廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

旅への憧れ

2015年05月31日 | Jazz LP

Gerald Wiggins / Around The World In 80 Days  ( Specialty SP 2101 )


もう何年も長旅に出ていません。 若い頃は身軽な格好でいろんなところへ行きましたが、年を取るといろんな物事が見えてくるようになって、
旅先への興味が薄れてしまいます。 でも、今はもう仕事は若い人に任せているので、気忙しい日々も過去のものとなりつつあります。
まだまだ現実味はないにしても、それでもぼんやりと引退後のことを自然と考えるようにもなってきました。 そんな中でこのアルバムを聴くと、
久しく忘れていた旅への憧れのようなものがまた蘇ってきたりします。

ヴィクター・ヤングは最も好きな作曲家の1人で、この人の作った曲が音盤の中に入っていると嬉しくなりますが、このアルバムは全曲がこの人の曲で
固められているという、私には宝箱のようなアルバムです。 映画「80日間世界一周」のサントラをジェラルド・ウィギンスが見事に演奏しています。

映画の中ではうっとりと夢見るように演奏されたこの曲を、軽快なアップテンポでこれ以上はないほどスイングさせています。 ベースはブルーベック
カルテットのユージーン・ライト、ドラムはアート・テイタムとベン・ウェブスターのVerve録音などに参加したビル・ダグラスで、この3人の一体感は
ハンパない凄さです。 羽のように軽く、一糸乱れることなく進んでいく様は圧巻。 最高のピアノトリオの1つだと思います。 

現代のピアノトリオはどうもあまり聴く気にはなれないのですが、こういう古い時代のものは何の不満もなく聴けるものが多いです。 稀少且つ高額で
知られる "Dizzy Atmosphere" を生んだ Specialty というマイナーレーベルにも関わらず、2千円も出せばお釣りが返ってくるような安レコですが、
内容は本当に素晴らしいです。 



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今週の成果~やはり実際に聴くしかない

2015年05月30日 | Jazz CD
もう上着を脱がなきゃいけないくらい暑い毎日でしたが、ぼちぼちつまみました。





■ Per Goldschmidt Quartet / The Frame  ( Timeless CD SJP290 )

デンマークのマルチリード奏者のペル・ゴールドシュミットの、これはバリトンだけで臨んだワンホーン作で1990年録音です。 
ピアノはニルス・ラン・ドーキー、なんだか久し振りにこの名前を見ました。

以前 "Loneliness And Other Ballads" というスタンダード集を聴きましたがこれがつまらなくてがっかりだったので、こちらは大丈夫だろうかと
いささか迷いましたが、私はこのオランダのタイムレスというレーベルにはいい印象を持っているので、それを信じて買ってみました。

全曲ペルさんのオリジナルですが、これが意外にもなかなか聴かせる楽曲揃いです。 バリトンもペッパー・アダムス系の硬質な音ですが、あそこまで
強くはなくもう少し穏やかな質感です。 そしてニルスのピアノが音数を減らした大人のタッチになっているのが見事です。 昔聴いたアルバムは
なんだかもっとチャラかったような印象があるのですが、こういう弾き方もできるんだなあ、とちょっと見直しました。

きちんと現代の良質なハードバップになっており、非常にレベルの高い演奏で4人の纏まりもよく、ダレる箇所もまったくない見事な作品だと思います。
北欧らしい雰囲気も感じることができるし、何より非常に音質のいい音盤なので聴いていて気持ちがいいです。 当たりでした。
やはり、実際に聴いてみなければわからないものです。


■ Joseph Warner Quartet / Mood Pieces ( Jardis JRCD 9921 )

またJardisレーベルのCDに出くわしました。 ピアノレスのツインギターだし、私の好きなブロニスラフ・ケイパーの "Invitation" やストレイホーンの
"Isfahan"が入っているので、またがっかりするかもと思いながらも買ってみました。

スタジオライヴ形式での録音で、曲によっては遠くで小さく拍手が聴こえます。 そのせいかとても臨場感のある生々しい録音です。
ベースやドラムも活気のある演奏で、音楽全体がとても生き生きしています。 ベース奏者名義のアルバムですが、演奏はどう聴いても
Helmut Kagerer と Martin Scales の2人のギターが主役です。 これが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

Helmut Kagerer は Attila Zoller の弟子だったそうで、ギブソンのフルアコから深みのある音を引き出していて、とてもいい。

これまで空振り続きだったこのレーベルで、やっといいのに出会いました。 やはり、先入観に惑わされず、自分で聴いてみるしかないんだな、
と思います。 軟弱なジャケットに騙されてしまいそうですが、これはとても硬派で男性的な4ビートジャズ。 素晴らしい作品です。



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苦く複雑な後味

2015年05月24日 | Jazz LP (Verve)

Charlie Parker / Bird And Diz  ( Mercury MG C-512 )


ノーマン・グランツが1950年にお膳立てした同窓会セッションですが、これがどうにもつまらない。 

要因は色々ありますが、まずガレスピーの演奏の退屈さには心底辟易させられます。 パーカーの相棒だったお蔭で誰も表立っては言わないけれど、
この人のトランペット演奏に存在意義なんてあるんだろうか、といつも思います。 パーカーがこの人と組んだのは、42年当時に自分が音楽に求めた
スピードについてこられるトランぺッターが他にいなかったことや、自分が思いついたフレーズをガレスピーが採譜してくれたからです。

この人は人柄が良くて、パーカーの身の回りの細々した世話を焼いてくれたし、自分には特に才能があるわけではなかったことを自覚していて、
事あるごとにパーカーを持ち上げてみせた。 パーカーは仲間を大事にする人だったので、彼との友情は最後まで続きました。 そのお蔭でこの
セッションも実現しましたが、サヴォイ時代よりもトランぺットの腕前は格段に上がったけど演奏の音楽的な感動のなさは更に際立ってしまっています。

次に、ここではモンクがピアノを弾いていますが、これがモンクらしからぬ普通のバップピアノに終始していること。 相手が誰であろうが、それが
いつであろうが、頑なに我が道を行った人がさすがにパーカーにだけは遠慮しています。 そして、これが非常に凡庸で冴えない演奏です。 
ピアノの音の粒立ちの鋭さは素晴らしいけれど、これをブラインドで聴いてモンクだとわかる人はおそらくいないはずです。

そういう中でパーカーの演奏だけが唯一屹立していますが、サヴォイセッションの曲では6~7割をパーカーが演奏していたのがここでは2~3割しか
聴けず、これがつまらなさの一番の原因です。 アルトの音やフレーズも間延びしていて、サヴォイの時の前乗りではなく後乗りに変わってしまっています。

この時期、パーカーの見た目は10歳老けて見えたそうだし、お金を得るために仕事は断らずに何でも引き受けていたようですから、もう何でもよかった
んでしょう。 当時フランスに移住していたケニー・クラークから「アメリカにいるのはゆっくりと自殺するようなものだ」と欧州に来るよう強く勧められて
いたにも関わらず、アメリカに残り、まもなく短い生涯を終えてしまうわけですが、あの時本当に欧州に行ってしまっていればレコードは残らなかった
でしょうから、現代の私たちには苦く複雑な想いがします。



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今週の成果

2015年05月23日 | Jazz CD
今週は新着の棚だしも多く、聴いてみたいなと思うものがいろいろありましたが、いかんせんお給料日前ということもあってお小遣いの残りも少なく、
あまり手が出せませんでした。 タイミングが悪いですが、こればかりはしかたがない。 





■ Lorenzo Petrocca Trio / On A Clear Day  ( Jardis JRCD 20346 )

Jardisは独のジャズ・ギターを専門にしているレーベルで、厳選されたカタログの内容と上質な音楽を提供するということで評判もよく、ラインナップの
中には廃盤になっているものが多い。 だから中古で出てくるといいお値段になりますが、ギターアルバムはもともと数が少ないので一応手にします。
これは全曲古き良き時代のスタンダードで、ピアノレスのギタートリオです。

そういう全体的なフォーマットは申し分ないのですが、どうもジャズのいい雰囲気が希薄です。 3人とも技術的に成熟しておらず、演奏がどことなく
ぎこちないし、纏まりもあまりいいとは言えない。 無名の演奏家を取り上げるというポリシーは立派ですが、これはこのレーベル全体に共通する弱点
のような気がします。 ギターに特化するなど、スコープはバッチリなだけに残念です。 まあ、こういう無機質で上品と言えば上品な雰囲気が
好きな人にはいいのかもしれませんが、私には物足りない内容でした。


■ Jimmy McGriff / City Lights  ( M.O.E.Records(日本ポリスター) PSCW-1147 )

1980~81年に多管編成でスタジオ録音されたオルガンジャズで、RVGがエンジニアと務めています。

ライナーノーツではソウルジャズという言葉で語られていますが、今はレア・グルーヴと言われる内容です。 特に気負ったところもなく、全編ご機嫌な
音楽となっています。 とにかく軽いサウンドで、陽気で、無反省で、こんなに能天気でいいのか?と思わず疑ってしまうほどハッピー。

ジミー・スミスのように圧倒的に弾き倒すというのとは真逆のスタイルで、弾き過ぎず弾かな過ぎずのいい塩梅のプレイです。 音も大き過ぎず小さ過ぎず、
プレイにもこれといった特徴もなく、でも十分にソウルフルで、もうこれしかないという感じです。

興味のない人にはただのBGMにしか思えないかもしれませんが、こういう音楽も自分のライブラリーの中には必要です。 
傑作や大作ばかりでは息が詰まってしまいます。

レア・グルーヴの世界には疎いので、この人がどういう評価をされているのかわかりませんが、これからも気を付けて探してみようと思います。
RVG録音なのに特に音がいいわけでもないし、お値段もワンコインでした。



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唯一の作品という重み

2015年05月17日 | Jazz LP (Verve)

Billy Bauer / Plectrist  ( Norgran MG N-1082 )


残されたレコードが少ない場合、そのミュージシャンは私生活に問題を抱えていることが多いものですが、この人の場合はどうもそういうトラブルは
なかったようだし、なぜアルバムがこれしかつくられなかったのかがよくわかりません。 Ad Libレーベルに10inchがありますが、これはミュージック・
マイナス・ワンのレコードなのでこの人の作品として語るには適当ではない。

活動初期にトリスターノ一派に加わったので、一般的にはリー・コニッツのレコードでの尖った演奏のイメージが刷り込まれてしまっているかも
しれませんが、ここで聴かれる演奏にはあの面影はまったくなく、別人のように穏やかで上品で落ち着いた内容に逆に面喰ってしまいます。
コードワークでメロディーを展開する曲なんかはジョニー・スミスを思わせるような優雅さをみせますが、難しい技を簡単そうにあちこちに混ぜながら
なめらかに弾いていくスタイルはジョー・パスに近いかな、と思います。 その曲に必要な分だけのテクニックを棚から取り出してくる、そういう感じです。

ピアノトリオをバックにしたカルテットですが、このバックのピアノトリオが非常に上質な演奏を聴かせます。 バウアーのギターを邪魔しないよう
終始控えめで静かな演奏をしてくれるので、ギターの演奏が前面に押し出されています。 このアルバムの音楽的な成功はこのバックのおかげです。

自身が作曲した4曲がスタンダードに混ざっていますが、これらもきれいなメロディーをもった佳曲で、そういう才能もあった。 注意してよく見ると
他のいろんなレコードでも伴奏の一員としてその名前をみることができるのに気が付きますが、何と言っても一番目を引くのはパーカーの最後のスタジオ
セッションに参加していることです。 そんな風に数多くのレコーディングを支えながら、ギター・スクールを開校して多くの後進も育てて、2005年に
90年の生涯を終えました。 控えめな人柄だったことが伺えます。

ノーグランらしい枯れた趣きのある作風ですが、演奏自体はみずみずしく、とても上品な演奏に終始する本当に素晴らしい内容です。 
もっと広く認知されていいレコードだと思うし、残されたリーダー作が唯一これだけだということがこの盤に特別な重みを与えているように思えます。



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最近の成果

2015年05月16日 | Jazz CD
今週は暇な時間が多かったのでのんびりと漁ってみました。





■ Phil Burlin & The Shape Of Things / Urban Undertow  ( Creative Digital Products CDP-41593 )

GWの廃盤セールの残滓の中からつまみました。 「ジョージ・コリガン参加の現代のハードバップ、痺れます!」とのコメントがついて、2,900円。 
痺れるんなら買わなきゃね、ということで聴いてみましたが、これが痺れません。

全曲オリジナルで、演奏はみんな上手く、グループとしての纏まりもよく、一聴してその優秀さはすぐわかります。 気合いも十分入っています。
でも、楽曲に魅力がない。 これに尽きます。 ちょっと、びっくりです。

ジャズは一応は音楽なんですから、楽曲に魅力(メロディーなり、ハーモニーなり)が必要です。 でも、そういうものが欠けています。
こういう時は何曲かスタンダードを混ぜとくといいのではと思いますが、みんなそんなのはイヤだったんでしょう。

演奏はいいと思うので、違うプログラムでもう1度聴いてみたいです。 でも、これは1992年の作品で、これ以降はアルバムが出ていなさそうなので、
叶わぬ願いなのかもしれません。


■ Emily Remler / East To Wes  ( Concord CCD-4356 )

「人気作」とのことなので見てみると、ピアノがハンク・ジョーンズだし、クロード・ソーンヒルの "Snoefall" が入っていたり、と好きなキーワードが
ザクザクだったので買ってみましたが、これが大当たり。 傑作だと思います。

調べてみると好評価の記事も多く、人気のある人だということが判りました。 ジム・ホールも褒めていたそうで、なるほどなあと思います。
しかし、ドラッグの過剰摂取で若くして亡くなったそうで、そういうのは今どき珍しい。 

ブラウニーの "Daahoud" で始まりますが、これがスピード感があって素晴らしい。 ギターも音に濁りが無く、テクニックも余裕があり、
とても安定しています。 フレーズも非常にセンスがよく、ロックをよく聴いていたというエピソードからもわかるように、ポップスの要素も
いい感じでブレンドされています。 懐古趣味的なところはなく、新鮮な感覚で4ビートをやっています。 タイトルからもわかるように、
ウェスへの敬意に溢れていて、全編に亘って軽快に弾むようなギターを聴くことができます。

右手のピッキングがしっかりと強いおかげで音の歯切れの良さは抜群で、まるでお手本のようなギターサウンドです。 ギター小僧には
参考になるプレイがザクザクですが、そういう楽器演奏の要素を大きく超えて音楽を聴かせる内容となっていて、”Softly As In A Morning Sunrise"
の憂いに満ちた雰囲気にも耳を奪われます。

録音も趣味の良い残響が効いたもので、オーディオ的な快楽も味わえます。 私には満点の内容でした。



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Ascension への誤解と偏見を解く

2015年05月10日 | Jazz LP (Impuise!)

John Coltrane / Ascension  ( Impulse A-95 )


私はコルトレーンのこのアセンションが大好きです。 コルトレーンの数あるアルバムの中でも屈指の傑作だと思いますが、世間一般では逆に
完全に色物扱いになっています。後期コルトレーンについて語る時、ほとんどの人が何となく居心地悪そうに気まずそうになるのは、
その演奏のたくましさや揺るぎのなさには圧倒的なものを感じながらも、あまりに個人的過ぎるその音楽にどう接すればいいのかが
わからなくなるからではないかと思います。 

特にこのアルバムは、たいていの人がジャズを聴き始めた時に手にする「名盤100選」で「コルトレーンがフリージャズ宣言をしたアルバム」として
紹介されていて、その刷り込みで一番敬遠されることになってしまっているわけです。ある程度時間が経ってから恐る恐る手にしても、先の刷り込み
が邪魔をして純粋に音楽に接することができず、こりゃダメだ、と投げ出してしまう。

確かにそれまでの曖昧な感じから脱してこのアルバムから明確にフリーを取り入れるようになっていて、史実としては何も間違ってはいないけど、
このアルバムの素晴らしさは何も説明できていない。人に勧める以上は何か理由があるはずで、何よりもまずそれを先に言わなければいけません。
別にこのアルバムがジャズ史上初めてのフリージャズというわけじゃないんだから、特にそれが重要なこととも思えません。

このアルバムを聴いて「これは凄い!」と感動するのは、コルトレーンが初めてフリーをやったからではなく、ここでの演奏がもう圧倒的に
レベルが高く、凄まじいドライヴ感で疾走するからです。もう、純粋に演奏力の凄まじさに感動させられるのです。

7本の管楽器が織りなす分厚い重奏サウンドの快楽。 ビッグバンドが好きな人なら、この重層的なサウンドの魅力にすぐ気が付くはず。
集まったミュージシャンたちはみな一流の管楽器奏者なので、楽器の音が大きくて綺麗です。これこそがジャズの醍醐味です。

そして2人のベース奏者が轟音を鳴らしながら進むウィーキングベースと、もうこれ以上は望めないほど暴れるエルヴィンのドラムとシンバル。
この3人の創り出すリズムのドライヴ感は本当に凄まじく、音楽全体が大きく大きくグイグイと前に進んでいくのです。楽曲の後半からは、
レコーディングスタジオ内のあちらこちらから興奮したメンバーたちの掛け声や叫び声が出始めます。この臨場感。

フリーといっても無軌道なハチャメチャ感はなく、きちんと抑制すらされています。だから、これを殊更に「フリー」で片付けてしまう言い草に
違和感を覚えるのです。 端的に言ってしまうと、これは最高にドライヴして疾走するビッグバンドジャズ。そういう聴き方でいいんだと思います。

みんな若くて、生真面目で、大事に楽器を演奏しています。変な話ですが、誰もが楽しそうで、そしてすごく心がこもった演奏になっているのです。
こんなのついて行けないよ、と文句や悪態をつかれながらもコルトレーンの音楽がいつまでも残り続けているのは、それが理由なんだと思います。 



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今週の成果

2015年05月09日 | Jazz CD
短い連休が終わりました。 あっという間でしたが、いい息抜きになったと思います。 中古漁りのほうも、ボチボチと再開です。





■ Steve Khan / Evidennce  ( Polydor POCJ-1892 )

廃盤、とのことで、2,500円といいお値段でしたが、スティーヴ・カーンはマイ・フェイヴァリットなので当然買います。
モンク、ショーター、ザヴィヌル、モーガンなどのオリジナル曲をギターだけの多重録音で演奏した佳作。 メインはアコギです。

冒頭のショーターの "Infant Eyes" が哀感たっぷりで、これが最高の出来。 この曲の物悲しいメロディーが見事に表現されています。
また、モーガンの "Melancholee" もシンプルながらも切ないバラードで、これも素晴らしい。 アコギはやっぱりこういう曲を上手く響かせます。

もちろん、このアルバムの目玉は後半のモンク・メドレーです。 ただ、モンクの音楽が持つ独特の雰囲気はあまりうまく表現されていません。
尤も、別に悪い演奏ということではなく、想像していたよりももっとゆったりと穏やかで爽やかな仕上がりになっています。 

ラリー・カールトンにもアコギによるアルバムがありますが、こちらはもっとジャズに寄った演奏で、私はこちらのほうがずっと好きです。
録音も素晴らしく、部屋で流すととても気持ちいいです。


■ Art Ensemble Of Chicago / Les Stances A Sophie  ( Universal Sound US CD 11 )

映画のサントラだということは知っていましたが、聴くのは初めてです。

さすがにサントラだけあって、どれも楽曲としての纏まりがよく、非常に聴きやすい。 1曲目の "Theme De Yoyo" は名曲です。
全体にブラック・ミュージックの濃厚な匂いが立ち込めますが、それと同時にある種の格調高さも感じます。 これがフランスで受け入れられた
要因だったんだろうと思います。 

やはりこの団体の音楽はフリー・ジャズではないと思います。 当初は他に適当な入れ物が見つからないから取り敢えずそこに入れていただけのはずが、
いつの間にかフリーという文脈で語られるようになってしまったのは怠慢以外の何物でもない。 

グループ名が示すように集団としてのアンサンブルを志向していて、それを前提にした音楽をするという一線は必ず守っている。 様々な種類の
音楽的要素を縦横無尽に取り込み、不協和音と無調の中に時々現れる美しい旋律。 泥臭いソウルミュージックにならなかったのは、そういうものを
取り入れるだけの柔軟さと知性のおかげだったのでしょう。

以前の音楽ビジネスはロック、ジャズ、クラシックなどの大雑把な分類認識しかできず、実際の音楽の進化のスピードにはまったくついていけて
いませんでしたが、現代はそうではありません。 この音盤もクラブDJらが再評価して、そういうところに集う若者たちはこれを聴いて踊ったり
しているらしい。 まあ、単純と言えば単純ですが、古い慣習に囚われず、いいものをありのまま受け入れられるというのは素晴らしいことです。

彼らのレコードもジャズ館などに置くよりはクラブミュージック館やレア・グルーヴ館のほうがしっくりくるような気がします。 
そろそろ見直されて然るべきかもしれません




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GW のお買い物、肩身の狭いフリーについて

2015年05月04日 | Jazz CD



この連休の成果です。 誰かがまとめて処分したようで、これ幸いとその中からESPを中心に半分ほどを拾ってきました。
フリー関連は、レコードではなくCDで聴いていくことにしています。 理由は、以下の通り。


a. フリーのレコードはどれがオリジナルなのかがよくわからない。 自主制作が多いし、ジャケットなんて手書きのものもある。

b. オリジナルの枚数がとにかく少ない。 主流派の中にも初版プレス枚数が少なかったものはあるけど、フリーに比べればかわいいもの。
  もともと売れない音楽なのだから、全ての初版の枚数が例外なく少ない。

c. だから、値段が高価で手が出せない。 こんなところにまで回せるお金は当然ないし、そもそもこの音楽にそこまでの思い入れもない。

d. 家族からの評判が悪く、なかなかスピーカーから音を出して聴けない。 私の趣味にはかなり寛容な相方もさすがに顔をしかめるし、
  ネコに至ってはイカ耳になって警戒しまくり。 最後には部屋から走って逃げ出す始末。


ヘッドフォンで聴くんなら大枚叩く意味なんてないし、60年代以降の録音がメインなのでCDでもまともな音質で聴けるものがほとんどです。
まだ聴いていないので、感想などはまた後日。



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Muse時代の傑作群 その3

2015年05月02日 | Jazz LP (70年代)

Pat Martino / Conciousness  ( Muse MR 5039 )


名曲 "Impressions" で幕を開けるこのアルバムは、音楽的な完成度は先の2枚に一歩譲りますが、演奏の興奮度では上回る内容です。

いろんな要素がミックスされている一筋縄ではいかないアルバムで、まるでジェフ・ベックの古いアルバムを聴いているかのような、
ソウルのレコードを聴いているような、グラント・グリーンのアルバムを聴いているような、そういういろんな表情を見せる内容で、
決して単なるギター・アルバムに終わっていないところにこの人の才能の深みを感じます。

"Along Came Betty" がラテン風にアレンジされていますが、この曲がこんなに良い曲だったのか、ということを初めて知りました。
そんな風に、眠っていた音楽の魅力を掘り起こす作業もされています。 エディー・グリーンのエレピとタイロン・ブラウンのベースの
うねるように疾走するリズムラインが圧倒的に素晴らしい。 

70年代のジャズは、ソウルやファンクと絡み合っていて独特の雰囲気を発しています。 現にこのアルバムが置いてあったのはジャズ館ではなく
クラブ・ミュージック・ショップで、先日初めて足を踏み入れたのですが、完全に私だけ浮いていた。 レコード棚の仕切りもよく分かりません。
"DETROIT" って、何なんでしょう? そんなジャンルは初めて知りました。 他の仕切りに書かれたジャンルもよくわかりません。

「あのう、パット・マルティーノのレコードって、どこにあります? ジャズ・ギターなんですけど」
「あー、ジャズならこの近くにジャズ館というのがあって・・・・」
「いや、在庫検索で調べたらここに在庫があるっていうから来たんですけど」

そうするとイケメンのお兄さんは "SOUL" の仕切りを調べてくれて、これを抜いてくれました。 面倒な客で、ごめんね。



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