廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

赤と黒

2014年01月26日 | Jazz LP (Vocal)

Lorry Raine / Interlude ( advance LP 714 )


白人の美人女性ヴォーカルが概ね好きではない私ですが、例外的にこれは持っておきたいと思うものがごく少しですがあります。
このロリー・レインが、その少ない1枚です。

でも、これはジャケットが好きなだけで、内容は全くダメです。 ヴォーカル盤はまずは声の魅力、次にバックの演奏、だと思いますが、
この人の声はいわゆるおばさん声で、お世辞にも魅力があるとは言えません。 バックのオケもラッセル・ガルシアとネルソン・リドルという
上品とはとても言えない連中で、特にガルシアの演奏はいかにも彼らしいデリカシーのないうるさい伴奏で、女性ヴォーカルなんだから
もっと気をつかえよ、とブン殴りたくなります。 これがゴードン・ジェンキンスなら見る目も変わったかもしれませんが・・・

と、まあ、内容のほうはさっぱりですが、このジャケットの魅力にはどうしても抗えません。 昔、フレッシュサウンドから再発された時に
このジャケットを見て、それ以来ずっと好きでした。 赤と黒のコントラストが絶妙です。 だから、これはジャケットだけがきれいであれば
盤質はどうでもよかったのですが、それでも安くは買えませんでした。 265ドル。 たぶんレコード自体はもう聴くことはないかもしれませんし、
こういう買い方をするのは、きっとこれが最後でしょう。




Anne Phillips / Born To Be Blue  ( Roullette R 25090 )

昔は知っている人だけがひっそりと聴いていたレコードですが、今ではすっかり定番となりました。 
この人は声が最高です。 選曲も良く、音質も抜群。 バックの演奏も素晴らしい。 もう、何も言うことはありません。 16ドル。


昔はあれもこれも魅力的に見えて結構たくさん聴いたこの手のレコードたちも、今はなぜかわかりませんが、すっかり魅力が褪せてしまいました。
ただ、ヴォーカル盤は買いだすとキリがないので、今の私にはこれでちょうどよかったのかもしれません。



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今どきの優秀なジャズ

2014年01月25日 | Jazz CD
久し振りにジャズの新譜CDを買いました。


Mario Bellavista "New York Quintet" / osolemio

ふらっと立ち寄ったJazz Tokyoで、この目立つ色合いのCDがたくさん並べてありました。 きれいな色合いだったので手に取ってみると、
2管ハードバップとのことで視聴可だったので聴いてみると、これが良かった。 何者かまったく知りませんが、半年ほど前に静かにDUでは
ヒットしていたんだそうです。 

全曲ミディアムテンポ以下の非常にメランコリーなムードに覆われていて、とても魅力的な楽曲ばかりです。 こういうのは珍しいですね。
よく聴くとテナーがちょっと稚拙な感じがしますが、楽曲の良さが際立っているのであまり気になりません。 これは当たりです。




Ulysses Owens Jr. / Onward & Upward

で、ちょうどその時に店内で流れていた曲が、このCDに収録されている People Make The World Go Round でした。 The Stylisticsの名曲です。
この中で歌っているヴォーカルが最高にいい感じだったのです。 演奏のゆったりとした後乗りのグルーヴ感も凄くて、すぐにこのCDを手に取りました。

最近注目されている若手のドラマーだそうです。 この人、本当にドラムがうまいです。 ちょうど、バーナード・パーディーやオマー・ハキムのような
タイプの人で、これは私の大好物です。 でも、エルビンのような感じを出してみたり、トニー・ウイリアムスのような感じを出してみたり、と器用です。
でも、決して技を前面に出すことはなく、全体の調和を大事にします。 これはセンスがいい。

そして、ヴォーカル曲がサイコーです。 ちょっとハスキーでキーはやや高めでシルキー、昔のソウルの名歌手のようなうまさ。
この人、今後も注目して行こうと思います。 


中古CDと新譜CDが同じフロアに置かれているのって、いいですね。 こういういいのを見逃す危険性が低いです。 
この日も新入荷中古CDを物色していたのですがいいのがなくて、やれやれ、疲れたぜ、とクサッていたところでした。 
新宿だとフロアが分かれているので、中古の新入荷がこういう風に不作だと疲れてしまって、1Fの新譜を見ていこうという気が無くなってしまいます。


ちなみに、よく広告を見かける、これ。


Cherkasy Jazz Quintet / Latin Soul

ジャケットデザインのせいもあってかやたらと宣伝を見かけるし、これも昨年ヒットした2管ハードバップだというので一緒に買ってみましたが、
ハズレでした。 ウクライナのグループなんだそうですが、なんだか昭和の古い安モンの歌謡曲のような雰囲気の楽曲ばかりで、ズッコケました。

でも、新譜を買って打率7割弱ならいいほうですね、きっと。  新譜買いも、こんな風にけっこう楽しいです。



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ドライでビターだけど・・・・・

2014年01月20日 | Jazz LP (Europe)
私がレコード漁りから離れている間に盛り上がっていたらしいイタリアのジャズ。 何が契機で、どのようにバブルが膨れて、そしてはじけたのか
よく知りません。 まあ、そんなものは知らないほうが幸せなのかもしれませんが。 



4 Quartetto / Quartetto Di Lucca ( RCA ITALIANA PML 10361 )


ヴィブラフォンのジャズを聴くときに我々が期待するのは、何だかんだ言っても、やはりルパン三世のテーマ曲のような感じではないでしょうか。
他の楽器では決して出すことができない、あの幻想的で浮遊するような響き。 聴き慣れた管楽器やピアノトリオの間隙をぬってあの音が現れる時、
自分がジャズ愛好家であったことを誇りに思うでしょう。

でも、それを期待してこれを買うと、きっとがっかりすることになります。 

イタリア産だし、さぞや優雅な演奏なんだろうと思いきや、ヴィブラフォンもピアノもまるでリズムの拍子に合わせて叩きつけるかのような弾き方です。
全編通してそういう感じで、これには驚きます。 録音はこの時期のこのレーベルらしいクリアですが残響の少ない音質で、更にこういう演奏をする
もんだから、ヴィブラフォンというよりは「鉄琴」というほうがピッタリな感じです。

このグループがどういう活動をしていたのかはよくわかりませんが、ジャケットの写真を見る限りはみんなまだ若い感じです。 録音は62年、
欧州ではポスト・ハードバップの動きがあった頃で、このグループもありきたりのジャズなんかやらないぞという想いがあったのかもしれません。
でも、そうだったとしても、例えばアメリカの新主流派のような新しい音楽の萌芽が見られるかというと、それは全くありません。 力任せに鍵盤を
叩きつけているだけ、という印象しか残りません。 新しい何かを求めていたのなら、やり方を間違えたね、と慰めてあげたくなります。

逆に好意的な見方をすれば、甘っちょろい抒情を排したドライでビターな演奏、という言い方もできます。 ヴィブラフォンを入れたカルテットという
いわばひ弱な編成でもこんな硬派な演奏ができるんだぞ、ということを証明しようとしているようにも聴けます。 最後のスタンダード曲は
制作側からの要請だったのかもしれませんが、これ自体はやはり甘味のないドライな演奏ですが、それまでずっとハードな演奏が続くので、
この曲( Like Someone In Love )がしっとりとした演奏に聴こえます。 このレコードの後、彼らはどうなったのでしょう。

欧州ジャズでヴィブラフォンのお勧めを、と言われても、間違ってもこれを推すことはないでしょう。 その場合はビクター・フェルドマンか
(退屈な演奏が多くて、別の意味で推せませんが)、ミヒャエル・ナウラか(管楽器の音に我慢しなければいけませんが)、ということになるのでしょうか。
控えめに言って、コレクターが持っていて喜ぶだけのレコード、という気がします。 380ドル。



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若き日のSarah Vaughan

2014年01月19日 | Jazz LP (Vocal)
女性ヴォーカルで一番好きなのは、サラ・ヴォーンです。 それも、まだ若かった頃のサラ・ヴォーン。


After Hours / Sarah Vaughan ( Columbia CL 660 )

このレコードは、女性ヴォーカルの中で1番好きなレコードです。 名盤ガイドなどでは定番扱いなのでコレクターには相手にしてもらえない盤
なんでしょうが、昔、私がレコード漁りをしていた頃はこの初版の金文字・エンジレーベルのフラットディスクは隠れ稀少盤でした。

とにかく滅多に見かけない上に綺麗な状態のものが皆無で、当時はガタガタのキズ盤でも1万円では絶対に買えない有様で、少なくともビバリー・ケニー
なんかよりは遥かに入手困難でした。 当時(20数年前)、都内でヴォーカルに強かったトニーの西島さんやコレクターズの岡さんにこの初版が欲しい
という話をしましたが、岡さんからはこのエンジレーベルの綺麗なのはもう無理じゃないかと言われ、西島さんからは綺麗なのを見たのがいつだったか
思い出せないと言われる始末。 西島さんは優しくて、綺麗なのが入ったら取っといてあげるよと言ってくれましたが、それも叶わず・・・・

で、それから年月は流れて、無理だと言われた盤もジャケットも無傷の綺麗なやつをとうとう入手することができました。 ヤフオクで、500円です。 
私はどうしても欲しかったので念のために3万円で札入れしたのに、誰も応札しなかった。 何と言うか、言葉もありません。
今どき、もう誰もサラ・ヴォーンなんて聴かないんですね。

エマーシーやルーレットに吹き込んでいた頃はレコードを量産していたせいか集中力や丁寧さがすっかり無くなってしまっていて好きではありません。 
一般的に代表作と言われるブラウニーとやった盤も、あまり好きではない。 でも、若い頃の彼女の歌声には本当に神々しさのような気高さがあって、
本当に好きです。 レミントンやリバーサイドの10inchやMGMのレコードも昔は愛聴していましたが録音が悪くて、彼女の神々しさが聴ける最後の時代が
このコロンビア録音なわけです。 そして後年のパブロ時代になると、今度は別の意味で歌に凄みと深みが出てきて、素晴らしくなります。

私は美人白人女性ヴォーカルが基本的に嫌いで、レコードもその99%は興味がないのですが、サラの若い頃のレコードだけはしっかり買おうと
思っています。 

サラ・ヴォーンとくれば次はエラ・フィッツジェラルドが出てくるわけですが、私はエラの声質がどうしても好きになれなくてほとんど聴きません。
ただ何事にも例外はあって、これだけは愛聴しています。


Ella Fitzgerald Sings George and Ira Gershwin Song Book

ヴァーヴにたくさん録音があるわけですが基本的にどれも雑な創りのものが多いし、デッカ録音もなぜか精彩のないものばかりなのですが、
このガーシュウィン集だけは歌も演奏も驚くほど丁寧で、名唱ばかりです。 私は、Oh,Lady, Be Good! がこんなにも美しい唄だったんだ、
ということをこのアルバムで初めて知りました。 (巨匠たちがガチャガチャと速弾きするだけの曲だとばかり思っていました。)
この未発表音源を含むリマスターCDは音質がとても良くて重宝していますが、レコードもそのうちに買おうと思っています。



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Paul Desmond に憧れて

2014年01月18日 | Jazz CD
今週の成果は、と言ってもこれ1枚しか買ってませんが、これです。


Tribute to Paul Desmond / Mark Ramsden & Dave Cliff

DU新宿店で「当店推薦盤」のコメント付きで、1,600円。 別に、コメントに釣られたわけじゃないんですが。
as、g、b、dsのカルテットで、ポール・デズモンドが作った世界の再現を試みています。 

この手のトリビュート物は大体が駄作です。 企画ありきで演奏家の元々の動機が弱かったり、創造の泉が枯れてオリジナル作を作れなくなった
アーティストが契約ノルマをこなすためだったり、というパターンが多いのでいい作品なんかできるわけがないのですが、ジャケットに漂う
独特のムードに惹かれて買いました。

この英国のアルト奏者のことはよくわかりません。 調べてみてもほとんど情報がありません。 音楽家のような雑誌のライターのような。
これ以外の作品があるのかどうかもわかりませんが、この作品は気に入りました。 こんな人でもいい作品は作れるんですね。

抜群に音のいいCDで、部屋の中で流すと気持ちいいです。 演奏も素直で嫌味なところもなく、無理なくデズモンドの世界へ近づこうとしています。
まあデズモンドのコピーなんて誰にもできるわけないのでそんなものを本人が目指していないのは明らかだし、聴く方もそんなことを求めては
いけないんですが、それでもこれは悪くないと思います。 

シニカルな批評家でもあったデズモンドが混迷の度を深めるジャズのメインストリームからは距離を置いて、ジム・ホールと共に作り上げた
彼だけの静謐な世界は、ジャズを昇華させたらどうなるのかという問いへの答えの1つだったことは間違いなくて、多くの人がそれを真似ようと
してきましたが、誰一人成功しなかった。 同じ楽器編成で同じレパートリーをやれば再現できるものではないし、やったとしても失笑を買うだけ
なのですが、敢えてそれをやってしまえるのは無名のミュージシャンの無心さからだったのかもしれません。

こういうのを聴くと、当然、ご本家のほうも聴きたくなります。



デズモンドのソロ作品はたくさん持っていますが、やはりこの2枚に尽きるわけです。 中でも、First Place Again のこのCDは物凄くいい音です。
iPodで聴いても部屋で鳴らしても、鳥肌が立つくらいの凄みのある音がします。 とうとうCDもここまで来たか、と深い感銘を覚えます。




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Transition はなぜ値段が下がらないのか

2014年01月13日 | Jazz LP (Trasition)
後にボブ・ディランのレコードプロデューサーとして名を馳せることになるトム・ウィルソンが地元ボストンの当時のジャズ・シーンを
「ボストン・パノラマ」という一連の心象風景として録音したトランジションは、若い青年の想いがレコード作りに素直に反映されていて、
誰からも愛されるとてもいい内容になっていますが、なぜか昔から値段が高い。



Byrd's Eye View ( Transition TRLP 4 )


確かに昔は滅多に見かけることがなくて、幻の~、と言われても仕方なかったと思いますが、現在はあちこちで頻繁に見かける普通のレコードに
なっているのに、どうも値段が下がらないです。 CDのお蔭で内容は誰でも聴けるんだし、そもそもこれだけ中古市場に出回っているいるんだから
もう少し値段が下がってもよさそうなものなのに、不思議です。

演奏自体は50年代中期のアメリカのハードバップで「名演」とか「名盤」というような風格があるわけではありませんが、ざらっとした粗削りな肌触りの
演奏で、あー、ジャズを聴いたなあ、という深い満足感が味わえるところが最大の魅力なんだろうと思います。

Hank Mobley の調子が今一つなのは気になりますが、演奏中のメンバーたちの唸り声や互いの掛け声がきちんと聴こえるし、Doug Watkins のギシギシと
軋みながらノシノシと進んでいくベースの音が気持ちいいし、とにかく Donald Byrd は澄んだ音で吹きまくっています。 この時代だけの、
このメンバーたちだけにできたブルースの演奏がきちんを録れているのが何より嬉しい。

相場感がよくわかりませんが、これは去年の梅雨の時期に買ったもので、42,000円。 盤面は疵やスレ1つない状態で、いまでもこんなきれいなレコード
が買えるんだなあと驚きましたが、bookletが欠落していて、これが値段にどう影響しているのかわかりません。 ただ、あんな紙切れがあるせいで
値段が跳ね上がるんだとしたら、私にはないほうが全然いいです。 あっても邪魔なだけですしね。 でも、内容がいくら良いからと言っても、
出せるのはこのあたりが限界ではないでしょうか。 このシリーズは時々10万円を超える値段がついているのを見かけることがありますが、
時代錯誤も甚だしいと呆れてしまいます。



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dig deuchar don't dance、dig deuchar don't dance

2014年01月11日 | Jazz LP (Europe)
よくよく考えてみると、前回のように1つの記事に何枚もレコードを載せたりしていたら、我が家はそもそもレコードの枚数が少ないので
すぐにネタ切れになってしまう、ということに今頃気付きました。 バカですね。 本当は先人たちのようにたくさんレコードを載せて、
それらを多角的に眺めて気付くことを書きたいところですが、その願いは叶いません。 まあ、しかたありません。

前回のEsquire繋がりで、今回もこのレーベルのレコードです。



Jimmy Deuchar Quartet  ( 英Esquire 20-059 10inch )


さて、Jimmy Deuchar、困りました。 この人、何も褒めるところがないからです(笑)。 尤も、けなすところも特にありませんが、
必要以上にありがたがることはないんじゃない?ということが言いたいだけです。 そうすればレコードの値段も妥当なところに
落ち着くかもしれないし、そうなればもっとみんながいろんなレコードを楽しめるようになるだろう、と思うからです。


もちろん、資本主義社会における市場価格は需要と供給の関係で決まるわけですが、問題はなぜ需要が必要以上に大きくなるかです。
Blue Noteのように内容がきちんと伴って人気が高いというのは当然のことだよな、と思うし、逆にこれはもっと評価されてもいいんじゃない?
と言いたくなるレコードもあったりする。 でも、例えばこの Deuchar などはその実態が正しく把握されているとはとても思えないのに、
そのレコードを高くても欲しがる人が少なからずいる。 

我々がこういうマイナーなミュージシャンのレコードの内容を知る機会といえば再発盤の宣伝文句くらいしかなかったわけですが、
宣伝文句というのは商品を売ることが目的なので、大げさに過剰に粉飾されています。 そこに併行するようにコレクターの自慢話が加わり、
その受け売りがいろんな形で噂として拡がり、とどめの一撃として廃盤セールの広告。 これは悪いスパイラルです。
一応言っときますが、コレクターの自慢話は結構なことだと思います。 傍目には微笑ましいし、知らないレコードを知るいい機会にもなります。
問題は、無反省な受け売りや模倣です。 このブログがそれを快く思っていないということは、もう何となく伝わっているかもしれませんけど。


ちょっと筆がすべってしまいました。 軌道修正しましょう。

このレコードは、Dance~ というタイトルの曲が集められたワンホーン・カルテットです。 こういう企画が好きだったみたいですね。
それにおもしろいのが、ジャケットの表と裏に、dig deuchar don't dance dig deuchar don't dance という呪文のような文言がデザインの
一部として書かれています。 韻を踏んだ戯言なのか、早口言葉なのか。 目立たないように遊んでいます。

この人のトランペットは音がとても金属的で且つ針金のように痩せていて、この人独自の音というものが見受けられません。 
歌い方が上手い訳でもなく、ただ直線的に吹いているだけ、という感じです。 でも、下手だなあという感じもしない。
このアルバムにはバラードが1曲もなくすべてアップテンポの演奏なので、いつ曲が始まって、そして終わったのかがよくわからないうちに
あっという間にレコードが終わってしまう感じがします。 録音はデッドな感じで、いい音だなあという印象もありません。

唯一の救いは、バックのピアノトリオはまずまずの演奏で、特にベースの Lennie Bush はいいテンポをキープしながら耳に残るフレーズを所々で
弾いていて、前回の Tommy Whittle なんかよりはコンボとしての纏まりは悪くありません。 特に見るべき処のないリーダーをバックの演奏が
何とか支えている、という感じです。 スタンダードが2曲入っていながら聴き終って何も満足感が残らないのですから、凡作と言ってしまっても
決して言い過ぎではないでしょうね、残念ながら。

演奏で人を感動させるタイプでもないし、作曲能力があった訳でもなく、移米して新境地を拓こうとした訳でもないので、すぐに表舞台から
消えていったのは当然だったのでしょう。 私が聴いたレコードはこれを入れて3枚だけです。 もう1枚がVogueの10インチ、最後の1枚が
Tempoの10インチで、Vogue盤はもっとつまらなかったので既に手放しました。 すべてのレコードを聴いたわけでもないのに何を偉そうに、と
思われるかもしれませんが、これ以上はレコードを買う気にはなれない人です。 これも最後まで残すかどうか、ビミョー、迷います。




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連続して出会う時は手を出してはいけない

2014年01月07日 | Jazz LP (Europe)
レコードを買っていると不思議な体験をすることがあって、例えば、それまでは知らなかったアーティストのレコードを1枚買うと、なぜか立て続けに
その人のレコードが出てくることがあります。 本当に目の前に現れてくるのか、急に意識し出すから目に付く様になったのか、実際のところは
よくわかりませんが、でも確かにそういう経験をすることがあります。

でも、これには注意する必要があります。 嬉しくて、つい、それらに手を出してしまいがちですが、ほとんど場合が無駄遣いに終わります。
内容の善し悪しを考えずに買ってしまうからです。 以下は私の失敗談です。 (自戒の意味を込めて。)

レコード買いを再開して、以前は知らなかった名前を多く見かけるようになりました。 ネットのお蔭で情報の流通が激しくなったからだと思いますが、
Tommy Whittle もその1人でした。 ネットで騒がれていたのはTempo盤やHMV盤でしたが、どのレーベルにせよ、聴いたことがありませんでした。


で、ちょうどその時に出会ったのがこれでした。


Lullaby & Rhythm / Tommy Whittle & Keith Christie ( Esquire 20-068 10inch )

Lullaby~ というタイトルの曲を集めたtsとtbのクインテットです。 121ドル。 演奏の雰囲気が Zoot Sims のDawn盤(ブルックマイヤーとやった
ほうです)に瓜二つです。 tsの音は Zoot より硬質な音でちょっと Coleman Hawkins に近い感じで、tbはスライドなのでブルックマイヤーよりも
雄弁な感じですが、英国ジャズにありがちなバックのピアノトリオが非常に凡庸で退屈な演奏です。 管楽器の2人も音はよく鳴っているのですが、
モダン寄りのカンザス風とでも言うべき古臭いスタイルで2人が交互に絡みながら曲が進んでいくアレンジもダサく、私には退屈でした。 

たまたまこんな感じだっただけなのかな、と訝し気に思っていた矢先に急にこれと出くわします。


Waxing with Whittle / Tommy Whittle ( Esquire 20-028 10inch )

Tony Kinsey Trioをバックにしたワンホーン。 10,000円(ヤフオク即落)。 上記のレコードとは違い、まるで古いラジオから流れてくるような、
遠くで音が鳴っているような音です。 1曲あたりの時間が短いし、もしかしたらSP音源なのかもしれません。 バックのトリオは上記以上に
退屈な演奏で、ちょっと手の施しようがない感じです。 Whittleも演奏がかなり未熟で下手な感じなので、やっぱりSP期の演奏なのかも。

うーん、どうせこんな古いスタイルなんだったら Lester Young のレコードのほうがずっといいよな、と思っていたら、間髪入れずにこれが。


Spotlighting / Tommy Whittle and His Orchestra ( Esquire 20-061 10inch )

管楽器による八重奏団の形で、Lester Leaps InとかJive At Fiveとかをやっています。 102ドル。 これは上記2枚の中間のような音質で、
55~56年録音だからLP期の演奏です。 編成の特質のせいもあるでしょうが、どの演奏もラウンジなどで流れるムード音楽の域を出ません。
Whittle のテナーはWaxingよりは進化していて、上手に吹いています。 音も締まってきています。

この人は音色には魅力がありますが、フレーズに陰影がなく、おまけにバックの演奏がつまらないのでこれ以上聴く気にはなれません。
Esquireにはもう1枚10inchがあるんだそうですが、もう要りません。 TempoやHMVはもう少しモダンな演奏なんでしょうが、
大体の見当はつくのであったとしても高いお金を使う気になんか当然なりません。


という感じで、この3枚は1カ月もかからないうちに目の前に現れて、安かったせいもあってよく考えもせずに買ってしまいましたが、
これは失敗でした。 内容が自分の趣味に合うかどうかに関係なく蒐集する方にはいいのかもしれませんが、私には不要な買い物でした。 
こういう買い方をするとロクなことがない、といういい勉強になりました。
我が家には200席しか座席がありませんので、この3枚には申し訳ないのですが、いずれご退席いただくつもりです。
だから、記念としてのご祝儀記事でした。


間違った印象を書くといけないので3枚を聴きながらこれを書きましたが、やっぱりつまらなかったので、これで口直しをしました。


Eminennt Jay Jay Johnson Vol.1 ( Blue Note 1505 )

これ、いつ聴いてもいいレコードです。 Jay Jayはやっぱり上手いなあと思います。 それに同じ重奏編成なのにきちんとハード・バップに
なっているということが、実は当たり前のことではなく凄いことなのだ、ということが身に沁みてわかります。 216ドル。



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アーティストだけが語れるウェイン・ショーターの魅力

2014年01月06日 | Jazz CD
ピエラヌンツィのCDはすべて買って聴きましたが、結局手元に残したのは4枚だけです。 その中でも1番の傑作だと思うのは、これです。


Plays The Music of Wayne Shorter

1曲目の Wildflower にやられました。 この、ぞっとするような抑制された美。 ベースとのインタープレイの深さ。
エヴァンス派と言われる無数のピアノ作品の中で、唯一、Nardis や Israel を超えることができた作品ではないかと思います。
今のところ私の中では、レコードもCDも生演奏も含めて、これを超えるピアノトリオの作品は他にありません。

演奏自体がピーク期だったこともあるんでしょうが、重要なのはショーターの曲をやっているということなんだと思います。

正直に告白すると、私は長い間、ウェイン・ショーターの音楽の良さがわかりませんでした。 特に若い頃、レコードを買い漁っていた頃は
Night Dreamer や JUJU をオリジナルで持っていて、わかったような顔をして友人と喋っていましたが、実はいいと思ったことは
一度もなかった。 私には、ドルフィーやアイラーやオーネットよりも、ショーターはわかりにくい存在でした。 
でも、そう言うとバカにされそうな雰囲気があったし、ショーターがわからないということは結局ジャズがわかってない、というのと
同じことだという認識があったので、例えそう思っていても、口に出すことが許されない感じがありました。

でも、上記のCDを聴いて、目から鱗が落ちました。 要するに、ショーターはMusician's Musicianだったのだと。
つまり、今の私のような日曜リスナーが寛ぎを得るためにレコードを聴く人のための音楽ではなく、創造者のための音楽だったんだなと
いうことがようやくわかった訳です。

ソプラノ・サックスは綺麗な音で吹くのに、テナーはまるで音がつぶれたような、音と音が重なり合ったような、よく聞き取れない音と
フレーズばかりで何を吹いているのかさっぱりわからない、とそればかりの印象で、まともにこの人のテナーが聴けるのは
ウェザー・リポートのほうだけじゃないかと思っていました。 でも、彼は別に楽器を綺麗に吹こうなんて、初めから思ってなかった。

それがわかってからは、もつれた糸がスルスルとほどけるようにショーターの音楽が好きになっていきました。
今はブルーノートのソロ作品もジャズ・メッセンジャーズ時代の作品もマイルス時代の作品もすべてが愛聴盤ですが、ブルーノートでは
やっぱりこれが1番好きです。


Speak No Evil / Wayne Shorter

以前、Someth' Else でも書きましたが、今秋に発売になった75周年記念のSHM-CDはこれまでの音盤の中ではダントツの音の良さです。
サックスの音の艶と輝きがようやく本当の音のように再現されていて素晴らしいのですが、それ以上に、音のない無音の空間の生々しさが
きちんとわかります。 結局のところ、人が音がいいと感じるのはこの部分ですよね。

ここまで音が良ければ、もうオリジナルなんて買う必要もありません。 とにかく、ショーターは全タイトルを出して欲しいなあと思います。



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まだまだある隠れ名盤

2014年01月05日 | Jazz LP (Savoy)
三が日も開けてようやく家の中が静かになり、新宿に出かけなければいけない用事があって出かけました。
用事を済ませてDUジャズ館へ行ってみると前日のセールの売れ残りが結構あったので、これを買いました。


The Bill Hardman Quintet  ( Savoy MG 12170 )

新春お年玉バーゲン期間中とのことで「10%オフです」と言われましたが、定価のない言い値の商品を値引きしますって言われても本当に値引きになって
いるのかどうかなんてわかんないじゃん、それにバーゲン期間中に新規リスト掲載になってるんだから元々それを見越した値段だったんじゃないの?
と心の中でブツブツ言いながらも、結局は機嫌よく帰ってきました。 単純です。

これも昔は手が回らなくて聴けなかった1枚です。 昔はサヴォイと言えば、Surf RideだったりNostalgiaだったりBluesetteだったりしたわけで、
きちんとこのレーベルとは向き合うことができていませんでした。 ジャケットデザインもダサくて、購入意欲が湧きませんでした。

で、家に帰って来て聴きながら、こんないいレコードを見逃していたなんて本当に情けないなあと思いました。 高価なレコードやマニア本に載っている
ようなレコードばかりを欲しがって、いい音楽を欲しがってはいなかったんだ、とつくづく実感しました。

全編マイナー調の極めて良質なハードバップで、ちょっと Cool Stryttin' を思わせるムードに覆われており、どう聴いてもブルーノートサウンドです。
Sonny Redd、Jimmy Cobbなど、メンバーも一流で演奏レベルも最高ですが、ピアノの Ronnie Mathews がとても新鮮な感覚で弾いているので、
他の同時期のハードバップの演奏とは一線を画しています。 サヴォイは元々ブルーノートに匹敵する音の良さを誇るレコードだし、他のレーベルよりも
メロディアスなサウンドを重視していたレーベルです。 だから、ここに収められた6曲はどれもみな楽曲のメロディーが素晴らしい。 
これは、しばらくヘビーローテーションになりそうです。

コレクターは大抵は高額なレコードを買うための金策に追われて、こういうところには気が向かないもの。 でも、それではもったいない。
これは見かけられたら、ぜひ買われるといいと思います。




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ビッグ・バンドの快楽

2014年01月04日 | Jazz CD
ビッグ・バンド・ジャズが大好き。 そこには、ジャズのあらゆる快楽の要素が詰まっています。
古いスイングも好きだけど、モダン・ビッグ・バンドはもっと好きです。

ただ、音盤の情報は圧倒的に少なくて、どれがいい演奏なのかを把握するのは困難を極めます。
ビッグ・バンドの録音というのは、実は結構たくさんあります。 日本にいると実感は持てませんが、ジャズという音楽が大衆性を獲得して
今日まで生き永らえることができたのはビッグ・バンドのお蔭だし、スモール・コンボが演奏し続けることができたのも実はビッグ・バンドのお蔭。
欧米では社会にそれが深く根付いているため、きちんとあたりまえのこととして録音され続けている。
でも、日本にはそういう背景が完全に欠落しているので、ビッグ・バンドについて語れる言説が育っていないわけです。

もともとジャーナリズムに何かを期待しているわけではないので、自分でいい演奏を地道に探していけばいいんですが、私の感覚では
10枚に1枚当たりがあればいいほうです。 それだけ、この音楽は難しいわけです。 楽器がうまく演奏できさえすればいい、というわけにはいかない。
でも、聴く側にとっては、これではお金の無駄遣いという罪悪感と今日もダメだったという失望感や徒労感との戦いになって、いささかしんどい。 

そんな中で常に100%の満足を貰えるのが、Sammy Nestico Orchestra です。 私がこの巨匠にどっぷりとハマるきっかけになったのは
このアルバムを聴いたからでした。


Basie & Beyond / The Quincy Jones - Sammy Nestico Orchestra

もちろん、ベイシーのアレンジャーで、そのスコアがアメリカ議会図書館に収蔵されるような人だということは知っていましたが、
ビッグ・バンドという森はあまりに広大で、きちんと体系的にアプローチするなんて私には無理でした。
週末の廃盤セールやネットオークションに一喜一憂しながらレコードを買っていれば済んでしまうようなヤワな世界ではありません。

この中に収録されている Out Of The Night という曲にすっかり魅せられました。 タイトルの通り、夜の摩天楼の中をゆったりと車で
流していくかのようなハードボイルドなかっこいい曲で、70年代の刑事映画で使われてもおかしくないような感じです。

この曲をきっかけに真剣にこのCDを聴き込むようになって、すっかりこの人に夢中になったわけです。
老齢期になってから自身でビッグ・バンドを指揮するようになったので録音数が多くないのが残念ですが、私の大事な宝物となっています。



こういうのを知っている人は少ないので、残念ながら中古CDはまったく流通していません。
悲しいなあ。



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ギターの愉楽に満ちたレコード

2014年01月03日 | Jazz LP (Europe)

Meeting Mister Thomas / Rene Thomas  ( 仏 Barclay 84 091 )


欧州盤の悪口ばかり言ってると誤解されてはいけないので、今日はベタ褒めするレコードです。

これは最高のジャズ・ギターアルバムです。 Rene Thomas のギターがちゃんと前面に出てしっかりと屹立して、シングルトーンのきれいな音で弾きまくります。
この人の音色はウェスによく似ていて、ちゃんと West Coast Blues もやってます。 ジャズ・ギターはロックとは違って音色にこだわりを
みせない場合が多くて、それがこの分野の発展を妨げてしまったように思えますが、これはギターがすごくいい音で鳴っています。

そして、Lou Bennett が決して弾き過ぎず、それでいて全体のトーンカラーを渋く決定づける魅力的なオルガンを聴かせます。 
オルガンというのは使い方さえ間違わなければ、こんなにも素晴らしいんだ、ということを証明しています。 
Jacques Pelzer もasで参加していますが、彼も決して吹き過ぎることなく、魅力的な音色で全体のサウンドカラーを多彩にするのに貢献しています。
これが Jackie McLean や Phil Woods だとうるさすぎてぶち壊しだったでしょうが、この人はそこまで個性が強くないので適任でした。
ベース、ドラムも切れの良くはじけるようなテンポで全体を支えており、ダレるところは微塵もありません。

ステレオ期直前の完成されたモノラルサウンドが艶やかで、趣味のいいエコーも効いていて、Rene Thomas のギターが最高の状態で録れていて、
オーディオ的な快楽も満点です。

欧州ジャズは知的な雰囲気という切り口で語られることが多くてその紋切り型の言い分にはうんざりするのですが、このレコードに限っては
確かにそういう言い方が正しいと思います。 オルガンが入っていてここまで上品に聴かせるのは、アメリカでは無理だったでしょうね。

けなす箇所が1つもないレコードです。 音が良ければ、CDも手に入れたいところです。 
iPodで延々とリピートして流していたい、そういう聴き方にも立派に耐えうる、これは本当に見事な音楽です。



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