廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ジャズへの敬意

2020年04月15日 | Jazz LP (70年代)

Buddy Tate Meets Dollar Brand  ( 米 Chiaroscuro CR-165 )


アート・ペッパーの "ミーツ・ザ・リズム・セクション" と同じ構造を取ったアルバムで、当時の第一線で活躍していたピアノ以下のメンバーが、分野の
違うサックス奏者を迎えて、その音楽性に合わせて録音した傑作。ペッパーの方はベテラン3人が若いアルトを大きく支えたが、こちらは若い3人が
老齢のサックスの後をついていく逆の形になっている。

ダラー・ブランドらがバディ・テイトの一挙手一投足を常に注意深く見ながら、彼の音楽に懸命に合わせて演奏している様子が手に取るようにわかる。
大先輩に無理強いをするのではなく、あくまで彼のスタイルに自分達を溶け込ませていく姿勢が素晴らしいし、これが非常にうまくいっている。
このアルバムのいいところは、4人が懐古調の演奏にならず、あくまで1977年当時の感性でメインストリームのジャズを演奏できているところだ。
古いタイプのジャズを現代の感覚できちんと演奏することで、ジャズという音楽へ敬意を表したのではないだろうか。

バディ・テイトはアート・テイタムと共演したベン・ウェブスターのようなゆったりとした大らかな演奏に終始しており、そういう演奏をすることを
可能にした3人のリズム・セクションは立派である。ピアノは多くを語らず、立場をわきまえた演奏をしており、テナーにスポットライトがあたる
ようにしている。そういう心遣いに溢れているのがひしひしとよくわかる。セシル・マクビーのベースも期待通りの粒立ちのいい音で音楽を支えて
おり、音楽が活き活きとしている。

収録されたスタンダードがディープな情感溢れるバラード演奏となっていて、これが強烈な印象を残す。テイトにはバラード・プレイヤーの印象は
ないけれど、ベテランの風格漂う貫禄の演奏をしている。

そして、何よりこのアルバムを名盤に押し上げているのが音質の良さだ。このレーベルのことはよく知らないけれど、ビックリさせられるような
高音質で、とても77年制作のアルバムだとは思えない。楽器の音が生々しくクリアで、残響もうまく捉えられていて、とにかく驚かされる。


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