廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

暗く暗示的なブローイングセッション

2014年09月28日 | Jazz LP (Blue Note)

Johnny Griffin / Vol.2  ( Blue Note 1559 )


内容の空虚なキレイ系とか、ちょっと考えすぎなのでは?とか、小さく纏まった感じとか、現代ものにはよくある最後まで聴くのが苦痛になる音盤に
出会った後に引っ張り出すのがこれです。 ブローイングセッションと言われるものはたくさんありますが、とにかく野蛮で粗野な感じがすることに
かけては右に出るものがいないので、音楽的には聴くべきところが何もなくても私にはきちんと存在理由のある音盤です。

曲の出だしはグリフィンがメロディーをストレートに吹いていて、深みのある音色も相俟って素晴らしいと思いますが、すぐにいつもの調子が始まり、
何だかなあ、と聴き手が置いてきぼりにされてしまいます。 ブルー・ノートではいつも優等生なリー・モーガンも珍しくはすっぱな感じだし、
コルトレーンも来たるインパルス時代を予期させるようなフレーズだったり、モブレーは居場所がなくて居心地悪そうだし、みんなが好き勝手に
好きなように演っています。 

でも、そういう各々の個性が手に取るようにわかったり、好き勝手に振舞いながらも最後は自然と1か所に集まってくる感じは現代の録音ではもう決して
見られないもので、ジャズの原点のようなところがあります。 古い演奏が決して滅びないのは、やはりその時代にしかなかったものがそこにあるから
なんだと思います。 

このザラッとした質感はやはり独特で、演奏がつまらないなあと思ったことはなく、時々この荒っぽさを味わいたくて何度も聴くことになる不思議な
レコードです。 まあ、ブローイングセッションなので、演奏がいきなり立ち上がって、ワァーっとみんなが一斉に駆け出して、そしてあっという間に
演奏が終わってしまっている、というまるで子供の運動会の徒競走のような感じですが、苦笑しながらも手放さないでいるのは、やはりこの演奏に
どこか惹かれるところがあるからなんだろうと思います。

元々、ジョニー・グリフィンという人にはどこか陰を持ったようなところがあって、これも決して能天気なセッションにはならず、どこかうっすらと
暗さが漂っているようなところがあり、そのことをジャケットデザインがうまく暗示しているような気がします。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中古CDの買取と今週の成果

2014年09月27日 | Jazz CD
先日、DUの新宿中古センターにCDを売りに行きました。 CDラックが一杯になってきて、そろそろ収納場所を確保する必要が出てきたからです。
こういうのはマニアには日常茶飯事の話ですよね。 ジャズ館ではなく中古センターにしたのは、内容がロックやクラシックのCDも含まれていて、
いちいち分けて持っていくのが面倒だからです。 ここのジャズCDの査定額はジャズ館よりもかなり低いのですが、面倒くささに負けてしまいました。
レコスケくんのレコード裁判じゃないですが、当然CD裁判をやった訳で、これが時間もかかるし気力も使うしで、もうそれだけでヘトヘトになるのです。

全部で50枚持って行って、査定価格の合計は19,550円。 想定していたよりもかなり安くて、ガッカリしました。 一枚平均が390円です。

私には聴かない音盤をいつまでも棚に並べておく趣味はないので別に手放すこと自体はどうでもいいのですが、売ったお金は来月の音盤漁りの軍資金に
なるので、少しでも高いほうがいいに決まっています。 そりゃあ今回買取してもらったCDには高額レア廃盤といった類のものは含まれていなかったし
(そもそもそんなCDは持ってない)、大半が千円台で買ったお手頃なものばかりなのであまり偉そうなことは言えません。でも、ジャズ館で1,800円
くらいで買ったやつが280円だったり、3,600円で買ったベルチャQtのベートーヴェン集が500円だったりすると、さすがにガックリきます。 

これまで数えきれないくらいDUでレコードやらCDを売っていますが、どうやら何を売っても高い査定をする時期と、逆に内容に関係なく安い査定をする
時期がある、ということに気が付きます。 自分が買うCDの傾向は大体同じなので、売る際の内容も毎回似たような内容のはず。 にもかかわらず、
平均単価が800円の時もあれば、390円の時もあります。 

どうもこれは売りに出す内容の問題でもなければ、査定担当者の問題でもなく、意図的に買取価格を下げるように内部で指示が出ているんじゃないか、
という気が直観的にします。 同時期に複数の店舗に売りに行っても、どこの査定価格も似たような水準になっていることが多いからです。
そういう内部の価格統制がかなり厳格に運用されているような気がします。 DUにとって、中古の買取価格の水準をどうするかは会社の生命線。
毎日持ち込まれる数はハンパない量でしょうから、高額廃盤のようなもの以外は1枚1枚の査定価格にさほど神経を使っているはずがなく、
1枚当たりの平均価格の上げ下げで仕入れ原価のコントロールをしているに決まっています。

そういう安い価格で買い取った商品は販売価格も安くなるかというとそんなこともなく、大体一定です。 150円の査定だったものが、後日1,330円で
売られていました。 DUの値付けは大体が買取価格の倍、という暗黙知が破られています。 これは凄い粗利率です。

つまり、今回のように査定がいつもより低いのは、直近のDUの業績が内部目標と比べて思わしくないからなんだろうと思います。 こういう流通業は
年度決算が良ければそれでよし、というようなのんびりした構えではまずく、毎月の決算内容に企業行動が大きく左右されます。 HMVの中古業界参入に
DU経営幹部はかなり動揺したというし、CDの廃盤価格の水準が以前よりも大分下がってきて大物廃盤が動かなくなっているようだし、決して売れ行きが
悪い訳ではないとは思いますが、利益が上がりにくい状況なのかもしれません。

あと、明細を見ると軒並み安い査定の中で1枚だけ高い値段になっていて、後日このCDは査定価格よりも安い売値が付いて出されていました。
つまり、この音盤の査定価格で全体の買取価格の合計を調整していたわけです。 こういう風に、1枚ごとの損益計算は意外といい加減にやっている
ことがわかります。 買い取った枠の中で一定以上の利益率になっていればいい、ということですね。 でも、明細を見て、安い査定に不満で何枚か
キャンセルしたら全体の利益率が大幅に下がることになるので、本当にこんな買取明細でいいのか?と思ったりします。 ま、売り手が気にする
ことではないんでしょうが・・・・

査定に不満なら全部キャンセルすればいいんですが、持って帰るのは面倒だし、一度手放すことを決めた音盤には未練はなくて、自分の中では
既に不要物の扱いになっていて、そんなものを家に置いておくのも気分的にイヤなので、そのまま手放してきました。


で、ラックにスペースができたので、心置きなくつまみました。





■ Ferdinand Povel Quartet / Some Other Blues  ( Blue Jack Jazz Records BJJR 019 )

オランダでは Ruud Brink と人気を二分するサックス奏者ですが、録音が少なくあまり知られていない人です。 このCDは貴重です。
ダスコ・ゴイコヴィッチの It's About Blues Time にも参加していますが、語られるのはダスコのことばかり。 7inch盤も少しあるようですが、
私の場合は購入対象外なので、これは手放せません。

硬質で中庸な音色でクセのないフレーズ回しで吹いていくので、聴いていて気持ちがいい。 誰かに似ているわけでもなく、自分の音とスタイルを
きちんと持ってこうやって演奏活動をしていたんだなあ、と不思議な感慨を覚えます。 オランダの演奏家は総じて録音に熱心ではないようで、残念です。


■ Isla Eckinger, Chuck Manning / L.A. Calling  ( TCB Records No 9090 )

これも何かの本で紹介されたのか、レア盤扱いのようです。 普段はベース弾きですが、たまにこうやってトロンボーンも吹くらしい。

どういう褒められ方をしたのかよくわかりませんが、演奏は確かにしっかりしているのですが、どうも音楽が凡庸で捉えどころがありません。
いい演奏かと訊かれればいい演奏だと答えるしかないのですが、聴いていても音楽が心に残らないというか・・・・

録音もクリアで悪くないし、嫌味なところも別にないのですが、こういうマイナーな音盤に光を当てること自体は素晴らしいことだとは言え、
内容にそぐわない持ち上げ方するのはどうかな、と思います。






■ Sarah Vaughan / If This Isn't Love  ( 55 Records FNCJ-5606 )

サラ・ヴォーンが1958年6月7日にコンセルトヘボウで行ったコンサートの模様を録音した音源の発売で、これには重要な意味があります。

この時のバックは、ロンネル・ブライト、リチャード・デイヴィス、アート・モーガンで、このコンサートの2日前に、3人は仏ポリドール社で
例のピアノトリオの録音を行ったのです。 サラの渡欧について行った際の録音だとは知っていたのですが、まさかそのライブ自体が
こうやって録音されていたとは知らなかったし、こうやって聴けるようになるとは思ってもみませんでした。

2度目の渡欧ライヴということでリラックスした様子を見せながらも、サラ独特の唱法が素晴らしく聴き惚れます。 そして曲間ではロンネル・ブライトの
笑い声や話し声も聴くことができます。 裏面ジャケットにはステージ上の4人の様子が映った貴重な写真もあり、これは素晴らしい記録です。
よくぞ発売してくれました、と声を大にして言いたいですね。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蒼い世界、というレコード

2014年09月23日 | Jazz LP (Bethlehem)

Mel Torme / It's A Blue World  ( Bethlehem BCP 34 )


昔(25年くらい前)はこのレコードは寺島本の影響で値段がそこそこ高くて、でもそれ以上にきれいなものが全然なくて困った盤でした。
当時私が持っていたのも盤質が今の感覚でB-~Cくらいの状態で、それでも8,000円くらいしたものでした。 でも、今じゃ値段は二束三文だし、
何より驚くのはきれいなものがたくさん流通していることです。 時代が変わったんだなあ、と思います。 これも500円でした。 CDより安い。

私は男性ヴォーカルが昔から好きでよく聴いていて、メル・トーメも好きでたくさん持っていました。 以前はレコードそのものがあまり出回らず、
トニーやヴィンテージマインに稀に入荷するくらいでしたが、今は安くてきれいなのがいつでも買えるので、いつも後回しになってしまっています。
だから、まだこれしか手元にはありません。 

男性ヴォーカルはジャズというよりはショウビジネスの印象が強いせいかジャズファンは敬遠するようですが、私は女性ヴォーカルよりずっと好きです。
でも、男性ジャズファンは、ほぼ例外なく、年をとって性欲が衰え出すと白人美人女性ヴォーカルに凝りだすので、私もそのうちにそういうレコードを
褒めるようになるのかもしれません。 そういうのを血眼になって求める人はシルビア・シムスやダイナ・ワシントンやメーベル・マーサのレコードは
買わない訳で、やってることはAKB48の周りに群がる若者と基本同じです。 いくつになっても、男は男だ、ということですね。

メル・トーメは声がハスキーで声量もなく、クルーナーが主流だった当時はかなりコンプレックスがあったようです。 でもそれを上手く逆手にとって、
聴いた人にヴェルヴェット・フォグと言わせるくらい歌が上手くなった。 アップテンポのノリの良さもシナトラの真似をしないスタイルを確立して、
男性ジャズヴォーカルの門戸を大きく拡げた人です。

このアルバムはかなり通好みな選曲をして全編バラード調で仕上げた内容で、バックのオケのアレンジはイマイチですが、歌の情感は素晴らしい。
珍しくヴァースから始まる "Isn't It Romantic" が特に素晴らしくて、この曲の一番の名唱だと思います。 
また、ボチボチと探さなきゃな・・・・



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生涯の愛聴盤

2014年09月21日 | Jazz LP (Prestige)

Dexter Gordon / The Panther !  ( Prestige PRST 7829 )


OJCのリマスターCDでずっと愛聴してきましたが、レコードを見かけてしまい、つい、フラフラと買ってしまいました。 安かったですし。
1970年7月の録音で、もうこの時期になるとレコードかCDか、という議論は意味がなく(音に違いなんかない)、ステレオカートリッジに
取り換えるのが面倒なので持っていてもあまり頻繁に聴くことはないのはわかっていても、デックスのアルバムでは3指に入る好き盤なので、
こればかりは抗えませんでした。

レコーディングエンジニアはRCA専属だったポール・グッドマン、プロデューサーはドン・シュリッテン。 サウンドには特に特徴もなく、
残響の少ないデッドなものなので、わざわざレコードで持つ必要はないでしょう。

デックスはこの時期は既にコペンハーゲンに移住していて、年に何回かジャズ・フェスティバルに出るためにアメリカに帰郷するという生活でした。
その短い滞在の間にポツリポツリとレコーディングして、プレスティッジから発売されていました。 特に野心的な内容ではありませんが、
ビ・バップ期からのプロとしての活動で身体に沁みついたバップ・マナー全開のお手本のような演奏ばかりで、とにかく感動的です。

中でも、The Christmas Song と Valse Robin の2曲が素晴らしく、これがこのアルバムの価値を高めてくれています。 トミー・フラナガンの
静かなサポートもとても良くて、全体的に趣味の良いアルバムになっている。 トミフラは15歳の時(45年)にプロとして初めて仕事をしたのですが、
その時の相手がデックスだったので、このレコーディングには格別なものがあったのかもしれません。

プレステの7000番台後半はいいレコードがたくさんあっていいですね。 値段も安いし、ぼちぼち買っていこうと思います。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の成果

2014年09月20日 | Jazz CD
いろいろと忙しくてあまりDUには行けなかったのですが、それでも少しつまみました。





■ Jimmy Smith / Damn !  ( Verve 314 527 631-2 )

ジミー・スミスは大好き。 オルガン・ジャズは総じて好きですが、御大のアルバムはどれもがやはり別格の出来。 50年代から現代に至るまで、
そのクオリティーの高さを維持し続ける様は奇跡といっていいのに、日本人コレクターはこの手のジャズを格下扱いにするから、そういう人たちとは
音楽の話はしたくないです。 クラブ世代と言われた若い人たちのほうが、よっぽどまともな耳を持っています。

ロイ・ハーグローヴのラッパは最高に輝きを放ち、アブラハム・バートンやマーク・ターナーのテナーの音はどこまでも深く、バーナード・パーディーの
シャッフルには気絶しそうになる、驚愕のアルバムです。 そういう名前だけでソロアルバムが売れるような人たちがサポートに徹して、御大が前面で
弾きまくるという内容も感動的。 音の良さも群を抜いており、オーディオ的にも★★★★★。

なのに、中古は500円。 どうかしてるぜ。


■ Howard McGhee ~ Benny Bailey Sextet / Home Run  ( Storyville Records STCD 8273 )

新定盤ナントカ、というコメントがついていて1,800円となかなかいい値段ですが、何かの本にでも載っていたのでしょうか? よくわかりません。

ソニー・レッド、テディー・エドワーズ、バリー・ハリスという50年代選手が集まって78~79年に録音されたハード・バップ。
50年代、若い頃に彼らがやっていたハードバップを20年後に再演したかのような内容で、この時期のジャズはフュージョンに圧されて元気がなかった
にも関わらず、そんなこと我れ関せず、だってこれしかできないんだもーん、とばかりに非常に勢いのある好演を展開しています。

粒度の粗い音とアンサンブルがカッコよく、王道のジャズが聴けます。 音もいい。 ただ、大げさに持ち上げるのはどうか、と思いますが・・・・






■ Janis Steprans Quartet / Second Live Set  ( DSM 3002 )

何者か全く知りませんでしたが、新宿館で当店推薦盤とのことだったので聴いてみました。 カナダのレーベルなので、カナダ人なのかもしれません。

デックスのような硬く締まったビッグトーンのとてもいいテナーで、アドリブも上手く、これは素晴らしい演奏です。
テナー/アルトのワンホーン・ライヴですが、演奏も落ち着いていて、聴き応えがあります。 これが50~60年代のレーベルに残された演奏だったら
稀代の名演とか言って高額廃盤として名を馳せたでしょうが、こうして現代のCDとして発売されると誰も見向きもしない。

本当にジャズが好きな人は、見かけたらぜひ聴いてください。


■ Thierry Lang / The Winners Live At Dolder Grand Hotel, Zurich  ( TCB Records 20992 )

フランコ・アンブロセッティを迎えたワンホーン編成で、従来のティエリー・ラングのイメージを覆す傑作。

これはもう、完全にマイルスの "My Funny Valenntine" "Four & More" の世界です。 特に、1曲目のAutumn Leave は秀逸な出来。
アンブロセッティは完全にマイルスに成りきっています。 

透き通った空気感が漂う空間を大きく活かした、それでいて剃刀の刃のような演奏で、軟弱なキレイ系の面影は一切なし。
これが今週一番の成果でした。 これは素晴らしい。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カウント・ベイシーと一緒に

2014年09月14日 | Jazz LP (Roulette)

Count Basie and His Orchestra / Dancing Along with Basie  ( Roulette R 52036 )


ビッグバンドは大好きだし、オールドタイムジャズも好きだけど、上限200枚と決めた中でそれらのレコードをどこまで買うかは悩ましいです。
人気が無いせいでレコード屋にはあまり在庫が置かれていませんが、おそらく生産された量自体はバップ期のレコードと同等か、若しくは
それ以上の枚数があるはずです。 架蔵枚数は現時点で70数枚程度なのでまだまだ心配する必要はないのですが、この手のレコードは値段も安いし、
油断するとすぐに枚数が増えてしまいそうです。

ボーカルも少し欲しいし、フリーも何枚かは必要だしな、などと考えていくと、せいぜい枠は10枚前後かなあとか考えたりします。
そう仮定した場合、じゃあカウント・ベイシーはどれを手許に置くのか?と考えると、まずはこれだよな、ということになります。

筋金入りのベイシー・ファンは絶対にこんなのは聴かないんでしょうが、私はこれが一番好きかもしれません。
全体を貫く懐の深くて大きくゆったりと揺れるこの感覚は凄くて、やっぱりベイシー楽団でしか味わえないです。 
このアルバムは全てスタンダードで固められているので、音楽としての情感も濃厚ですごく聴きやすい内容です。
特に、冒頭の "It Had To Be You" の素晴らしさには絶句してしまいます。

また、1958年の録音にも関わらず、このルーレット・レーベルの音の良さには驚かされるし、レコードで聴く快楽度も満点です。
40年代の演奏が崇められる理由はよくわかるのですが、やはり録音の貧しさはどうしてもビハインドになってしまいます。
振れ幅の大きなところは50年代も同じだし、それが生々しくうまく録れているのはやはりこの頃のレコードのほうだと思います。

私が持っているこのレコードのジャケットの裏面にはベニー・パウエルのサインが入っています。 ベイシー楽団のメンバーが直接触った
レコードなんだなあと思うと、ちょっと得をした気分になります。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1年待ったレコード

2014年09月14日 | Jazz LP (Riverside)

Art Blakey's Jazz Messengers / Ugetsu  ( Riverside RM 464 )


やっと入手できました、"雨月"。 別に稀少でもなんでもないのに、きれいなものが意外に見当たらない。 1年近く待ったかもしれません。
でも、待った甲斐がありました。 お値段も格安で、3,200円。

ジャズ・メッセンジャーズでは2番目に好きなレコードです。 ショーター時代の新しい芽吹きを感じる素晴らしい演奏です。
音楽的頂点を迎えたこの3管セクステットはスタジオ録音では張り詰めた緊張感と最高のテンションで突っ走る演奏をしていましたが、
このバードランドでのライヴはとてもリラックスしていて、それでいて3管のきれいなハーモニーも冴えわたっています。

御大から釘を刺されていたのか、ハバードはすごく控えめに抑えたプレイをしていますが、これがとてもいい。 フラーはハーモニーの要として
とても効いているし、ショーターのテナーも若々しくて瑞々しくて、別人のようです。 本当に楽しそうに演奏してる様子が伝わってきます。

楽曲の良さも光っていて、ショーター作の"One By One"やシダー・ウォルトン作の"Ugetsu"、フラーの"Time Off"など親しみやすいメロディーを持った
曲が並んでいるのも嬉しい。 この頃はモードに移行した時期で、などと言われてそれだけで敬遠されているとしたらこれほど残念なことはない。 
若いメンバーたちがこぞっていい曲を持ち寄ったのがこの時期の最大の特徴で、ここでの音楽の魅力に気が付けばもう1500番台やゴルソン/モーガン時代
のレコードなんて聴いてられなくなります。 シダー・ウォルトンのピアノの響きも印象的で、ビル・エヴァンスがマイルスの音楽を変えた時と同じような
役割を果たしていると思います。

スレのないきれいなジャケットのお蔭でステージでの楽しそうな様子がよくわかります。 ショーターの笑顔が全てを物語っています。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の成果

2014年09月13日 | Jazz CD
今週も少しつまみました。




■ Barga Jazz / Sound & Score  ( Philology W731 )

エンリコ・ラヴァ他の現代イタリア実力派が集まったモダン・ビッグバンド、スタジオ録音です。 ヒット率が1~2割程度のビッグバンドで
ようやく聴けるものに出会いました。

複数時期に様々な編成で録音されたものをまとめたもののようで2枚組ですが、どれもきちんとジャズのメインストリームの路線に乗った
正統派の見事な演奏で、アンサンブルは重厚でリズムも流れるようにスムーズ、サウンドもうるさくなく、アレンジのセンスがいいです。

グイグイとドライヴするタイプではなく、じっくりと聴かせる演奏となっていて、しっかりと音楽を聴いたなあという満足感に浸れます。
ビッグバンドのいいところは、これに尽きます。 スモール・コンボではなかなかこういうのは味わえないし、特にイタリアものでは絶対に
あり得ない話ですが、ビッグバンドとなると話は違ってきます。 


■ Sonny Sharrock, Peter Brotzmann / Last Exit  ( J!Mco Records JICK-89178 )

ソニー・シャーロック、ペーター・ブロッツマン、ビル・ラズウェル、ロナルド・シャノン・ジャクソンらによる世紀末的破壊系。
今どきこんなの誰も聴かないのか、600円です。

まあ、一言で言うと、キング・クリムゾンの激しい部分だけを繋ぎ合わせたような音楽です。 ブロッツマン、相変わらず血管がブチ切れそうな感じ
ですが、大丈夫だったんでしょうか? 心配になります、これじゃ。 シャーロックのギターもホントにカッコいい。 この人はギターの特性を
よく知っていると思います。 どうすればカッコいい効果を出せるかを熟知している。 

これはフリージャズというよりは、マインド的には完全にロックの範疇だと思います。 ハードバップ胸焼けへの処方箋ではなく、
気合いを入れなきゃいけない時に聴こうと思います。 





■ Bob Degen Trio feat. Zbigniew Namyslowski / Friday Night Live at The "A-Trane" Berlin  ( Dr.Jazz Records DJ8615-2 )

アメリカ人ピアニスト、ドイツ人ドラマー、ポーランドのサックス奏者らによるベルリンでのライヴ録音。

これはズビグニェフ・ナミスウォフスキのサックスを聴くアルバムで、これが艶やかで硬質な輝かしい音に聴き惚れる素晴らしいアルバム。
この人は60年代からムザやデッカへの録音を皮切りに比較的多くの音盤があるのでマニアには知られた存在ですが、私はちゃんと聴いたことが
ありませんでした。

録音の良さも手伝って、この人の魅力が十二分に伝わってきます。 演奏は普通のモダンジャズですが、演者の魅力で聴かせるという
ジャズの名盤の王道を行く仕上がりです。 さすがにベテランらしく、演奏には積み上げられてきたものからくる落ち着きが漂います。


■ Bertil "Jonas" Jonasson / Turn Around  ( Four Leaf Clover Records FLCCD 173 )

今週一番の当たりはこれ。 何者か全く知りませんでしたが、これは "ジャケ買い"です。 古い廃盤レコードを思わせるジャケット。
まさか、CDでジャケ買いするとは思いませんでした。

スウェーデンのテナー奏者で、ワンホーン、ストリングス入りなど、楽曲毎に編成を変えていて上手く変化をつけています。
この人のテナーはボワッと膨らんだ暖色系の音ですがパッセージラインがしっかりしているので、締まった演奏になっています。
どの曲も適度な長さなのでダレることもなく、いい印象を持ったまま聴き終えられます。

どこか懐かしい感じが全体に漂い、古き良き時代の名残りと現代的な感覚が上手く融合した音楽になっていて、ある種の理想像が提示されています。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の成果

2014年09月06日 | Jazz CD
蒸し暑さが戻った中、今週も少しつまみました。





■ Harold Land / A Lazy Afternoon  ( Postcards Post 1008 )

絵葉書のようなジャケットデザインが印象的なこのレーベル、スティーヴ・キューンの作品も確かあったはずです。 これはハロルド・ランドの
ワンホーン・ウィズ・オーケストラもので、スタンダードのバラードをゆったりと演奏した内容。 これからやってくる秋という季節に相応しいかな、
ということで購入。

バックのオケはアレンジが少し硬いかな、という感じですが、ハロルド・ランドのテナーが入ってくると意外と相性がいい感じです。
アナログ時代よりもずっと深く締まった硬質な音色になっていてこれはなかなかいいですが、相変わらずの口数の少なさで、よく言えば品がいいという
ことになるのかもしれませんが、もう少ししっかり吹いてもいいんじゃないかな、と思います。 ちょっと喰い足りない。

でも、録音もきれいに録れているし、そもそも私は Lazy Afternoon が入っている音盤は貶さないことにしているので、これはOKです。


■ Robert Majewski / My One And Only Love  ( Zair M-001 )

何者なのかは全く知りませんが、フリューゲルホーンによるスタンダード集ということでちょっと迷いながらも聴いてみましたが・・・・

これが、駄目でした。 各楽器がしっかりと鳴っていません。 ソフトでデリケートな音楽にしたかったのはわかるのですが、音楽である以上は
楽器はまずはきちんと鳴らさなきゃいけない、これは基本中の基本です。 こういうのが一番いけない。 音楽も停滞しています。

これは個人的な趣味の問題ですが、私は Bobo Stenson という人が昔から好きではありません。 ピアノの音が陰気で、フレーズも淀んでいて、
この人にジャズのムードを感じたことがありません。 ハーモナイズも冴えないし、一言で言うと、ピアノがあまり上手くない。
少しはマシになっているかな、と思ったのですが、相変わらずでした。






■ Jerry Weldon & Bobby Forrester / The Second Time Around  ( Cats Paw Records CPD-2501 )

すっかり贔屓になってしまったジェリーおじさんなので(おじさん、なんだろうな・・・)、CDを見かけると買ってしまいます。 

オルガンにギターを加えたコテコテ路線ですが、ジェリーさんのテナー自体が明るくクリアですっきりとした音色なので実際はコテコテ感はなく、
軽快なモダンジャズになっています。 難しいことは何もやろうとはせず、ひたすら気持ちよくスイングしています。
こういうのを聴くと、うれしくなります。


■ Amsterdam Jazz Connection + Rik Mol / Traveling East  ( Tetra Records )

今週一番の当たりは、これです。 トランペット(フリューゲルホーン)のワンホーンによるスタンダードを織り交ぜた欧州正統派の新譜です。

これは、まず録音が抜群に素晴らしいです。 オーディオ的快楽は★★★★★。
演奏もおそろしく高度で、且つ音楽的情感がたっぷりと感じられる、素晴らしい内容です。

アップテンポとバラードを交互に配していますが、どちらの演奏も甲乙付け難し。 バラードは全盛期のアート・ファーマーを思わせるし、
アップテンポの切れ味も抜群。 トランペットも上手いですが、バックのトリオの堅牢だけど伸び伸びとした演奏も最高です。
Jazz Tokyo の店内で流れていて、あまりの素晴らしさに即買いでした。

特に、Summertime の霞がかったような濡れたような情感が秀逸で、今年に入って聴いたラッパものの中では今のところこれが第1位です。
ハードバップというよりは、私のあまり好きではない欧州キレイ系寄りですが、そういう分類はどうでもよくなるストレートな現代ジャズです。

唯一の難点は、3,900円というお値段。 高いですよね。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする