廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

70年代に向けた萌芽

2024年07月06日 | Jazz LP (Prestige)

Herbie Mann, Bobby Jaspar / Flute Souffle  ( 米 Prestige Records PRLP 7101 )


プレスティッジと言えばマイルスだったりロリンズだったりコルトレーンのイメージがあり、演奏者のプレイそのものに集中して聴くことが多い
けれど、ハービー・マンもボビー・ジャスパーもフルートとテナーの両刀使いで、どちらがどの演奏なのかよくわからないこともあり、演奏の個性を
愉しもうという聴き方をするとあまり面白くないということになって駄盤扱いされがちである。ところがこういうタイプのレコードは音楽自体を
味わおうと思って聴くとまったく違った感想が湧いてきて、認識が変わるものである。

冒頭の " Tel Aviv " はハービー・マンが作ったマイナー・キーの曲だが、これがとてもいい。ほの暗く、ゆったりと大きく揺れるような感覚。
テナーはおそらくボビー・ジャスパーだろうと思うが静かに枯れた演奏で味わい深く、トミー・フラナガンのピアノが端正で穏やかで素晴らしい。
プレスティッジらしい、憂いに満ちた曲想に魅了される。この1曲で、このアルバムは名盤確定である。

B面冒頭の " Let's March" も同様にハービー・マン作だが、これもマイナー・キーの佳曲。ここでもフラナガンのピアノがエレガントで素晴らしい。
ウェンデル・マーシャルのベースがイン・テンポでよく弾んでおり、これが楽曲の良さを更に引き立ていて見事だ。

ハービー・マンは50年代からいろんなレーベルに録音があってレコードはたくさんあるけど、それらを聴いてもあまり面白くない。この人の真価が
発揮されるのは70年代に入って以降である。多作家で作品はものすごくたくさんあるので聴いていくのは大変だけど、素晴らしいものが結構あって
驚かされる。フルートという楽器はハード・バップという音楽形式には根本的に馴染まず、その良さを発揮することはなかったけど、音楽が多様化
する70年代以降になるとこの人の独特の音楽センスが花開いた感がある。このアルバムはその萌芽が感じられるところがある。



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