週半ばに用事があって渋谷に行ったついでに、新規オープンで話題になっている HMV Record Shop に行ってみました。
中古レコード業界に参入ということで、おいおい、マジかよ、と思いましたが、開店初日は長い行列ができたとか。
別に何かを期待していたわけでもないので、財布にお金を補充することもなく、フラリと立ち寄りました。
十分な広さのフロアの1FはRock、J-Popや7inchやなどで、お目当てのJazzは2Fです。 壁は打ちっぱなしのコンクリートだったりして、
意外と殺風景だな、と思いながら階段を上がります。 このフロアは、Soul、Club、Reggae、Jazz、Fusionなどです。
案の定、こんな感じです。 Jazzのレコードは3列、CDは棚2列のみ。 たぶん、ジャンルとしては一番量が少ないんじゃないかと思います。
置いてあるのは再発盤や国内盤のみで、1~3千円台のものばかり。 どれもジャケットなんかはかなり痛んで汚いです。 確かに海外から
買い付けてきました感が漂っています。 オリジナル盤は1枚だけフェイスで飾られていましたが、英国Fontanaのピアノトリオ(ジャケットは
よく見るのですが、興味がないのでよく知りません)で、17,000円。 CDは定番の安いものばかり。
他のジャンルのレコード事情には残念ながら疎いのでどういうレベルなのかさっぱりわかりませんが、Soulのレコードは比較的量もあって、
値段も5~6千円台のものが結構ありました。 クラブDJのXXさんのコレクションコーナー、なんてのもあって、土地柄を反映したディスプレイが
目立ちます。
開店してまだ1週間なので棚だしはまだまだこれからなんでしょうが、少なくともJazzに関しては一番肩身が狭いような感じで、私のような偏屈な
マニアは場違いな感じでした。 こういう総合ジャンルを扱うお店に来ると、Jazzという音楽の相対的な位置づけがよくわかります。
しかし、HMVさんは今後どうやってこの事業を展開して行くんでしょうか。 ブックオフやレコファンのような路線でいくのか、はたまたDUのような
路線なのか、現時点では私にはよく見えませんでした。 業界最大手の1つで由緒正しい世界的な歴史をもつ超名門レーベルが果たしてこういう
ニッチな分野で成功できるかどうかは当然疑問です。 プライドを捨てて、泥臭い中古屋に本当になれるのでしょうか。 大企業なので、当然
財務諸表が最優先となるはずで、事業方針がすぐにブレてしまいそうです。 どこまで徹することができるのか、今はみんなが静観の構えなんでしょう。
でも、そういう大人の事情は別として、東急ハンズの向い側ということで、昔この隣にあったタワーレコードを思い出しました。 私はあの店舗の
雰囲気が好きで、よく通ってはロックの輸入盤とかを買っていました。 懐かしいですね。 だから、個人的には長続きして欲しいです。
今の私の価値観では買うものがなくても、この場所にこういうお店があるということ自体が嬉しいですからね。
などと呑気なことを考えながら、今週も少しつまみました。 まずは、Jazz Tokyoから。
■ Hod O'Brien Quartet featuring Ted Brown / I Hear A Rhapsody ( Blue Jack BJJR029 )
2テナーの新作が良かったので、テッド・ブラウンが加わったワンホーンということで購入。 このシリーズはかなり貴重な未発表の放送音源を
出してくれる優良レーベルで音もいいのですが、これは少し音質が粗いです。 それでも、テッドのテナーはとてもいいです。 この独特の音が
クセになるし、なにより上手いテナーです。 ただちょっとピアノが耳障りです。 この人がリーダーなので演奏時間の割り当てが一番長いのですが、
とにかく何の陰影もないのっぺりと平面的なピアノを長々と弾いてくれるのには辟易です。 でも、テッドの音盤は数が少ないのでこれは有り難い。
■ Rosario Giuliani / Connotazione Blue ( Philology W144.2 )
DUさんがブログでよく褒めてる音盤ですが、うーん、平凡な気がします。 イタリアの若いアルト奏者のワンホーンですが、確かに随所で
フィル・ウッズを思わせるのですが、音楽自体はあまりパッとしません。 流れが悪いし、纏まりにも欠けます。 バックのピアノトリオが
違うメンツならもっといい演奏になったような気がします。 残念。
次は、新宿ジャズ館です。
■ Sergio Wagner-Alan Zimmerman Sexteto / Backstage Sally ( Rivorecords RR-06 )
アルゼンチンの若手による3管セクステットで、ショーター、ドーハム、ピアソンらの作った楽曲を取り上げた現代のハードバップ。
明らかにジャズ・メッセンジャーズを意識した演奏ですが、アメリカのジャズよりもスッキリとしたムードです。 演奏は上手くて纏まりも良く、
スピード感もあってダレません。 憧れのアメリカのジャズを演る喜びに溢れた演奏で、好感をもって聴くことができます。
若いって、いいですね。
■ Les Arbuckle / No More No Les ( Audioquest Music AQ-CD1019 )
今週一番の当たりはこれでした。 何者かさっぱりわかりませんが、ケニー・バロンやセシル・マクビーがバックを務めるテナーのワンホーン、
ということで聴いてみると、これが太くしっかりしたテナーの音でガツンとやられました。 バックのトリオも抜群です。 録音もいいし、
楽曲もいいし、けなすところがひとつもありません。 テナーのいいジャズを聴きたくなったら、すぐにこれをお勧めしたい名盤。