レコードを買っていると不思議な体験をすることがあって、例えば、それまでは知らなかったアーティストのレコードを1枚買うと、なぜか立て続けに
その人のレコードが出てくることがあります。 本当に目の前に現れてくるのか、急に意識し出すから目に付く様になったのか、実際のところは
よくわかりませんが、でも確かにそういう経験をすることがあります。
でも、これには注意する必要があります。 嬉しくて、つい、それらに手を出してしまいがちですが、ほとんど場合が無駄遣いに終わります。
内容の善し悪しを考えずに買ってしまうからです。 以下は私の失敗談です。 (自戒の意味を込めて。)
レコード買いを再開して、以前は知らなかった名前を多く見かけるようになりました。 ネットのお蔭で情報の流通が激しくなったからだと思いますが、
Tommy Whittle もその1人でした。 ネットで騒がれていたのはTempo盤やHMV盤でしたが、どのレーベルにせよ、聴いたことがありませんでした。
で、ちょうどその時に出会ったのがこれでした。
Lullaby & Rhythm / Tommy Whittle & Keith Christie ( Esquire 20-068 10inch )
Lullaby~ というタイトルの曲を集めたtsとtbのクインテットです。 121ドル。 演奏の雰囲気が Zoot Sims のDawn盤(ブルックマイヤーとやった
ほうです)に瓜二つです。 tsの音は Zoot より硬質な音でちょっと Coleman Hawkins に近い感じで、tbはスライドなのでブルックマイヤーよりも
雄弁な感じですが、英国ジャズにありがちなバックのピアノトリオが非常に凡庸で退屈な演奏です。 管楽器の2人も音はよく鳴っているのですが、
モダン寄りのカンザス風とでも言うべき古臭いスタイルで2人が交互に絡みながら曲が進んでいくアレンジもダサく、私には退屈でした。
たまたまこんな感じだっただけなのかな、と訝し気に思っていた矢先に急にこれと出くわします。
Waxing with Whittle / Tommy Whittle ( Esquire 20-028 10inch )
Tony Kinsey Trioをバックにしたワンホーン。 10,000円(ヤフオク即落)。 上記のレコードとは違い、まるで古いラジオから流れてくるような、
遠くで音が鳴っているような音です。 1曲あたりの時間が短いし、もしかしたらSP音源なのかもしれません。 バックのトリオは上記以上に
退屈な演奏で、ちょっと手の施しようがない感じです。 Whittleも演奏がかなり未熟で下手な感じなので、やっぱりSP期の演奏なのかも。
うーん、どうせこんな古いスタイルなんだったら Lester Young のレコードのほうがずっといいよな、と思っていたら、間髪入れずにこれが。
Spotlighting / Tommy Whittle and His Orchestra ( Esquire 20-061 10inch )
管楽器による八重奏団の形で、Lester Leaps InとかJive At Fiveとかをやっています。 102ドル。 これは上記2枚の中間のような音質で、
55~56年録音だからLP期の演奏です。 編成の特質のせいもあるでしょうが、どの演奏もラウンジなどで流れるムード音楽の域を出ません。
Whittle のテナーはWaxingよりは進化していて、上手に吹いています。 音も締まってきています。
この人は音色には魅力がありますが、フレーズに陰影がなく、おまけにバックの演奏がつまらないのでこれ以上聴く気にはなれません。
Esquireにはもう1枚10inchがあるんだそうですが、もう要りません。 TempoやHMVはもう少しモダンな演奏なんでしょうが、
大体の見当はつくのであったとしても高いお金を使う気になんか当然なりません。
という感じで、この3枚は1カ月もかからないうちに目の前に現れて、安かったせいもあってよく考えもせずに買ってしまいましたが、
これは失敗でした。 内容が自分の趣味に合うかどうかに関係なく蒐集する方にはいいのかもしれませんが、私には不要な買い物でした。
こういう買い方をするとロクなことがない、といういい勉強になりました。
我が家には200席しか座席がありませんので、この3枚には申し訳ないのですが、いずれご退席いただくつもりです。
だから、記念としてのご祝儀記事でした。
間違った印象を書くといけないので3枚を聴きながらこれを書きましたが、やっぱりつまらなかったので、これで口直しをしました。
Eminennt Jay Jay Johnson Vol.1 ( Blue Note 1505 )
これ、いつ聴いてもいいレコードです。 Jay Jayはやっぱり上手いなあと思います。 それに同じ重奏編成なのにきちんとハード・バップに
なっているということが、実は当たり前のことではなく凄いことなのだ、ということが身に沁みてわかります。 216ドル。