先日、DUの新宿中古センターにCDを売りに行きました。 CDラックが一杯になってきて、そろそろ収納場所を確保する必要が出てきたからです。
こういうのはマニアには日常茶飯事の話ですよね。 ジャズ館ではなく中古センターにしたのは、内容がロックやクラシックのCDも含まれていて、
いちいち分けて持っていくのが面倒だからです。 ここのジャズCDの査定額はジャズ館よりもかなり低いのですが、面倒くささに負けてしまいました。
レコスケくんのレコード裁判じゃないですが、当然CD裁判をやった訳で、これが時間もかかるし気力も使うしで、もうそれだけでヘトヘトになるのです。
全部で50枚持って行って、査定価格の合計は19,550円。 想定していたよりもかなり安くて、ガッカリしました。 一枚平均が390円です。
私には聴かない音盤をいつまでも棚に並べておく趣味はないので別に手放すこと自体はどうでもいいのですが、売ったお金は来月の音盤漁りの軍資金に
なるので、少しでも高いほうがいいに決まっています。 そりゃあ今回買取してもらったCDには高額レア廃盤といった類のものは含まれていなかったし
(そもそもそんなCDは持ってない)、大半が千円台で買ったお手頃なものばかりなのであまり偉そうなことは言えません。でも、ジャズ館で1,800円
くらいで買ったやつが280円だったり、3,600円で買ったベルチャQtのベートーヴェン集が500円だったりすると、さすがにガックリきます。
これまで数えきれないくらいDUでレコードやらCDを売っていますが、どうやら何を売っても高い査定をする時期と、逆に内容に関係なく安い査定をする
時期がある、ということに気が付きます。 自分が買うCDの傾向は大体同じなので、売る際の内容も毎回似たような内容のはず。 にもかかわらず、
平均単価が800円の時もあれば、390円の時もあります。
どうもこれは売りに出す内容の問題でもなければ、査定担当者の問題でもなく、意図的に買取価格を下げるように内部で指示が出ているんじゃないか、
という気が直観的にします。 同時期に複数の店舗に売りに行っても、どこの査定価格も似たような水準になっていることが多いからです。
そういう内部の価格統制がかなり厳格に運用されているような気がします。 DUにとって、中古の買取価格の水準をどうするかは会社の生命線。
毎日持ち込まれる数はハンパない量でしょうから、高額廃盤のようなもの以外は1枚1枚の査定価格にさほど神経を使っているはずがなく、
1枚当たりの平均価格の上げ下げで仕入れ原価のコントロールをしているに決まっています。
そういう安い価格で買い取った商品は販売価格も安くなるかというとそんなこともなく、大体一定です。 150円の査定だったものが、後日1,330円で
売られていました。 DUの値付けは大体が買取価格の倍、という暗黙知が破られています。 これは凄い粗利率です。
つまり、今回のように査定がいつもより低いのは、直近のDUの業績が内部目標と比べて思わしくないからなんだろうと思います。 こういう流通業は
年度決算が良ければそれでよし、というようなのんびりした構えではまずく、毎月の決算内容に企業行動が大きく左右されます。 HMVの中古業界参入に
DU経営幹部はかなり動揺したというし、CDの廃盤価格の水準が以前よりも大分下がってきて大物廃盤が動かなくなっているようだし、決して売れ行きが
悪い訳ではないとは思いますが、利益が上がりにくい状況なのかもしれません。
あと、明細を見ると軒並み安い査定の中で1枚だけ高い値段になっていて、後日このCDは査定価格よりも安い売値が付いて出されていました。
つまり、この音盤の査定価格で全体の買取価格の合計を調整していたわけです。 こういう風に、1枚ごとの損益計算は意外といい加減にやっている
ことがわかります。 買い取った枠の中で一定以上の利益率になっていればいい、ということですね。 でも、明細を見て、安い査定に不満で何枚か
キャンセルしたら全体の利益率が大幅に下がることになるので、本当にこんな買取明細でいいのか?と思ったりします。 ま、売り手が気にする
ことではないんでしょうが・・・・
査定に不満なら全部キャンセルすればいいんですが、持って帰るのは面倒だし、一度手放すことを決めた音盤には未練はなくて、自分の中では
既に不要物の扱いになっていて、そんなものを家に置いておくのも気分的にイヤなので、そのまま手放してきました。
で、ラックにスペースができたので、心置きなくつまみました。
■ Ferdinand Povel Quartet / Some Other Blues ( Blue Jack Jazz Records BJJR 019 )
オランダでは Ruud Brink と人気を二分するサックス奏者ですが、録音が少なくあまり知られていない人です。 このCDは貴重です。
ダスコ・ゴイコヴィッチの It's About Blues Time にも参加していますが、語られるのはダスコのことばかり。 7inch盤も少しあるようですが、
私の場合は購入対象外なので、これは手放せません。
硬質で中庸な音色でクセのないフレーズ回しで吹いていくので、聴いていて気持ちがいい。 誰かに似ているわけでもなく、自分の音とスタイルを
きちんと持ってこうやって演奏活動をしていたんだなあ、と不思議な感慨を覚えます。 オランダの演奏家は総じて録音に熱心ではないようで、残念です。
■ Isla Eckinger, Chuck Manning / L.A. Calling ( TCB Records No 9090 )
これも何かの本で紹介されたのか、レア盤扱いのようです。 普段はベース弾きですが、たまにこうやってトロンボーンも吹くらしい。
どういう褒められ方をしたのかよくわかりませんが、演奏は確かにしっかりしているのですが、どうも音楽が凡庸で捉えどころがありません。
いい演奏かと訊かれればいい演奏だと答えるしかないのですが、聴いていても音楽が心に残らないというか・・・・
録音もクリアで悪くないし、嫌味なところも別にないのですが、こういうマイナーな音盤に光を当てること自体は素晴らしいことだとは言え、
内容にそぐわない持ち上げ方するのはどうかな、と思います。
■ Sarah Vaughan / If This Isn't Love ( 55 Records FNCJ-5606 )
サラ・ヴォーンが1958年6月7日にコンセルトヘボウで行ったコンサートの模様を録音した音源の発売で、これには重要な意味があります。
この時のバックは、ロンネル・ブライト、リチャード・デイヴィス、アート・モーガンで、このコンサートの2日前に、3人は仏ポリドール社で
例のピアノトリオの録音を行ったのです。 サラの渡欧について行った際の録音だとは知っていたのですが、まさかそのライブ自体が
こうやって録音されていたとは知らなかったし、こうやって聴けるようになるとは思ってもみませんでした。
2度目の渡欧ライヴということでリラックスした様子を見せながらも、サラ独特の唱法が素晴らしく聴き惚れます。 そして曲間ではロンネル・ブライトの
笑い声や話し声も聴くことができます。 裏面ジャケットにはステージ上の4人の様子が映った貴重な写真もあり、これは素晴らしい記録です。
よくぞ発売してくれました、と声を大にして言いたいですね。