世界変動展望

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和文誌や低インパクトファクター学術誌ばかりの論文発表研究者は無能の烙印を押され研究者生命を絶たれる?

2014-12-14 00:03:52 | 社会

[1]を読むと研究者の人事や予算獲得等がインパクトファクター至上主義ともいうべき成果主義になっていて研究者が捏造や改ざんに走りやすい現状があるという。研究機関が法人化され研究費中の競争的資金の割合が多くなってしまって競争主義の弊害がよく出ているようだ。競争的資金の審査は公正でなく、流行の研究ばかりが採択され、年度内など短期的に研究成果を出せないと非常にまずいという[1]。研究費獲得を目指して、どんな研究者もできる限りインパクトファクターの高い学術誌に掲載されることを目指し、それで十分な成果を出せないと予算の実質的な権限をもつ財務省([1]によると文科省等、研究機関を所管する省庁ですらないらしい)から役立たずと思われ、研究費が獲得できず実質的に研究者生命を絶たれてしまうという[1]。そのため研究者は成果が出ない時はデータを捏造、改ざんして研究発表する人が出てしまうのではないかと書かれていた[1]。

ネイチャー、サイエンス、セルといった超一流誌はインパクトファクターが30以上ある。掲載されるだけでも非常に難しい。こういう学術誌は例外で、分野によって違うもののインパクトファクターが3~5くらいのまあまあの水準の学術誌に掲載させたいと思う人が多いのではないか。インパクトファクターは分野によって違うが、リンク先のような評価をする人もいる。経済学ではリンク先のサイトによるとJournal of Economic Literature誌が6.92でトップ。だいたい4~7くらいだ。環境経済学のトップジャーナルのインパクトファクターを調べていないがリンク先によるとJournal of Environmental Economics and Managementなどがトップジャーナルのようだ。和文誌や日本の大学紀要は一つもない。

一番低いのはインパクトファクターが1以下の学術誌、和文誌や日本の大学紀要などのインパクトファクターがない又は1以下の学術誌[2]。[1]によるとこのような学術誌に掲載される論文は一般に審査が甘く、誰にも読まれず学術の進歩に何の貢献もしないカス論文で研究者の見かけの業績を飾るだけだという。こういう論文が大部分だから捏造論文が氾濫しても大して影響はないと[1]で述べられている。

話がそれるが、それはさすがに違うのではないかと思う。インパクトファクターは学術誌に対する評価の一つで掲載されている論文の評価とは別物で、[1]で指摘されているように論文が掲載された学術誌のインパクトファクターで論文を評価するのが適切でないと思う。読まれるかとは関係なく捏造や改ざんを行った研究は発表してはいけない。捏造、改ざんが発覚すると学術誌や所属機関、共同研究者の信用が落ちるし、責任著者は懲戒処分を受け、競争的資金の返還、共同研究者の競争的資金の一定期間不交付などの制裁が行われる[3]。「誰にも読まれていない研究発表だからいいじゃないですか。」という言い分けは全く通用しない。こんな言い分けを通用させてはいけない。考え方を改めないといつか非常に痛い目にあう。

話をもとに戻すと、全く査読付き論文を発表しないのは無論の事、和文誌、日本語の紀要や低インパクトファクターの学術誌ばかりに論文を発表する研究者は無能の烙印を押されてしまって研究者生命が絶たれるというプレッシャーが研究者を捏造、改ざんに走らせる要因になっているという[1]。私は現実に研究機関、省庁、学界などでどう評価されるのかわからないが、こういう研究者が無能で研究者生命を絶たれるというのは、本当か?と思う。というのも、研究はそんなに甘いものではなく論文を出すだけでもかなり大変な事だ。現実に和文誌や日本の大学紀要、低インパクトファクターの学術誌の論文掲載が主だという研究者はたくさんいる。もちろんカス論文ではなく、インパクトファクターが低い又はない学術誌に掲載された論文に価値がないわけではない

むしろ研究者生命を絶たなければならないのは捏造、改ざんなどの悪質な不正行為を行う者だ小保方晴子氏、井上明久氏、ディオバン事件のように都合のいい結果をでっちあげて発表するような非常に悪質な捏造、改ざんを行う者は研究者生命を絶たないといけないし、そこまでいかなくても捏造、改ざんをする研究者が共同研究者の中にいると[3]で述べたような制裁が行われる。小保方晴子氏は理研や共同研究者の信用を著しく下げたばかりか、非常に優秀な研究者である笹井芳樹氏が亡くなってしまい、理研CDBが解体され無関係の研究者まで不利益を受け理研は予算要求45%減となった。小保方晴子氏は例外中の例外としても研究不正を行ったり、それをごまかす研究者は排除しないと研究が危なくてできない。こういう人物と共同研究するのは私は無理だと思う。現実には不正行為者と知らないで共同研究している人たちはたくさんいるが、いつ爆弾が爆発して懲戒処分を受けたり、研究費停止等の不利益を受けるかわからない。上で述べたように「誰にも読まれてない研究発表だから」という言い分けは全く通用しないので、間違った考えを持っている人は直ちに考えを改め、不正行為を行った研究者をチームから排除したり更生させる努力をしないといけない。

参考
[1]杉春夫 「論文捏造はなぜ起きたのか?」 光文社新書 2014年9月20日発行
[2]インパクトファクターがつく和文誌もあるが1未満であることがほとんど。日本語論文を読まない人が多いのでインパクトファクターがつかない和文誌がたくさんある。
[3]不正行為に関与した者は2~10年、関与していなくても論文に責任を負う者は1~3年科研費が不交付



1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-12-14 06:34:44
二つ。

日本人なら落とされない、インパクトファクターは1~2点代のJapanese Journal of ○○○ 雑誌が殆どの研究者は多いです。
雑誌側から、論文掲載するから応募してくれ、と頼まれる事も多いです。論文のデキレースです。
勿論、マイナー雑誌で読むヒトが少ないからと、不正行為は許されません。


理研は研究室や職員を減らしたのでしょうか?自分の理解では、研究室は減らしておらず部署を移管しただけ、職員もクビになった人はいないと認識しているのですが?
雇用は、改革委員会がだした結論どおりに、確保されているのではないでしょうか。

責任を問われるべき研究者や組織の上層部が、互いの不正や不法行為をかばいあっている、と見えるのです。
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