廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

国内盤の底ヂカラ

2019年10月26日 | Jazz LP (国内盤)

Tommy Flanagan / Overseas  ( 日本 Top Rank MJ-7010 )


ジャズのレコードコレクターの世界において国内盤は昔からバカにされる存在で、その風潮は今も変わらない。その理由は音質の悪さだったり、盤や
ジャケットの作りの悪さのせいだ。確かにそういう面で比較した時、大きく劣るものが多いのは事実なので致し方ない部分はある。ただ、全てがそうか
というと、必ずしもそうではない。何の遜色もないタイトルはいくらでもあって、基本的には先入観による物言いになっているだけだろうと思う。

私も若い頃はガチガチのオリジナル至上主義で国内盤をバカにしていたクチだけど、マニア遍歴が2周、3周した今は国内盤の良さを素直に享受できる
ようになった。昨今のレコード復権の中でレコードでジャズを聴き始めた人たちはSNSに溢れるオリジナル自慢の記事に自分の持っているレコードの
ことを気恥しく感じるかもしれないけど、そんな風に思う必要はまったくないよ、と言ってあげたくなる。どんなハード・コレクターだって元を正せば
国内盤を聴いて育っているわけで、単にそのことを封印しているに過ぎない。

ブルーノートのオリジナルとキング盤を比較してどうのこうのという話は今でも見かけることがあるけれど、ブルーノートのオリジナル盤にたくさん
触れていて本当に熟知している人はオリジナルには美点しかないというわけではないことをよく知っているから、そういう発想にはならないだろう。
ありのままに見る、人目を気にしない、というのは煩悩の多い我々には難しいことだけど、それに近づくことで音楽の楽しさの幅は間違いなく拡がる。


天下の名盤として不動の地位にあるこのアルバム、みんなどういうフォーマットで聴いているのだろう。オリジナルのメトロノームEP盤で聴いている
人なんてごく少数だろうし、オリジナルでもないのに異様な高額になっているプレスティッジ盤初版となればもっと少ないだろう。大半の人が普通の
国内盤かCDで聴いているはずで、私ももちろん国内盤レコードで聴いている。国内盤はたくさんのヴァージョンがあって、いくつか聴き比べた中では
このペラジャケ版の音が1番古臭くて雰囲気がよく出ているような感じだったから、これに落ち着いている。

国内盤のペラジャケにはそれ専門のコレクターもいる、それなりに人気のある分野。このペラジャケは日本でレコードが製造されるようになった初期の
時代のもので、海外から原盤のスタンパーを借りて製造されたものが多いと言われている。ただ、私が聴いた範囲では必ずしも音質が優れているものが
多いという印象はなく、かなりバラつきがあるように思う。そんな中で、このオーヴァーシーズはいい出来だ。

このレコードは縦横両方の振動を拾うモノラル・カートリッジで聴けば、何の不満もない音で鳴る。エルヴィンの唸り声はしっかりと再生されるし、
酔っぱらったフラナガンの粗挽きなタッチも生々しく聴ける。ウィルバー・リトルのベース音も大きなレベルでカッティングされていて、迫力も
満点だ。ピアノ・トリオの演奏としては珍しく粗っぽい演奏だけど、そこは超一流の演奏家らしく破たんなく着地させているから名盤ということに
落ち着いた。7インチEPは再生が面倒だし、プレステ盤は高過ぎて買えるはずもないから、国内盤を上手く鳴らす工夫をして聴けば大丈夫。
このアルバムの一番大事な部分はきちんと手に入れることができる。

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6 コメント

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ペラジャケ好きです。 (altoman)
2019-10-26 13:21:15
ご無沙汰しております。
これいいですよね、所有しております。
オリジナル盤がメインですが、余技でペラジャケもかなりの枚数蒐集しました。
安いうえ、「え、こんなのも出してたの?」という驚きもあったりして愉しいです。
音質の期待値は低いですが、toplankはよい方ですね。
東芝のエンゼルレコードのセンターレーベル(特に赤盤)は美しくて大好きです。
どこの誰が操作しているのか、最近ペッパーのミーツザリズムセクションやヘレンメリルのウィズブラウニーなどが諭吉超えでオークション取引され、わかってないなぁ、800円で買うから愉しいのにと思っていた矢先の本記事でした。

今後も応援しております。
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Unknown (ルネ)
2019-10-26 14:25:02
altomanさん、こんにちは。
何と、諭吉越えですか・・・オークションは恐ろしいですね。
ペラジャケは作りが丁寧な感じがいいなと思います。人気があるのがよくわかりますね。
Angel赤盤も見かけるたびに、おっ!と手が止まります。
当時は海外のカタログを番号順に何でも出していたのかもしれません、珍しいタイトルのものがあって確かに驚くことがあります。
いずれにせよ、安く買ってナンボ、の世界かと。このトミフラも900円でした。
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初めまして (tempo_collecter)
2019-10-27 17:43:50
私、約30年ほどJAZZオリジナル盤を収集しており随分と散財してきましたが2年ほど前にペラジャケの素晴らしさを思いしり見つけたら購入することにしています。今まで購入した中では特にWALZ FOR DEBBYとKELLY BLUEが特に良かったです。2枚ともラベルはオランダFONTANAと同じでオリジナルと比較しても音質は遜色なかったです。
なので自分の価値観で大枚をはたく気がない盤に
関しては日本初出のペラジャケで済ましています。
QUIET KENNY は10年ほど前にオリジナル盤
を購入しましたが音質が期待したほどではなかったので他盤購入の軍資金とすべく売ってしまいました。その後何回かオリジナル盤購入の機会がありましたが更に高額になってしまったのと音質にあまり良い印象が無かったので購入至っていません。最近、この盤の日本初出のペラジャケ(モノラル)を購入しましたが、ご紹介されているOVERSEASと同じTOPRANKレーベルで安価だったせいもあるのか音質にもさほど不満はなく楽しんでいます。オリジナル盤の音はもう忘れてしまったので比べるべくもありませんが、QUIET KENNYはもうこのペラジャケで良いかなと思っています。
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はじめまして。 (ルネ)
2019-10-27 20:05:38
tempo_collecterさん、はじめまして。コメント下さり、ありがとうございます。
Quiet Kenny、まったく同感です。ダメですね、オリジナル盤は。それに、内容そのものがつまらなくないですか?
私もオリジナルはさっさと処分して、今はフツーにビクター盤で聴いています。これで十分です。
苦労して買われた方に申し訳ないので大きな声では言えませんが、Quiet Kennyとブルーノートのカフェ・ボヘミアは、内容✕、音質✕の駄盤ツー・トップだと思います。
Waltz For Debbyペラジャケはうちにもあります。Fontana盤は聴いたことがないですが、こういう音なんですね。
私もオリジナルを買う価値を感じないものは、国内盤かOJCで十分です。メリハリをつけて聴くのが1番いいですね。
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Unknown (kabakn)
2019-11-15 16:46:51
本日DU御茶ノ水でゲットしました。
いつも役に立つ情報ありがとうございます。
ペラジャケ、以前たくさん集めました。トップランクは
エベレストのジョージョーンズがすごく良くて気になってました。ケニードーハムはイマイチでしたが、宝探しぽくて、楽しいですね。この頃は真空管アンプでカッティングと聞いたことあります。
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Unknown (ルネ)
2019-11-15 20:02:01
ゲット、おめでとうございます。と言っても、よく見かける盤ですよね。
私自身は、元々トップランクは音が良くない印象がずっとあったので、手を出して来なかったんです。
ただ、このオーヴァーシーズは悪くないな、と思いました。
ケニードーハムは、トップランクのモノラルよりもビクターのステレオプレスの方が音場感が良いと思います。
Quiet Kennyのオリジナルマスターはステレオ録音だったんじゃないかなあと思ったりします。
ペラジャケにも何世代かのプレスがあるようなので、意外と奥が深いかもしれませんよ。
まだトランジスタが商用化して日が浅い頃だったので、真空管だったのかもしれませんね。
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