読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

連鎖

2011年04月15日 16時37分29秒 | ミステリー・推理

真保 裕一氏の作品。 第37回江戸川乱歩賞受賞作品。

厚生省(この作品は1991年に書かれてゐるので、当時)元食品衛生監視員の羽川は深夜、友人の夫人からの電話で起こされる。電話は友人が泥酔し車で海に飛び込み自殺を図つたといふことであつた。

羽川は友人のその妻と男女の関係をもち、それを知つた友人が家を出てゐることから妻の不貞を苦にした自殺と考えられる。しかし、雑誌記者であつた友人はチェルノブイリ原発事故による放射能汚染食品がヨーロッパから検査対象外の別の国経由で日本に輸入され、商品化されてゐたことをスクープしてゐた。そのスクープにより食品会社では自殺者も出ることとなつてをり・・・・ 

内容を全然知らづに図書館で借りたが、現在の食品の安全に関する状況の中、なんといふタイミングであらうかと思ひながら読んだ。

汚染食品の横流しと睨んだ主人公羽川が、真相究明に乗り出したところ命を狙はれることとなる。食品に絡んだ裏事情とは・・・・

一件落着かと思ひきや、最後のどんでん返しが面白い。

 


果断 (隠蔽捜査 2)

2011年04月15日 16時23分41秒 | ミステリー・推理

今野 敏氏の作品。

先日投稿した「隠蔽捜査」の続編。山本周五郎賞受賞作品である。

前作、「隠蔽捜査」では主人公竜崎が大田区大森署の署長として赴任することになつた。本作品では所轄の署長としての竜崎を描く。また、前作でちらりと出てきた、所轄の「現場の刑事」も今回登場する。

この作品もやはり、面白い。

面白さは「竜崎」といふ主人公の性格にある。自分で「正義」と信じるものを貫き通す場所が警察といふ縦社会であり、本音と建前を使ひわける世間でもあるが、竜崎は周りの目を気にせづに信じる道を進む。

「キヤリアとノンキヤリア」といふ、警察内部で確執になつてゐる部分を上手に取り上げて物語は進む。

前作でも感ぢたが、本作品にあることは警察だけでなく、世間全体に当てはまることであらう。「肩書き」「学歴」といふ、世間全体で「基準」とされるやうなものがある。「キヤリアとノンキヤリア」と同様である。学歴や肩書きばかりを見てゐると、その人個人の物の見方や考え方を見失うこととなる・・・

それを様々な登場人物を通して描いてゐる。