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「パル判決書」の真実  いまこそ東京裁判史観を断つ

2011年01月08日 21時41分24秒 | 政治関連・評論・歴史・外交

渡部 昇一氏の著書。

渡部氏は昭和5年、山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。ドイツ、イギリスに留学後母校で教鞭を取られるかたわらアメリカ各地でも講義をされ、上智大学教授を経て上智大学名誉教授であられる。専門の英語学だけでなく、歴史、哲学、人生論など執筆ジャンルは幅広くDr.Phil(1958), Dr.phil.h.c.(1994), 第24回日本エッセイストクラブ賞、第一回正論大賞受賞されてゐる。

本書を読み始めた動機はこちら ↓ に書いたが、「歴史の嘘」を延々と中高時代に教へられてきたこと(現在も嘘を教へたり、平気で嘘談話を出してゐる自称政治家がゐるが)より「明治以降、一体どのやうなことがあつたのか、そして東京裁判とは何なのか」と考へて本を探したことによる。

http://liebekdinoschumi.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-6cc6.html

本書は、東京裁判にインド代表判事として参加したラダビノッド・パルの判決書を、歴史や法律の「非」専門家である日本人に向けて書いたものである、と認識する。

「パル判事の真実」の前書きには、「最近の私の結論では、普通の(研究などの専門職でない立場と言ふ意味と解釈してする)日本人には東京裁判について知る必要はなく、『パル判決書』のみ徹底的に知るべきである、ということである」(P1)と書いてある。

あまりに極端に思へるが、パル判事はひとり、被告全員無罪を主張した人なのである。

渡部氏はなぜ、「東京裁判(東京裁判史観)について知る必要がなく、「パル史観(パル判決書)」を知るべきだと主張するのか。

途中の章にも記述があるが、「終章 『東京裁判史観』から『パル史観』へ」(P223-233) に綺麗にまとめられてゐる。

本書は、パル判決書を東京裁判で「容疑」として挙げられた罪状についてパル判事が証拠を詳細に検証し見解を述べていくことを項目ごとにまとめてゐるものであるが、なぜパル史観なのかを知りたい人は最初に終章から読むのがよいかもしれない。

中でも驚いたのは教科書と矛盾がある!といふ部分が多々あつたことである。これは、教科書と読み比べるべき書であらう。(つまり、教科書が嘘を吐いてゐるといふことなのである)

終章には以下がまとめられてゐる。

  1. 東京裁判の検察、裁判官(判事)が中立国からの選出ではなく日本と戦つた国から選出され、公正な裁判と言ひがたい。
  2. 国際法に則つて行なはれた裁判ではない。(第一章に記述されてゐるが、マッカーサーのチャーター(極東国際軍事裁判所条例)が作られ、それに基づいて裁判が行なはれた。この条例作成には、主席検事が加ははつてをり告発する側が裁判の規定づくりに関与してゐる)
  3. 2に記載のとおり、東京裁判は法律的に無効であることにパル判事は気付いた
  4. パル判事は、国際法の立場から被告の容疑を検証し判決書を書いた
  5. GHQにより発令された昭和21年の公職追放令により学界、ジャーナリズムを始めとした各界で公職追放された人に代はり、共産党に入党したり左翼活動で日本から逃げ出した人、追われた人が占めるやうになつた。政界や経済界では追放された人たちが復帰したが、学界とジャーナリズムの分野では左翼思想の人間が居続けた。それゆえ、「反日的」な「東京裁判史観」が広まり社会に普及して行つた。
  6. 5により、誤まつた事が「歴史的事実」として広まつてゐる現在、事実に忠実であるパル史観を学ぶことが必要である。

本書を順を追つて読んでいけばわかるやうに、「東京裁判史観(判決)」といふのは言つてみれば白人が白人と同ぢことをしやうとしたおよび白人の植民地であつたインドシナやマレーを奪つたアジア人(日本人)に仕返しをしただけの話なのである。

その仕返しをするためにも、国際法に則つて検証していつたのでは有罪に出来ないので、自分たちの都合のいひやうに条例を作り、自分たちに不利な証拠は却下し、有利な証拠を作らせ採用し・・・ととどのつまりは「日本有罪」と持つていくための茶番劇だつたのである。

その白豚の考へをイギリスの植民地のインドの人であつたパルは見抜いたのであらう、一つ一つを詳細に検証し「なぜ白人が今までやつてゐたことを日本がしてはいけない(有罪になる)のか」としていくのである。

なので、本書はパルの視点により白豚が「有罪」とした部分で「国際法上無罪」である根拠や白豚検事らの主張の矛盾点を突き、そこに渡部氏が条約に関する補足等を記述していくといふ、法律用語で難解な部分はあるが東京裁判として行なはれたことが如何なる事だつたのかよくわかるやうになつてゐる。

印象的だつたのは、溥儀の家庭教師を務めたジョンストンといふ人が溥儀と一緒に命からがら日本の公使館に逃げた。やがて日本の助けを得て父祖の地である満州の地に戻つたことが体験記である「紫禁城の黄昏」に書いてあるさうだ。(P93) しかしジョンストンや駐日英大使クレーギー、駐日米大使グルーなどの「日本に有利」な証言はことごとく却下された。

この「紫禁城の黄昏」を読んでみる必要があるが、教科書では操り人形の溥儀を椅子に座らせ、操る手が日本とされた当時の新聞の挿絵が載り「溥儀を皇帝として即位させ、満州国を傀儡政権とした」と書いてあつた。

傀儡政権の操り人形皇帝なのか、助けを得て父祖の地に戻つて自身の意思を発揮したのかどちらなのだらうか?

そして、さらに驚いたのが東條英機に関してである。この人は、あたくしが受けてきた授業によりますと、陸軍大臣で戦争をひたすら進言し邪魔であつた当時の内閣を倒閣させて自分が総理大臣となつて日本を戦争に導き、被害を出し続けてもひたすら戦争を主張し原爆投下を引き起こしたといふやうな、極悪人でありA級戦犯で死刑になつたといふ筋書きであつた。

パル判決書によれば「東條は米内内閣の倒壊と全然関係が無い。検察側は東條の行動あるいは態度が1940年7月の同内閣倒壊の原因であつたことを示すどんな証拠をも提出できなかった。東條はそのときまで航空総監の職にあり、政治には全然関係、関心ももつことなく、日本の航空兵員の訓練に専念していた」(P164)

・・・・・・

ここまで来ると、がッくりするよな・・・ 何がッて、平気で嘘を教へてきた(今も教へてる)教員らの恥知らづさにです。

しかも、中学高校以上の授業となれば、教員は全員、専門授業である。小学校のやうに一人の担任がすべて教へるのではない。専門教員ならば、自分できちんと勉強をする時間も必要もあるではないか。それを怠つて、ばかの一つ覚へのやうに「軍部が悪い、軍が政治に口を出すと戦争になる、日の丸君が代は軍国主義の再来だ」とやつてゐるとは愚かしい。

本書はところどころ法律用語が難解ではありますが、全員読むべき書でありませう。特に、子供のゐる人々は子供のためにも読むべきです。



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