今週の平日の昼下がりに立ち寄ったDU新宿ジャズ館3Fで、こんな会話が。
店員A 「あー、ヴォーカルの在庫は悲惨なことになってるなあ」
店員B 「ほんとですね」
店員A 「よし、ヴォーカルの買取価格を少し高くしよう。 ブログもヴォーカルの記事を多めにしてくれる?
あと、買取受付の時にも、ヴォーカル買取を強化してます、って言うようにして」
店員B 「わかりました」
確かに女性ヴォーカルの棚がかなりスカスカになっています。 よく売れているみたいです。 インサイダー情報を入手したはいいけど、
うちは女性ヴォーカルのCDは全然無いんだよなあ・・・ ということで、今なら少し高い査定をしてくれるかもしれません、保証はないですが。
今週は成果が何もありませんでしたので、最近買ったものの中から少し。
■ Al Cohn / Overtones ( Concord CCD-4194 )
アル・コーンはとても好きなサックス奏者ですが、この人は決定打に欠ける、というのがマニアの共通認識ではないでしょうか。
古くはサヴォイに始まり晩年はコンコード、と録音歴は長いのになぜかこれぞ、というのがない。 ドーンの渦巻きジャケットやコーラルの
ブルックマイヤーとやったやつはいい演奏だと思いますが、ちょっと淡泊で喰い足りない感じだし、ズートとのユニットはやはりどうしても
ズートのほうばかりに耳がいってしまいます。
硬い樫の木のような硬質なビッグトーンでとても魅力的な音を聴かせてくれるのですが、音楽のスタイルがバップでもなくスイングでもなく、
と中途半端なところがまずかったのかもしれません。 焦点を絞りにくく、アルバムプロデュースがしにくいことが容易に想像できます。
だからジャズ黄金期の名盤を求めるのはとうの昔に諦めて近年の演奏を見かける度に手に取るのですが、これらも傾向は変わらずがっかりする
ことが多い。 そんな中でもこのアルバムは全体のまとまりが良く、演奏にも勢いと力があって聴き応えがあります。
息子のジョー・コーンが加わったワンホーンで、ピアノもハンク・ジョーンズ、とメンツもいい。 自作の "Woody's Lament" がしみじみと
聴かせる演奏になっていて、とてもいいです。
■ Arthur Doyle / Live in Japan ~ Doing The Breakdown ( YOKOTO Music YME-1 )
米国フリーのアンダーグラウンドの第一人者と言えば、まずはこの人です。 単身で日本に招かれてライヴを行い、それが録音されて
CDが発売されてしまうんですから、やはり日本のジャズファンというのは世界一なのは間違いない。 こんなの、あり得ないことでしょう。
たった一人でサックスを吹き、歌(らしきもの)を歌い、ピアノでコードを鳴らす。 この「歌」というのが、よく街中や電車の中で
全身真っ黒に汚れて浮浪している方が大きな声で独りごとを節をつけて唸っているのを見かけると思いますが、まさに「あれ」です。
この人は、まずこういう「歌」を長々と歌い始め、それをなぞるようにサックスの独奏をします。 つまり、この人の場合、サックスは
自身の歌の延長線上にあるらしい。 そして、突然、これまで聴いたことのないような美しい和音をピアノで鳴らしたりします。
しかし、これをジャズとして寛容する日本のフリージャズ・フリークは凄いなあ、と思います。
このヨレヨレの、涎を垂れ流しているような演奏をジャズとしてきちんと聴くんですから。
この人の代表作はデビューアルバムの "Alabama Feeling" とされていて、例によって自主制作盤です。
おそろしいことにこれもCD化されていて、今では廃盤セールの常連になっています。 先日のセールでもこれが出ていて、7,800円という
値段で今も売れ残っています。 欲しくてもこの値段じゃ買えないよ、と思いレコードの相場を調べてみると、なんと5万円前後・・・・
もうレコードのほうは諦めるしかありません。 CDがもう少し安くなってくれたらなあ、と思いながら溜め息をつく日々です。
でも、このライヴ盤、妙に気に入っています。 まあ酷い内容だと思いますが、なぜか手放す気になれません。