廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

版違いを愉しむ

2019年12月31日 | Jazz LP (Riverside)

Bill Evans / Sunday At The Village Vanguard  ( 米 Riverside RLP 9376 )


古い音源は経年の中で版権の所有者が移り変わる。芸術作品とは言え、それは商品。売れるものは不思議な巡り合わせで人々の手を経ていく。
その中で過去のものと差別化を図るために、都度仕様に手が加えられていく。そこに差異が生まれ、その違いが人々を困惑させる。
どれが初版か、どれが1番音がいいか。

でも私は困らない。どちらかと言うと、楽しい。同じ演奏を微妙に違った音場感で聴き比べるのが楽しいのだ。それには高級なオーディオは
必要ない。版の違う音盤が何枚かあれば、それでいい。我が家のオンボロ機器でも十分違いは聴き取れるのだ。RLP規格のステレオプレスと
国内盤のレギュラープレス、そしてモノラルプレス、果たしてどういう違いがあるだろうか。

このステレオプレスを聴いて最初に感じるのは、非常に自然な音場感だということだ。昨年も似たようなことを書いた気がするが、
ヴァンガードでのライヴの録音はきっとステレオだったのではないか。モノラル録音を疑似的にステレオにした音には聴こえない。

よく知られているように、この録音はトリオのヴァンガード公演の最終日に急遽行われた。事情はよくわからないが、急ごしらえだったらしい。
そのような中で果たしてモノラル、ステレオの両方で録音されただろうか。

ピアノは右のスピーカーから主に鳴り、ベースとドラムは中央に定位する。実際にステージで演奏されているのを聴いているような音場感だ。
楽器の音はどれもクリアで、極めて自然な雰囲気である。1つ1つの音の分離がいいため、エヴァンスの和音がきれいに響いて、モノラル盤を
聴いている時とは楽曲の印象が少し違う。 "All Of You" や "My Man's Gone Now" のようなブロックコード主体で弾かれる楽曲の建付けが
よくわかり、エヴァンスがやろうとしていたことがよくわかるようになった。これが一番の収穫ではないか、と思う。

モノラル盤と比べると音圧が低いのでボリュームをかなり上げて聴くことになるけど、音量を上げてもうるさく感じることはない。




Bii Evans / Sunday At The Village Vanguard  ( 日本 ビクター音楽産業 VIJ-114 )


80年代半ばにプレスされたビクターの国内レギュラー盤。盤に厚みがあって、上記ステレオ盤と重量が変わらない。但しジャケットが如何にも
カラーコピーです、という感じなのがいただけない。

RLP9376のすぐ後に聴くとピアノやベースの音が少しくすんでいて、音像がややにじんでいるのがわかる。その分、ライヴとしての臨場感は劣る。
その代わりと言ってはなんだが、ベースの音量がかなり大きくなっていて、3人のバンドとしての纏まり感が増している。RLP9376は音の分離が
いい分、3人はそれぞれ独立した個として演奏しているが、こちらはバンドとして一体感を持って突き進んでいく感じがする。不思議なものだ。

同じステレオプレスにもかかわらず、RLP9376とはまた違う印象の演奏に聴こえる。つまり、別テイクの2種類の演奏を聴いた感じが残る。
なんだか、得をした気分だ。

不思議なのが、"Waltz For Debby" のビクター盤 VIJ-113 と比べると、楽器の音の艶が全然違うこと。ワルツのほうが楽器の音に艶があり、
残響も多い。同じ時期の製造なのに音場感が全く違うのが不思議だ。元のマスター音源の違いに起因しているのかもしれない。サンデーは常に
2番手の評価で地味な印象があるのは、こういうところに依っているのかもしれない。




Bill Evans / Sunday At The Village Vanguard  ( 米 Riverside RLP 376 )


お馴染みのモノラル初版を改めて聴き比べてみる。ステレオでは中央に位置していたベースとドラムが中央からは居なくなり、ピアノと同じ場所
から演奏が聴こえるようになる。この音源は元々 "Gloria's Step" の開始まもない箇所でテープの傷みから音がぐにゃっと曲がる箇所がある。
ステレオ盤ではその歪みが顕著ではっきりとわかるが、モノラル盤は音が歪むことは歪むのだが、ステレオ盤ほど酷くはない。
このことからも、モノラルマスターはステレオマスターをベースに作られたんじゃないか、という気がするのだ。

このモノラル盤はステレオ盤と比べるとピアノの音の劣化は目立たないが、ベースの音は大きく落ちる。ステレオでは弦のビリつきがリアルに再生
されるが、モノラルではベースの音像はぼやけて音の輪郭がなくなっている。但し音量そのものは確保されているので、モノラルプレスのベース
としてはこんなもんかな、という感じで違和感はない。あくまでステレオ盤と比較した場合の差異という話だ。このベース音の欠点はイコライザー
カーヴをRIAAからffrrに切り替えることで大きく改善する。ワルツ同様、この盤もRIAAでは真価を発揮しない。

我々のような古いレコードを日常的に長く聴いている人間には、このモノラルの音場感は身体に染み付いたものなので違和感がない。
逆にステレオの分離の良さや楽器の音の艶に新鮮な驚きを感じることができ、新しい別の演奏を聴けたような気がして儲けものだという感覚だ。
そこが愉しいのである。この中でどれが一番音が良いか、という話には興味がもてない。


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Come Sunday に込められた許しと祈り

2019年12月30日 | Jazz LP (Columbia)

Duke Ellington and His Orchestra featuring Maharia Jackson / Black, Brown And Beige  ( 米 Columbia CL 1162 )


奴隷制度と人種差別をテーマにした組曲ということで煙たがられる作品だろう。娯楽の中にそんなものを持ち込むなよ、というのが大方の本音だろう。
まあ、そういう気持ちはわからないではないが、これはそういうのを抜きにしてもただただ素晴らしい音楽だ。先入観抜きに愉しめばいいと思う。

例えば、ドイツという国はナチスの歴史を国を挙げて悔やみ、恥じ、2度と繰り返すまいとしている。学校で先生の質問に子供たちが手を挙げる際は
真っ直ぐに挙手せず、人差し指を立てて合図するという。一方、アメリカはどうだろう。奴隷制度という黒歴史にどう向き合っているのだろう。
人間の暗部や恥部に向き合うのは辛いことだけど、エリントンは正面切ってそういうものに取り組んでいる。

でも、そういう重苦しい雰囲気はここにはない。エリントン楽団だけが出せる芳香漂うアンサンブルで空間が埋め尽くされる快楽度の高さ。
オーケストラがまるで生きているかのように音楽をドライヴする。

マヘリア・ジャクソンの歌が始まると、鳥肌が立ちっぱなしになる。心は震え続ける。彼女の抑制された感情の移ろいがそのままこちらに乗り移る。
背後で鳴るエリントンのピアノのなんと美しいことか。このアルバムのエリントンのピアノの音色は本当に美しい。

Come Sunday という主題が様々な形で変奏され、寄せては遠ざかる波のように音楽を揺らす。B面は完全にオペラで、エリントン楽団の繊細で精緻で
洗練を極める演奏が圧巻。まるで欧州の名門オーケストラを聴いているかのようだ。

全体的に穏やかで優しい旋律で奏でられて、それは心を慰撫し癒す。この中に込められたそういう想いは深く、音楽の隅々にまで行き渡っている。
何かを糾弾し煽動しようとする要素は微塵もない。許しと祈りの音楽で、それを物憂げでそれでいて明るい色調に纏めた素晴らしい音楽だと思う。

コロンビアの録音も相変わらずの見事さで、こういう音楽の受け皿はやはりこのレーベル以外には考えられない。1943年の初演の際の評価は
芳しくなかったそうだが、素直に音楽を享受するには難しい時代だったのだろう。以来15年間、エリントンはこの企画を温め続けて、マヘリアという
歌手が現れるの待ち、録音技術が整ったこのタイミングで再演した。音楽を聴く意味を噛みしめることができる、素晴らしいアルバムである。


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異端の音楽

2019年12月29日 | Jazz LP (Columbia)

Duke Ellington and His Orchestra / Masterpieces  ( 米 Coolumbia ML 4418 )


デューク・エリントン楽団の音楽はジャズのビッグ・バンドの世界においては異端の音楽である。少なくともボールルームで人々がダンスを踊るための
音楽ではないことは確かだ。そういう音楽がジャズ界で第一人者という評価になっているのは不思議だ。彼らが日常的にどういう演奏をしていたのかは
よくわからないけれど、レコードに刻まれた音楽を聴く限りではこれをかけて、さあ踊ってくださいという目的で録音されてはいないことはわかる。

豪華な大編成で演奏されるから目立たないけれど、内省的な音楽だ。タイトルも独特で、孤独とか幻想とか雰囲気とか洗練という陽気なジャンルには
似つかわしくない言葉が用いられ、クラリネットの独白にそういう言葉の意味を担わせている手法も他のビッグ・バンドでは見られない特徴だ。
このアルバムで初披露された "The Tatooed Bride" は明るい色調を帯びながらも、花嫁の肌には刺青が施されているという婚礼の華やかなイメージ
にはおよそタブーとも思える暗いイメージが付加されている。

エリントンの音楽にはそういう陰と陽のコントラストが独特の色調を帯びながら重層的に施されていて、複雑で微妙に揺れ動く無数のイメージを
聴いている側に想起させる。ジャズという本来はシンプルで単純な音楽の中にそういう込み入った内省観を持ち込んだところに、この人の他にはない
重要な価値があるように思える。そして、そういう面を正統的に引き継いで音楽化したのは、私の知る限りではマイルス・デイヴィスただ一人だった。

このアルバムから録音時間が長くなり、エリントンのそういう特質が顕在化するようになる。レコード技術の進化の恩恵をいち早く享受したのは
エリントンだったのではないか。だから、エリントンの音楽の良さを知るにはこのアルバム以降のものを聴くのがいい。3分間の演奏ではそれを
表現するのも聴き取るのも難しい。自作の代表的なタイトルが3曲含まれているけれど、ここでの演奏は "Popular Ellington" のようなアルバムに
含まれるものとは本質的に異質な音楽である。エリントンの音楽はメロディーの美しさやリズム感の良さで聴かせるような一般的な音楽ではなく、
複雑に編み込まれた内的なイメージを聴く音楽なのだ。


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残り香が漂う素晴らしい演奏

2019年12月28日 | Jazz LP (復刻盤)

Bill Evans / Live At Art D'Lugoff's Top Of The Gate  ( 米 Resonance HLP-9012B )


エヴァンス愛好家にはよく知られた音源で、過去にも何度かリリースされていたようだが、私はよく知らなかった。

音質は良好だ。レゾナンスは安定してきたと思う。正規録音ではないにも関わらず、ピアノの音がきれいに鳴っている。音の粒立ちが良く、
打鍵の際のタッチの感覚がよく伝わってくる。未発表音源の復刻としては、最良の仕上がりと言っていいんじゃないだろうか。

ここでの演奏で際立つのは、楽曲本来の良さを引き出すことに成功していること。"My Funny Valentine" にしても "Alfie" にしても、
原メロディーの良さを殺さずにハーモニーで上手くコーティングしてより魅力的なものへと持ち上げているので、単純に音楽の良さに感激する。
68~69年頃のエヴァンスにはまだリヴァーサイド時代の演奏の残り香が漂っていて、聴いていると自然と笑みがこぼれてくる。

どこを切り取ってもエヴァンスのピアノが堪能できる内容で、長く愛聴するに相応しいアルバムだと思った。これならどれだけ復刻してもらってもいい。
何枚でも聴きたいと思う。正規録音をすべて揃えた愛好家がブートに走る気持ちがよくわかる気がする。これほどもっと聴きたいと思わせてくれる
アーティストが果たして他にどれだけいるだろうか。

少し前ならこういうのはCDでリリースされて終わりだったろうが、今はありがたいことに必ずレコードも出してくれる。我々にとってはいい時代に
なったと言えるのかもしれない。RSDでしか買えない、というような面倒なことはせず、普通に出してくれればもっといいんだけど。


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年末廃盤セールが始まったが・・・ その5

2019年12月25日 | Jazz雑記



先週末の成果は、音楽的内容は大物だが価格は安レコ、という典型的なエリントンの2枚。
どちらもエリントン・カラーが濃厚に出た傑作。

”マスターピース” は6ツ目のほうが音がいいけど、この緑レーベルはエリントンのLPフォーマット
として初リリースになったモニュメンタルなレコード。初版にはそういう意味がある。

それでもエリントンは一部の人しか聴かないから、レコードは安い。
いいんだかよくないんだか、わからない。
ただ、そのおかげで私のところにこうして回ってくるんだから、感謝するべきなのかも。

エリントンの魅力を説明するのは殊更難しい。
でも、あきらめずに言葉にしていこう。


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完全アカペラが作る音楽の巨大な壁

2019年12月23日 | Jazz LP (Vocal)

The Singers Unlimited / Christmas  ( 独 MPS 20 20904-0 )


クリスマス・ソングは、やはり何と言ってもコーラスが似合う。コーラス・グループの多くがクリスマス・アルバムを残しているけれど、その草分けが
シンガーズ・アンリミテッドのこのアルバムかもしれない。

ハイ・ローズ解散後にジーン・ピュアリングが作ったグループがこのシンガーズ・アンリミテッドだけど、レコーディングは1人が複数パートを歌い、
全体で4声以上の分厚いコーラスの層を作り、エコーをたっぷりと効かせた壮大な音響で録音した。おそらく教会の聖歌隊をイメージしたのだと思う。
ドイツのMPSレーベルと契約したおかげで、このレーベルの高度な録音技術がそれを可能にした。

このグループはジャズ・コーラスの技術的限界の枠を大きく拡げて、この路線は現代のザ・リアル・グループに引き継がれている。このアルバムも完全
アカペラで、人の声だけで巨大な音楽を作り上げている。取り上げられている楽曲はポピュラー系のものは避けてトラディショナルなものがメインに
なっており、それがアルバム全体の格調を高い印象へと押し上げている。そういう意味では極めて正統派の内容だ。

これをかければ、家の中は見事なまでにクリスマス一色となる。クリスマスツリーもクリスマスケーキも欠かせないけれど、やっぱり何はなくとも
音楽、である。お気に入りのクリスマスアルバムがあるのとないのでは人生の楽しさはずいぶんと違ってくるのではないか、という気がする。


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楽しいクリスマスの雰囲気はどこへ消えたのか?

2019年12月22日 | Jazz LP (Vocal)

Rosemary Clooney / In Songs From The Paramount Pictures Production Of Irving Berlin's White Christman  ( 米 Columbia CL6338 )


12月に入ると街の装いがクリスマス色に染まって、というのが楽しみだったはずなのに、どうも最近はそういう雰囲気が希薄になっていないだろうか。
昨日も街中へ出かけたけれど、クリスマスの雰囲気を感じることはなかった。なぜだろう?

そういう雰囲気を楽しむ心の余裕みたいなものが、社会全体から無くなってきているような気がする。子供の頃は、デパートに行くとクリスマスソングが
終始流れていて、緑と赤の装飾で彩られて、人々の顔つきも穏やかで楽しそうだった。そういうクリスマスはどこに行ってしまったのだろう?

だから、せめて我が家の中だけはクリスマスっぽくしよう、とクリスマスのレコードをできるだけかけるようにしている。幸いジャズの世界にはその手の
レコードがそこそこ残っているから、題材に困ることはない。

ローズマリー・クルーニーはジャズ・シンガーというよりはポピュラー歌手なのかもしれないけれど、ちゃんとクリスマス・アルバムを残している。
ポール・ウェストンやパーシー・フェイス楽団をバックに朗々と歌う。この人のいい所は色気を武器にしないところ。そういうのでごまかさない潔さだ。

アーヴィング・バーリンのクリスマスや冬に因んだ曲が集められていて、ザ・メローメンというコーラス隊がバックに付いたドリーミーな内容。
クリスマス・アルバムは出来がどうのこうのというべきではなくて、その存在そのものがありがたくて楽しいのだから、丸ごと楽しめばそれでいい。
このレコードは、ジャケット・デザインも素敵だ。何もかもが楽しい。


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ジョーンズな人たち

2019年12月21日 | Jazz LP

Thad Jones / The Jones Boys  ( 米 Period SPL 1210 )


サド・ジョーンズ、ロナルド・ジョーンズの2人のトランペット、クインシー・ジョーンズのフリューゲル・ホーンという3管のフロントに、ジョーンズという
名前の3人のリズムセクションが揃った冗談のようなセッションで、偶然なのか、意図されたものなのかはよくわからない。ただ、ラッパが3本必要な
音楽をやっているわけではないので、少なくもフロントは冗談半分で揃えたような気がする。

聴いた印象ではワンホーンの音楽のように聴こえる。テーマ部でアンサンブルの箇所もあるけど、3人とも大人しい演奏だから重奏感は希薄だ。
特に、クインシーなんて別にいなくても何も問題ないような気がする。アレンジ感もなく、全体的にゆる~い音楽である。その中ではさすがに
サド・ジョーンズの演奏はしっかりとしていて、彼が主役を張っている。

いい意味で隙間が多く、サド・ジョーンズの明るい音色がよく映える、陽当たりのいい穏やかな午後の音楽だ。25年振りくらいに聴いたわけだけど、
当時の印象と何も変わらない。こういうのは如何にもサド・ジョーンズらしい。彼の他のリーダー作と同じ路線、同じ傾向の緩やかな音楽。
”パパ”・ジョーンズの古風なリズム感が音楽をよりマイルドにしている。

どんなジャンルの音楽にも、こういう地味で、マイナーで、それでいて趣味の良い作品はある。ジャズの深みにハマってしまった者のみが手にする
タイプのアルバムで、そういう人だけがこの内容に良さを感じることができるのではないか。高名な名盤群とは違うレイヤーでジャズという音楽を
支え、愛好家を惹きつけ続けた無数にある無名な作品群の中の1つ。そういう愛で方が相応しい。


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年末廃盤セールが始まったが・・・ その4

2019年12月18日 | Jazz雑記



先週の成果も相変わらずの感じで、ミドルクラス1枚、安レコ1枚。

人気のないヴォーカル・コーナーの一角をパタパタとめくっていたら、The Jones Boys が出てきた。
予算の都合で買い切れなくなったか何かで、ここに隠したのだろう。冬場に備えて地面を掘って木の実を埋めて隠すリスのように。
申し訳ないなあ、でも、拾わせてもらうよ。

コロンビアの60年物はステレオ盤を優先して拾う。ステレオのほうが当たり前に音がいいし、安いからだ。
CONTACT盤が良かったので、こちらはトリオものだけど聴いてみよう。

地味なラインナップで、傍目にはおもしろくない内容で申し訳ない気がする。


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ジョアン・ジルベルトを聴きながら眠る猫

2019年12月16日 | 猫とジャズ



話題のジョアン・ジルベルトのアナログに針を落とす。

スピーカーの前で猫が眠るくらい、静かな音楽だった。


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ステレオ期のアール・ハインズ

2019年12月15日 | Jazz LP

Earl Hines / Spontaneous Explorations  ( 米 Contact CS-2 )


デューク・エリントンやセロニアス・モンクは好き嫌いの嗜好は別にして巨匠としての評価は誰しも揺るがないところだろうけど、本来は同格の扱いを
受けても何もおかしくないアール・ハインズはまったくと言っていいほど人気がない。エリントンやモンクは伝統を踏まえて自身の音楽を作り上げたが、
アール・ハインズはそこまでには至らなかった。そういうことにはあまり興味がなかったのかしれない。

ルイ・アームストロングと同世代だから、ジャズの歴史をそのまま生きたような感じになる。録音は無数に存在して、どれから手を付ければいいのやら
さっぱりわからないし、大体どれを聴いても古いスイングジャズで、1度聴けばもういいや、という感じになるのが一般的な反応だろう。
だからこの人を聴くなら60年代以降のアルバムがいい。その中でも、このソロ・ピアノを聴けばそれまでの印象が一変するだろうと思う。

エリントンやモンクほどアクが強くなく、彼の一番弟子だったテイタムほど饒舌でもなく、テディ・ウィルソンほど退屈でもなく、エロール・ガーナーほど
大袈裟ではなく、そういう人たちと較べると意外なほど中庸でモダンで素直な演奏だ。ピアノの音そのものにリズムが宿っているから、ベースやドラムは
元々必要なく、これだけで音楽は成立している。

音数は多いけれど、うるさい感じはない。粒立ちのいい音が流麗に流れていく。古臭い感じがなく、表情も豊かで全然聴き飽きるようなところがない。
楽器がしっかりと鳴っており、運指もなめらか。古いスタンダードを取り上げているけれど、とてもモダンな演奏だ。じっくりと聴くには相応しい。

1964年の録音なので、当然ステレオ盤で聴くのがいい。ピアノの自然な残響が捉えられていて、等身大のアール・ハインズが眼前に立ち現れる。
その姿は巨匠というよりは、繊細な1人のピアニストとしての姿に見える。


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エリントンの誘いを蹴って

2019年12月14日 | Jazz LP (Capitol)

Miles Davis / Birth Of The Cool  ( 米 Capitol T-762 )


23歳のマイルスがすべてを賭けて制作したこの音楽、昔聴いた時はピンとこなかったけれど、そもそも子供にその良さなど理解できるはずもない、
れっきとした大人のための音楽である。

ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンと真剣に議論を交わし、レコーディングに入る前にライヴハウスで十分に演奏し、満を持して録音に臨んだ。
その最中にデューク・エリントンに呼ばれ、彼の楽団に加入するよう誘われた。でも、この音楽に賭けていたマイルスはその誘いを固辞する。
憧れのエリントンからの誘いでも、毎日同じ音楽を演奏する生活は彼にはできないことが分かっていたからだが、それでも、進行中のこの音楽を
仕上げたいという気持ちも本当だったのだろう。

そこまでして作り上げたこのアルバムは、安易なラージ・アンサンブルによる軽音楽などとは似ても似つかぬ充実した内容に仕上がっている。
デューク・エリントン、フレッチャー・ヘンダーソンからクロード・ソーンヒルへと繋がる音楽の系譜を、最小限のアンサンブルで演奏することが
狙いだった、とマイルス自身が述べているように、音楽教育をきっちりと受けた人らしい正統派の音楽作りがされている。その上で凝った構成や
スリリングな展開を施しており、非常に聴き応えのある音楽になっている。

低音部のサウンドカラーは如何にもギル・エヴァンスだし、リー・コニッツのソロも初々しい。おそらく初めて録音公開された "Israel" を聴けば
ビル・エヴァンスがこの曲をどうやって発展させたかがわかり、彼の音楽観がよくわかる。ビ・バップのけたたましい喧騒感が漂っていた40年代の
終わりに、このサウンドは見る人が見れば驚異だったろう。マイルスが何か新しいことを始める時は形を壊したり外縁部へ出ようとは決してせず、
逆に常に本流のより中心へ回帰しようとする。その本能のようなものが、既にここに現れているのが一番興味深い。

SP録音の割には音質は悪くなく、ワイドレンジは広くはないものの50年代後半のキャピトル・モノラル録音と言われても違和感のないサウンドだ。
さすがはメジャー・レーベルである。こういう時に頼りになる。

柔らかいとかマイルドという表面的な部分しか見えないうちは聴かないほうがいい。少し時間を置いて聴くともっと違った印象になるだろうと思う。


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年末廃盤セールが始まったが・・・ その3

2019年12月11日 | Jazz雑記



今はブルーノートを買うには不適切な時期なので、セールなんかやられても私には関係ないわけだが、
リストの中の4100番台で1枚欲しいものが出ていたので、リスト更新時に残っていれば買おうかと思っていた。

が、当たり前のようにSOLD OUTとなっていたので、今回も高額盤には縁が無し。
結局、通常の回遊ルートとなった。

「クールの誕生」は歴史的名盤ということで普段からいい値段が付いて、これまでは買う気になれなかったが、
ジャケット不良ということで相場の1/3以下のミドルクラスで射程距離に入ったものがあったので、拾っておく。

バド・シャンクのペラジャケはカル・テックのライヴで、オリジナルとはデザイン違い。
オリジナル自体安いけど、オーボエでジャズをやったりして勘弁して欲しい内容なのでこれまでスルーしてきたが、
お決まりの850円ということで、まあ聴いてみるかと拾っておく。

値段が安ければ、こういう風にちょっと聴いてみようかという気になるものだ。
そうやって間口が拡がっていく。

こうして第3弾は終わった。もはや、年末セールとは何の関係もないシリーズと化している。


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ホッと一息つくピアノトリオ

2019年12月08日 | Jazz LP (Impuise!)

McCoy Tyner / Nights Of Ballads & Blues  ( 米 Impulse! A-39 )


インパルスというレーベルは後期コルトレーンの印象があまりに強く、60年代のニュー・ジャズ一辺倒だったようなイメージが拭いきれない。
白人ミュージシャンもごく少数だが採用してそれなりにカタログの内容に幅を持たせようとしてはいるけれど、それらはあまりに非力だった。
コルトレーンとその周辺の音楽があくまでも主軸で、それが当時のシーンの状況だったのかもしれない。

ただ、そんな中でも経営を維持するためにセールスを意識したアルバムも作成している。それらが当時どの程度売れたのかはよくわからないけれど、
それはつまり、先鋭的な音楽はあくまでも先鋭的であって、ついて行ける人たちはさほど多くはなかったということだったのかもしれない。

マッコイもこのアルバムのようにスタンダードで固めたわかりやすいピアノトリオ作を作っていて、これはちょうどコルトレーンの "バラード" と
同じような位置付けになっている。ベースにスティーヴ・デイヴィス、ドラムにレックス・ハンフリーズを充てて、敢えてコルトレーン・カラーが
出ないように配慮しているところがポイントだろう。

マッコイ・タイナーはレッド・ガーランドの影響を隠さなかった唯一のピアニストで、リズムの処理の仕方が全く違うので聴いた時の印象はかなり違う
ものの、ピアノの弾き方はよく似ている。但し、バラードがあまり上手くなかったせいもあってピアノの表情がワンパターンで、アルバム1枚通して
聴くのはいささかしんどい。このアルバムも演奏の出来はいいが、片面聴けばお腹一杯になる。楽曲を作り上げようとするアプローチではないので、
どの曲を聴いても同じような印象で、正直言って各々の違いがよくわからない。達者な演奏で見事だけれど、音楽としての成熟はまだこれからの状態
だったことがよくわかる。

ただ、それでも重苦しいインパルスの中ではホッと一息つける内容で、これはこれでよかっただろうと思う。制作の目的は達成できている。
一連のインパルスのカタログの中で見るとギャップの大きさが激しく、コルトレーンの "バラード" 同様、それが評価を難しくしているんだと思う。


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エセル・エニスの歌声

2019年12月07日 | Jazz LP (Vocal)

Ethel Ennis / Have You Forgotten  ( 米 Capitol T-1078 )


天才の技に接する時、人は直感的に、理屈抜きに、「これは敵わない」と感じるものだ。特に歌の場合はフィジカルな感覚として理屈抜きにわかる。
エセル・エニスの歌声は、その最もわかりやすいケースだ。この歌声を聴いてそう感じない人はまずいないだろうと思う。

クセのない真っ直ぐでよく通る声、正確な音程、抑制された感情、それでいてにじみ出る情感と芳香、これ以上の歌手が他にいるかと思わせる。
ありふれたスタンダードではなく、地味でいてメロディーの良い歌を静かに歌っていく素晴らしいアルバムで、キャピトルの真骨頂と言える。
こういうレコードはこのレーベルしか作れない。

ただ、キャピトルにはこういう趣味の良いヴォーカル作品がザクザク転がっていて、その中に埋没してしまい、目立たなくなるという面がある。
これがマイナーレーベルからポツンと発売されていたら、おそらくみんなが目の色を変えて探す名盤となっていただろうと思う。
素晴らしい音楽だからメジャーレーベルが契約してリリースしているのに、それが却って作品の価値を平準化させてしまう。何とも皮肉な話だ。
マニアが騒ぐ名盤や人気盤の正体とは、得てしてそんなものだ。

今のところはエセル・エニスが好きな人は本当にヴォーカル作品が好きな人だろうと思うけれど、これはそういう枠を超えて認知される価値がある。
黒人女性ヴォーカルはエラやサラやレディー・デイだけではない、という当たり前の認識に早くなればいいと思う。


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