廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

短い記録で辿る足跡

2020年04月14日 | Jazz LP (EmArcy / Mercury)

John Williams / The John Williams Trio  ( 米 EmArcy MG 36061 )


若い頃に聴いてまったくいいとは思わなかった盤を今改めて聴き直すと、その良さがわかるようになっているものが結構出てくる。もちろんそれは
いいことなんだけど、それはまるで無限ループのようで、これじゃいつまでたってもレコード漁りの終着点が見えてこない。若い頃には若いなりの
聴き方をしていたんだろうし、オヤジにはオヤジ的聴き方があるのだろう。昔はこだわっていたポイントも今はどうでもいいと感じることも多く、
受け入れ方が寛容になったのは間違いないと思う。

このジョン・ウィリアムスのアルバムも、昔はつまらないピアノ・トリオの典型だと思っていた。当時は一聴してすぐに誰が弾いているかがわかる、
エスタブリッシュメントが好きだった。だから、こういうピアノは存在価値がないと思っていた。ところが、今頃になってよくよく聴き直して
みると、そうではないということがじわじわと身に染みてわかるようになっているのに気が付く。

お馴染みのスタンダードがズラリと並んだ構成だけど、それらのメロディーをすべて崩して、周到に回避して弾いている。当時はそれが気に入らな
かったんだな、ということがわかるようになる。ジャズのピアノトリオといえば、スタンダードをメロディアスに弾いてくれればそれが最上だと
思っていた。そういう単純な感性で聴いていたのだから、こういう一捻りした演奏に反応できるわけがない。

1956年頃にこういう演奏をやっていたというのは、かなり時代を先取りしている。この人なりによく考えて、真剣に取り組んでいたことがわかる。
このアルバムを聴いて、スタンダードを取り上げたピアノトリオのアルバムだという印象は残らない。こういう演奏をしたのは、当時参加していた
スタン・ゲッツのバンドでの経験が影響しているようだ。スタンダードの解釈と発展のさせ方がゲッツやブルックマイヤーら管楽器奏者の発想に
近いと思う。ゲッツのようにメロディーを再構築するところまではいっていないけれど、アプローチは同じだ。

残念なのは、この人の音楽の記録はここで途絶えてしまうこと。このアルバムではまだ完成途上だった音楽がどのような着地をしたか、の確認を
する術がない。何があったのかよくわからないけれど、アルバムが残っていない。この続きを聴いてみたかったと思う。

ちなみに、この人は映画音楽の大家のジョン・ウィリアムス( John Towner Williams, 1932年ニューヨーク生まれ)とは別人。こちらも若い頃ジャズ・
ピアノをやっていたから、アメリカ人ですら時々間違える。本件のジョンは John Thomas Williams で、1929年ヴァーモント生まれ。


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