何なのか未だにわからないのも神秘性があって。
ローマ皇帝の胸像みたいな美術品から、どう見ても日用品にしか思えないモノまで大英博物館のコレクション様々100品。さすがに図録は買いませなんだ。

ちなみにきのうは東京藝大美術館の「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」展と、東京国立博物館で開催中の「インドの仏」展を見に行ってました。ダブル・インパクト展は東京藝大とボストン美術館のふたつのコレクション企画だそうで。まあ個人的には展覧会のチラシに載っている骸骨に心惹かれたんですけど。
けっこう良いかも…ボストン美術館の所蔵品のおもしろさ、明治時代の日本美術を収集した先見性には恐れ入ります。小林清親「九段坂五月夜」、横山大観「滝」「樹間の月」、下村観山「大石内蔵助」が好み。
中川八郎「仁王」、吉田博「妙義神社」の絵は心に響くものあり。

東京国立博物館の表慶館で開催されている「インドの仏」展ですが、この表慶館の2階に上がれるだけでも貴重な機会だと思います。いつも東洋館のインド・ガンダーラのフロアとかガラガラなのに、何でこんなに混んでんの!?的な混み具合なんですが。コルカタ・インド博物館の展示物だからこんなにすごいんでしょうか。コルカタじゃなくてカタコル...。

若冲と蕪村とマグリット

2015年04月15日 | 美術館・博物館
「図録重っ」...鮮やかな動植物絵のイメージがある伊藤若冲。与謝蕪村は俳人だったような…そんな考えが吹っ飛ぶ今回の美術展。江戸時代を代表する絵師、若冲と蕪村の展覧会が、六本木のサントリー美術館で開催されています。
エアーブラシで描いたようなぼかしと精緻な表現。水墨画でも卓越した筆さばきを見せる若冲。対して蕪村は軽妙なタッチの絵を描きます。俳句で腕を鳴らした与謝蕪村、その感性が光る配置の妙。
蕪村の「五月雨や」自賛画、「柳ちり」自賛画、『富嶽列松図』が良いですね~。若冲は『達磨図』、『箒に狗子図』、『石峰寺図』、『托鉢図』が好み。最後の2作品は現代に通じるデザインかもしれません。ちなみに会期中の展示替えが多くて、もう見られない作品もあります。
生誕三百年で同い年。京の都で活躍し、ご近所さんでありながら交流した跡はなし...いまこうして同じ展覧会で相見えるとは。

このあと新国立美術館のマグリット展も鑑賞。シュールすぎてよくわかりませんでした。

手羽先のはばたき

2015年04月07日 | 美術館・博物館
雨なのにけっこう混んでますけど? 「ボッティチェリとルネサンス」展。先日の上野ではバロック美術を代表する画家、グエルチーノの描いた油彩画を堪能しました。渋谷のBunkamuraで開催されているこの展覧会では、日本初公開を含む十数点のボッティチェリ作品が見られるそうで。
ウフィツィ第2章的なかんじの「ボッティチェリとルネサンス」展。テンペラ画特有の淡い色彩に魅せられます。天使が舞い降りる《受胎告知》のようなドデカイ作品も展示。ボッティチェリの描く聖母子に祝福されたかのような、癒しの空間がそこには或りました。
ボッティチェリは言うに及ばず、この展覧会で心惹かれたのが、フランチェスコ・ボッティチーニの《幼子イエスを礼拝する聖母》。これは細かく描かれた花に注目。偽ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノの《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》。マットな色調で描かれた聖母子は、まるで色付き版木のよう。手の込んだ額装も見事な作品でした。

聖なる空間の表現

2015年03月10日 | 美術館・博物館
昨年の「ウフィツィ美術館」展を見た影響もあるんでしょうが、ここ最近はイタリアの文化や芸術に惹かれることが多いです。バロック美術の代表格とされるグエルチーノ。早割チケットを買うまではその名を知りませんで…。
上野の国立西洋美術館で開催中の「グエルチーノ」展。絵画数は思いのほか少ないんですが、先日の「ルーブル美術館」展に比べると、絵は大きくて見応えがあります。ルーブルは主に風俗画中心の展示だったので、そんなに大きな絵はなかったような...。一方バロック美術は躍動感の表現や明暗の対比がはっきりしているので、大きな画布であればそれだけ印象が強くなるのかもしれません。
薄暗い展示室に浮かび上がる白くなめらかな肌。その肉体に纏う紅 (くれない) の衣。ラピスラズリの劇的なほど美しく深い青。繊細な手には温もりを感じさせ、ちょい伸びた足の爪まで描き込むグエルチーノ。いつまでも見ていたいその描写力。

ルーブル美術館展

2015年02月25日 | 美術館・博物館
新美術館だからゆったり見られるだろう...なんて思っていたら大間違い。まだ開催して4日しか経ってないのに、いったい何なのよ(マツコ風)このチケット売場の行列は。乃木坂とかそんなに行きやすい場所とは言えないのに、何この集客力は。やっぱり初来日のフェルメールが目当てだったりするんでしょうかね...。個人的には今回の《天文学者》よりかは、数年前に見た《地理学者》のほうが好きなんですけど。
アレクサンドル=ガブリエル・ドゥカンの《稼いだお金を数える物乞い》、ハブリエル・メツーの『若い女性を訪れる士官』、カミーユ・コローの《身づくろいをする若い娘》がいいかんじ。
国立新美術館に来たら地下のミュージアムショップ行かなきゃ意味ないですから。すいませ~ん、また変なのばっか買っちゃって(マツコ風)。

みちのくの仏像

2015年01月23日 | 美術館・博物館
東北地方の仏像は京都や奈良と比べて、妙にバランスが悪かったりする仏像が多いとかなんとか。いとうせいこう・みうらじゅん著の「見仏記」という本に書いてありました。東京国立博物館で開催されている「みちのくの仏像」展で、実際に東北の仏像を見てみると、たしかに見慣れた仏像とはちょっと雰囲気が違うような気もします。
都から離れた東北地方、その昔は蝦夷と呼ばれていました。平安時代に飢餓や疫病で苦しめられる民を救うために、徳一というひとりの僧が都から訪れます。天災や飢饉に苦しむ人々を助けながら、仏の教えを説いていきました。
その徳一が彫らせた仏像が勝常寺の薬師如来坐像。一木造(いちぼくづくり)でつくられた堂々たるボディ…迫力のある衣のしわ(衣文)が、圧倒的な力強さを表しています。顔だけ真っ黒ってのもコワいですけど。黒石寺の薬師如来坐像も眼差しというか顔つきが普通とはちょっと違います。脇に仕える月光菩薩はサッポロポテトのような細いゆび…(バーベQあじではない)。
ほっこりした表情に思わず目を細めてしまう円空仏。ノミ跡荒々しいイメージがある円空仏ですが、これは円空初期の作品。隅々まで丁寧に仕上げた感がすばらしい円空仏です。釈迦如来立像はまるでマツコ・デラックスのよう。

未来都市TOKYO

2014年11月05日 | 美術館・博物館
巨大なUFOのような外観。近未来を超えるそのデザイン。実現不可能としか思えないスケール感。新国立競技場の国際デザインコンクールで最優秀賞に選ばれた建築家、ザハ・ハディドの大規模個展が、初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催されています。
絵画のようなドローイングが何枚も飾られた展示室。はじめザハの設計はそのほとんどがあまりにも前衛的すぎて、実際に建設されないものばかりでした。1993年の〈ヴィトラ社消防ステーション〉から徐々に建築プロジェクトが実現していきます。展覧会では小さな建築模型がいくつか展示されていますが、これだけでも作るの大変ですよ。個人的にはスコットランドにある〈グラスゴー・リバーサイド・ミュージアム〉の建築が好きなんですけど、イメージ画でしか見られませんでした(奥の展示室のベンチがそれとなくグラスゴーになっていますが)。
2020年東京オリンピックのメイン会場となる〈新国立競技場〉の計画案も展示。巨大なアワビ!? かはたまたUFOかというデザインの競技場ですが、緑に囲まれた代々木の地にこんな近未来のフォルムが出現したら、さぞかし違和感があることでしょう…でもこれが2020年の当世風なのかもしれません。ザハ・ハディドの世界観が少しだけわかったような気がする展覧会でした。
アートギャラリーで同時開催中の「収蔵品展 抽象の楽しみ」が、その名の通りけっこう楽しめます。図録とかあれば良かったんですが…。

伊太利亜るねさんす

2014年10月16日 | 美術館・博物館
イタリアのフィレンツェにあるウフィツィ美術館は、メディチ家が蒐集した美術作品を数多く所蔵していることで知られています。東京都美術館では日本初となる「ウフィツィ美術館」展を開催しています。フィレンツェといえば昨年この上野でルネサンス三大巨匠が一堂に会したわけですが、今回も聖母子像みたいな絵が多いんでしょうか…。
薄暗い展示室に浮かび上がるテンペラ画。高貴な緋色や青の色合いが際立っています。15世紀の絵がこれほど綺麗に見られるのもテンペラ画だからでしょうか。ちなみにテンペラとは乳化作用をもつ物質を固着材として使う絵画技法のことで、西洋では卵を混ぜて描く卵テンペラが一般的でした。経年劣化が少ないのがこの技法の特徴です。
鮮やかな絵画の中で異彩を放つフランチェスコ・グラナッチの《銀杯の探索を命ずるヨゼフ》が印象的です。メディチ一族や歴代教皇の小さな肖像画もなかなか。でも絵はがきの品揃えが残念~。
会期は12月14日まで。先日開催したばかりなのにもう2ヶ月切ってます...お早めに。

ホドリズム!?

2014年10月08日 | 美術館・博物館
荒々しいタッチで描かれた雄大なアルプスの風景。初めてその名を知ったスイス人の画家、フェルディナント・ホドラー。展覧会のフライヤーには風景画の枠にとどまらない絵がいくつもあります。その趣を異にする画風に興味を覚えて、ホドラーの大回顧展が開催されている国立西洋美術館へ行ってきました。
きのう開幕したばかりということで、会場内はゆったりとした雰囲気に包まれています。これはじっくりと作品に向き合える良い機会かと思います。バアさんのおしゃべりも聞こえない静寂の中で、ひとつひとつの作品に見入る観覧客。
風景画家として歩み始めた初期の作品から、生涯追い求めた表現「光」の反射や反映などを描いたもの、若きホドラーにつきまとっていた「死」のイメージを描いたもの、その後のホドラーの絵画に出てきた躍動感あふれる「生」のイメージといった様々な画風の作品を鑑賞。
床や壁面がアイボリー系で統一された明るい部屋に、後期に描かれたアルプスの風景画が展示されています。白い壁に映える青い空と特徴のある雲、そこに描かれた山岳世界は素晴らしいの一言。壁画装飾も依頼されたホドラーですが、ドイツのハノーファー市庁舎に据えられた壁画《「全員一致」のための習作》はカッコ良すぎです。
この展覧会は滋養のある粥を食したような満足感がありました。