読書おぶろぐ

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イノセント・ゲリラの祝祭

2010年06月03日 21時06分35秒 | 医療 (医療小説含)
 
海堂 尊氏の作品。
 
「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」に続く、田口・白鳥コンビの作品であります。
 
上記記載の三作を読んで、その度に同ぢ感想を書きましたが今回もやはり思ひました。
「この人は、ほんたうにほんたうに、厚生労働省がキライなんだな(恨みがあるんだな)」
 
勤務医であられる、海堂氏は現場の恨みつらみを作品にして世間に公表してゐると思ふ
反面、「現実をわかつてゐないおバカな厚生労働省」を実感ゐたします。
 
医師(医療)に関する本を、小説だけでなく現場医師の書いた本を何冊か読みました。
(本ブログに感想投稿済)
そして、初めて「現場医療の状態」を知つたと思ひます。
 
なので、その前提に立つて海堂氏の作品を読むと「現場医師の代弁」をしてゐて
厚労省のにっくき役人をやり込めてゐる「医師の夢」といふか「願ひ」がひしひしと伝はつてきます。
 
海堂氏の最初の作品から出てきてをりました、「遺体の死因画像診断 (エーアイ)」は
「死因特定には解剖をすればいい」との病理学・法医学の意見と厚労省の予算を付与しない
政策により、導入が遅々として進まづ、「心不全」といふ医学的に言ふと「死因不明」が死亡原因として死亡診断書に記載されてゐるといふ現実・・・・・・
 
解剖がなくなるのを恐れて、エーアイ導入を妨げやうとする動きがあるが現実には解剖(病理)医が不足してゐるため、すべての遺体を死亡原因を特定するために解剖を行なふことは不可能な状態。
なのに、エーアイを導入するための予算をつけない厚労省。
将来、ただでさえ医師が不足するといふのに解剖学はだうなるのか?
 
今回の作品は、死因特定の解剖は2%しか行なはれてゐないといふ現状を踏まえてエーアイ導入を支持する医師に、日本の医療の別の面を語らせてゐます。

最も笑つたのは、(実際吹き出した)登場人物に「ひとつお尋ねします。国体について語るあなたのお立場はR(右翼)でしょうか、それともL(左翼)なのでしょうか」と語らせてゐる部分である・・・・・・・(P348)
 
居るんですよね、かういふバカ。 だういふ発想でこんな低次元の言葉が出てくるのか理解に苦しむ。
あたくしが直面したのは、日本人のフリをしてゐる嘘つき民族半島南でした。
この質問に対する返答は、まさにあたくしが嘘つき民族に返答したのと同じ。
「僕はRでもLでもない。(中略)右翼だの左翼だの、浅いレベルの話です。」(P349)
 
この頁以降、この医師が語る内容は「妄想物語」なのかもしれませんが、現実を闘つてゐる
医師たちからすれば、「かうなつて欲しい」といふことなのではないかと思ひながら読みました。
 
厚生労働省さん、あなた方にも医師免許をお持ちの「医系技官」だかがゐらつしやるやうですが非常事態には、その方々は夜を徹して緊急外来を受け持つことや死因特定の解剖を次々になさるのでせうか?
 
国民の税金でお給金をゐただいてゐるわけですから、国民のためになることをなさつてください。