廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

まさに野生のバラという雰囲気

2020年03月14日 | Jazz LP (70年代)

Dollar Brand / Sangoma ( カナダ Sackville Recordings 3006 )


見かけると、つい、拾ってしまうダラー・ブランド。350円、と人気の無さはトップクラスだ。こういうのは、買取価格は50円である。
いまどき50円で売買契約が成立するものなんて他にあるだろうか。

冒頭の "The Aloe And The Wildrose" に魅せられる。欧州のジャズピアニストが弾きそうな雰囲気の曲だ。この人の出自である南アフリカという要素は
影を潜め、歴史ある古い街並みを1人で物思いに耽りながら逍遥するような美しくも内省的な楽曲。それを適度な抒情感で弾いている。このくらいの
気持ちの入れ方で弾いてくれるのがちょうどいいと思う。

ピアニストにとってソロ・ピアノはごまかしようのない様式だから、表現意欲の高い人は好んでソロ・ピアノ作品を作る。その押し付けがましさと
うまく付き合えるかどうかで作品への評価も変わってくるが、キースほど巨大な渦で聴き手を巻き込んでくることはなく、世界の片隅で1人孤独に
弾いている感じが私にはちょうどいい距離感だ。

心酔するエリントンやモンクへ捧げた曲もあるが、この人のピアノにはさほど2人からの影響は見られない。奏法そのものへのこだわりよりは、
音楽性への共感が強かったのだろうと思う。自身の個性を強固な土台として音楽を創り上げていったところに、その影響があったと思う。

作品数が多く、全容を把握するのは骨が折れるけれど、裏を返せば気長に聴いていけるアーテイストということだ。このレコードは音質も良く、
非常に楽しめる内容だ。とっつきにくい印象があるかもしれないが、この人の演奏は非常にわかりやすい。これからもボチボチと聴いていきたい。


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