廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

キース・ジャレットの師匠

2020年04月12日 | Jazz LP (70年代)

John Coates.Jr / Alone And Live At The Deer Head  ( 米 Omnisound N 1015 )


キース・ジャレットが唯一影響を受けたピアニスト、として有名になったジョン・コーツ Jr だけれど、本人的にはこういうのはどうなんだろう。
キースは1人でよくこの人のライヴを観に行っていたというし、わざわざECMからこの Deer Head Inn でのライヴ盤をリリースしているくらいだから、
相当な想い入れがあったのは間違いないようだ。

実際に聴いてみると、どこからどう聴いてもキース・ジャレットにしか聴こえない、というか、キース・ジャレット以上にキース・ジャレットらしく
聴こえる訳だけれど、コーツ本人はキースの演奏を聴いたことがなかったとも言われている。まあ、本当かどうかはわからないけれど(こういう話は
よくあるので)、もし本当なんだとしたらこれも相当頑固な話である。

収録された楽曲のすべてがコーツ本人のオリジナルで、ソロ・ライウで、アメリカのフォーク音楽が土台になっていて、ということで、これはまんま
ケルン・コンサートのデラウェア版という感じだ。発売時期も隣接していて、片やワールド・ワイドでエヴァーグリーンな歴史的ビッグ・セールス盤、
もう一方は片田舎のローカル・マイナー盤、それでいてどちらも同じルーツとスピリットから生まれた素朴なアメリカン・ミュージックだという
この奇妙な既視感は一体何なんだろうと思う。

結局のところ、キースがECMでやろうとしたのは、自身のアイデンティティーであるアメリカの大衆音楽(フォーク音楽やジャズのスタンダード)
のヨーロッパ大陸他への壮大なカウンター・アタック劇だったんだなあ、とこれを聴きながら思うことになる。

このアルバムがリリースされた77年と言えば、アメリカへの幻滅を歌った "Hotel California" が世界を席巻していた年。そんな頃に、B面2曲目の
"Homage" のような幻想的な曲がペンシルベニアの田舎町でひっそりと鳴っていたんだなあと思うと、不思議な気分になる。


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4 コメント

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昔聴いてました (MRCP)
2020-05-03 02:13:41
発売当時に聴いてました。
当時はスイング・ジャーナルで読んで知り、LPを買ってみる以外にはこの音楽を聴くのはかなり難しかったと思います。
ラジオで聴けたりしないし、ジャズ喫茶はすでにほとんどなくなってたし。
知る人ぞ知るって感じですよね。
上機嫌の時のキースだよねと、友達と語ってました。これだけ同系統の独特の音楽が偶然のはずはなく、影響というか、何というか、キースに向かって何か言ってやりたくなったりしなかったのかなあ(笑)
CD化されてたんですね。
ネットであっさり見つかりました。
Unknown (ルネ)
2020-05-03 08:30:31
確かに、上機嫌なキース、という感じですね。
同レーベルの他のアルバムはいささか弾き過ぎていて纏まりがあまりよくないように思いますが、
このライヴは上手く抑制されていて、とてもいい内容だと思います。
確かに、昔は今のようにお手軽にちょい聴きするという訳にはいかなかったので、マイナー盤にはなかなか手を出すには勇気が必要でした。
今は入手が容易なので、後付けにはなりますが、広く聴かれるといいですね。
ラジオ (MRCP)
2020-05-03 11:21:13
キース・ジャレットでさえ、ほとんどラジオでは聴けなかったと記憶しています。
NHK FM でチャーリー・ヘイデンとの 「祈り」 を聴いてLP買いに行ったのを憶えてます。
東京のFMで放送された武道館ソロがYou Tubeで聴けますが、正規にCD化して欲しいです。
コルトレーンとは違って高音質音源が、今世紀中は毎年出せるほど大量にストックされているんだろうなあ(笑)
Unknown (ルネ)
2020-05-03 14:29:33
キースほどの人であれば、未発表音源はいくらでもあるのでしょう。
それに比べてコーツさんはサヴォイのデビュー盤以降、随分時間が空いての再デビューのような感じで、
十分なカタログ群とは言えないのが気の毒な感じです。

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