【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

旅に結ぶ夢

2012-09-08 17:51:17 | A・クリスティーの館






「列車って無情なものだと思うわ。
そうお思いにならない、ポアロさん?
乗客が死のうが、殺されようが、
平然と走り続けているんですもの」
(中略)
「ええ、分かりますよ。
人生も列車のようなものです、マドモアゼル。
何が起ころうと止まらずに続いて行くのです。
又それでいいのですよ」
「なぜ?」
「列車はついには 旅路の果て に達します。
お国のことわざにもありましょう、マドモアゼル?」
「“旅路の果てに恋が待つ?”」
レノックスが笑った。         
        【A・クリスティー作 「ブルートレイン殺人事件」】


   今日の天気は曇り、時々雨。
  雨こそ降ってはいないものの、少々、不安定な天気になっています。

   おまけにジト~ッと纏わりつくような蒸し暑さ。
  気温はそれ程高くないのですが・・。






   さて、つい2、3日前になりますが、
  A・クリスティー著 「ブルートレイン殺人事件」、読了。

   読み始めたのは、もう随分前になりますが、
  暫(しばら)く放ったらかし。

   その後、再び読み始めたのですが、もう夢中。
  それからは、一気に読み進めました。

   A・クリスティーですから勿論、ミステリー。(ポアロ物) 
  でも、何だかいつもと様相が違います。
  文中の会話や描写に思わず引き付けられ・・。

   もう一方の ミス・マープル物 では、さすがに女性の視点から
  編物、料理、植物(ハーブ)など、取り上げている事が多く、
  興味を持っていたものですが、ポアロ物にまでとは。兎にも角にも嬉しい誤算。

   ところで 「旅に結ぶ夢」 と言えば、やはり列車の旅でしょうか。
  その中でも 「ブルートレイン」 は、格別ですね。
  今では随分、少なくなりましたが・・。

   そして列車と言えば、何と言っても今日のA・クリスティーですね。
  「オリエント急行殺人事件」 「パディントン発4時50分」 など、
  多くの作品があります。

   この作品も、リヴィエラ行き豪華特急ブルートレインの中で
  殺人事件が起こります。ルビーの宝石も絡んで。

   相も変わらず意外な犯人。ようするに1番犯人らしくない人間。
  そういう意味で目星を付けていた人間が犯人でした。

   それにしてもこの作品ばかりは、殺人事件も然(さ)る事ながら、
  同時に 「恋愛講座」 も開設しているかのよう。
  上記を初めとしてポアロの含蓄(がんちく)ある言葉が響きます。

   紐解けば、この作品を書いた時のクリスティー自身が、
  人生の1番辛い時期であったとか。

   そんな事は微塵(みじん)も感じさせない軽快な文章ですが、
  この作品の至る所に散りばめられている言葉は、
  女史自身の心の声かも知れません。
  

「私はこれでも様々な経験をして来た男です。
人生については2つの事が言えます。
1つは良い男が良くない女に対する愛ゆえに
やはりたまさか身を滅ぼすという事」
キャサリンはハッとしたように顔を上げた。
(中略)
「彼らには、女心に訴える資質があるのです ――
無軌道さ、大胆さ、勇気」
(中略)
「泥棒を愛する事は出来るでしょう。
しかし殺人者を愛してはいけませんな」
          【A・クリスティー著 「ブルートレイン殺人事件」】