世界変動展望

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0÷0=0と現在の学習書籍等は虚偽指導しているのか?

2013-12-09 23:51:59 | 物理学・数学

小学校3年生の算数問題集を読んで驚いた。

画像1 「数と計算 教科書ワーク - 小学校3年」(出版 株式会社 文理) p26、写し。[1]

大問1③と大問2⑨で「0÷0」という計算が載っている。この問題の正解はウェブ上になかったので実物を見た。それが下のもの。

画像2 「数と計算 教科書ワーク - 小学校3年」(出版 株式会社 文理) p26の答え [1]

驚いたことに、「0÷0」の答えは「0」と載っている。画像1の「たいせつ」や一番下の「ポイント」でも「0をどんな数でわっても、答えは0になります。」と書かれている。無論、この答えは虚偽。「たいせつ」や「ポイント」は正確には「0を0以外のどんな数でわっても、答えは0になります。」だ。数学の教育業者にとって0の除算が定義されていないのは常識で、なぜこのような虚偽を発表したのだろうか。数学の教育業者がこれを正しく理解できていないのは非常にまずい。割算とはどういうことか考えないで「0をどんな数でわっても、答えは0になります。」と機械的に覚えるから間違う。学問とはテストでいい点が取れればいいのではない。学問では考えていないのは致命的だ。このような虚偽指導は全く関心しない。非常に劣悪な指導である。

今更だが、0で割ることを解説する。

例えば「6÷3」は「3×a = 6 となる唯一の数aを求めよ。」という意味だ。「3×2 = 6」で2以外に「3×a= 6」となる数は存在しないから「6÷3 = 2」となる。

これと同様に考えると、「0÷0」は「0×a = 0 となる唯一の数aを求めよ。[5]」という意味だ。0にどんな数をかけても0になる。即ち、「0×a = 0」という等式はすべての数aについて成立する恒等式で唯一の数aは定まらない。従って「0÷0」の答えは「定義されていない」だ。「0×a = 0」がすべての数aで成立するので「0÷0」の答えを「任意の数」とする文献がある[6]。この答えを不定ともいう。しかし「0÷0=任意の数」は不合理だし([6])、後述するように割算の答えがただ一つの数に定まるの時のみ割算を定義しているので、厳密には「0÷0」の答えは定義されない[2][3][4]。

この話は割られる数が0の場合でそれ以外の数が割られる数なら、0にどんな数をかけても0になり、その数にできないから、「b÷0 (ただしb≠0)」の答えは「存在しない」となりそうだ[7]。不能ともいう。この場合も割算の答えがただ一つの数に定まらないので割算は定義されていない。厳密にはこれが答えだ[2][3]。

例えば「9÷0」の答えは0にどんな数aをかけても「0×a = 9」を実現できない。答えaが存在したとすると0×a=0ゆえに、「0=9」となり不合理。式自体が不合理といってよい。

現実の問題で考えれば次のようことだ。

例えば6÷3は「一人当たり3個りんごを持っている。りんごのない皿の上にりんごを6個置くには何人がりんごを置けばよいか。」ということだ。2人置けば皿の上のりんごは6個になるので答えは2。ゆえに6÷3=2だ。

同様に考えると、9÷0は「一人あたり0個りんごをもっている。つまり誰もりんごを持っていない。りんごのない皿の上にりんごを9個置くには何人がりんごを置けばよいか。」ということだ。誰もりんごを持っていないのだから、このようなことは不可能。割算の答が唯一の数に定まらない時は定義されていないので、答えは「割算が定義されていない。」となる。

wikipediaによると『整数 mn に対して、m = qn を満たす整数 q が唯一つ定まるとき、m ÷ n = q, q = m/n などと表して、mn整除(せいじょ)される、割り切れる(わりきれる、divisible)あるいは nm を整除する、割り切るなどと言う。[2]』と書かれているので0で割る場合は合理的な答えが存在しない(合理的な計算ができない)ので割算は定義されていない

上で説明したことを一言でいえば、0で割る計算は不合理ということだ。

0の割算が定義されていないのは数学の教育業者はもちろんのこと、ある程度数学を学んだものには常識だ。昨年に小学校で出された「9÷0=0 ?」という計算がネット上で話題になったらしいが、株式会社文理も小学校教師も正しく教えてほしい。

少し心配になったが、現在は本当に「9÷0=0」、「0÷0=0」と虚偽指導している小学校や学習書籍は存在するのか。株式会社文理の学習書籍は画像1、2のように虚偽発表しているので虚偽の学習書籍が存在していることは確かだ。なぜ「9÷0=0」、「0÷0=0」と虚偽指導しているのか全く理解できないが、小学生に誤った理解をさせることは許されない

参考
[1]株式会社文理:「数と計算 教科書ワーク 小学校3年用」 2013年12月19日閲覧。

画像3 「数と計算 教科書ワーク - 小学校3年」(出版 株式会社 文理)の表紙

[2]wikipedia:"除法" 2013.12.19 閲覧
[3]wikipedia:"ゼロ除算" 2013.12.19 閲覧
[4]windowsにインストールされている電卓で「0÷0」を実行すると「関数の結果が定義されていません。」と表示される。
[5]割算は「p=nq (ただし、q≠0)となるnがただ一つ定まるとき、p÷q=nと定める。」と定義されているが、「ただ一つ定まる」という条件は入れなくても当然成立する。

なぜなら、仮にn≠mでp=mqとなる数mがあったとする。p=nq=mqだから中辺と右辺をqで割ってn=m。これはn≠mと矛盾する。従って割算の答えは常に一つである

だから、私は割算の定義に答えが「ただ一つ定まる」という条件を入れなくてもいいと思うが、答えが複数ある場合は不合理なので除外されることを明示するために定義に入っているのだろう。

[6]0÷0の演算結果を認め、0÷0=任意の数が成立すると仮定する。

例えば0÷0=0、0÷0=1。したがって0÷0=0=1となり不合理。従って「0÷0=任意の数」は不合理。これを認めると全ての数が等しくなり不合理。

「0÷0の答えは任意の数」とする文献他1他2)があるが、「0÷0は定義できない」と考えるのが合理的
[7]同じことを背理法で示す。

[証明]

b÷0 (b≠0)の答えがあったとしてその数をcする。割算の定義から0×c = bを満たすが、b=0となる。これはb≠0に反する。従ってb÷0の答えは存在しない。

[証明終了]

「b÷0を計算せよ。ただし、b≠0である。」という問題は合理的な計算ができず不合理。合理的な答えがないのに「計算して答を出せ。」と要求されても無理である。故にこの場合は割算が定義できない。

[8]関連

[9]画像1ではさんこうで『0には「まったく何もない」という意味があります。÷には「分ける」という意味があります。このことから、0÷2は「まったく何もないものを、2つに分ける」と考えることができます。何もないわけだから、どのようにわけても、答えは0になります。[1]』と書かれているが私は違和感がある。何もない状態をどうやったら分けられるのだろうか?

例えばパンがないのにどうやってパンを2分割するのだろう?これができる方法があるならぜひ教えてほしい。私は存在しないパンを2分割することはできないと思う。画像1のさんこうの説明に従うと「0÷2 = 不可能」となってしまいそうだがそうではない。「何もない状態を分ける」という不合理なことで0を割ることを説明するからわけのわからないことになる。

上で述べたように割算の定義は「a÷b (ただしb≠0)の結果とはb×c = aとなる数cが唯一定まる時a÷b = cと定義する。」ということで、この定義に従えば「0÷2」は「2×0=0」で0以外に「2×c=0」を満たす数は存在しないから「0÷2=0」となる。

0の割算は定義に基づいて考えれば整合的に理解できる。

現実の例で説明するなら、次のようなこと。

例えば0÷2の場合は「一人あたり2個りんごを持っている。りんごのない皿の上にりんごが0個置かれた状態、即ち何もりんごがない状態を実現するには何人がりんごを置けばよいか。」ということ。誰もりんごを置かなくても皿の上にりんごはないから、答えは0人。従って0÷2=0。

0÷0を同様に考えるなら「一人あたり0個りんごを持っている。つまり誰もりんごを持っていない。りんごのない皿の上にりんごが0個置かれた状態、即ち何もりんごがない状態を実現するには何人がりんごを置けばよいか。」ということ。

誰もりんごを置かなくても皿の上にりんごはないから一つの答えは0人。現実的には持っていないりんごを置くことはできないので何も置けないが、「何も置かない」ことを「0個のりんごを置く」と解釈すれば、何人が0個のりんごを置こうと皿の上には何もない。従って0÷0の答えはどんな数でもよいとなりそうだ。

しかし、「0÷0=任意の数」を認めると全ての数が等しいことになり不合理なので割算の定義から除外されている。従って答えは「割算が定義されていない。」となる。