「将棋図巧」は江戸時代の棋士、初代伊藤看寿八段・贈名人(1719~1760)によって作成された詰将棋の作品集で、三代伊藤宗看七世名人の「将棋無双」と並び、江戸時代の詰将棋集の最高傑作とされる。特に将棋図巧中の最後の3作、裸玉、煙詰、寿などは有名。同作は神局ともいわれる。有名でいろいろな書籍で紹介されているので、将棋ファンなら知っている人はたくさんいるだろう。
ここでは煙詰(99番、1755年作)を紹介する。
図1 将棋図巧 99番 煙詰 の初期配置 [2]
煙詰とは自玉以外の39枚のすべての駒を盤上に配置し、最後に至るまでに詰め上がりに必要な3枚の駒以外すべて煙のように消えてしまう詰将棋。過程は[1]を見ていただくとして、最後は次のようになる。
図2 将棋図巧 99番 煙詰 の詰め上がり図 [2]
117手詰め。最初の配置からは想像もできない詰め上がり図だ。本当に見事だ。初代伊藤看寿が煙詰を発表してから約200年間に何人もの人が別の煙詰の創作に挑戦したが失敗したので創作は不可能かもしれないと思われていたが、「風ぐるま」昭和29年3月号に黒川一郎氏が発表した「落花」が煙詰の2作品目として紹介された。これ以降も続々と「煙詰」が発表された。
煙詰は詰みまでに不要な駒を全て消す必要があり、駒が消えるのは玉方が駒を取ったときのみなので、理論上の最小手数は36枚×2手+1手=73手。現在は新ヶ江幸弘作の「伏龍」の改作が75手で最小手。これは理論的下限に近い。
最長手としては『妖精2』(235手・添川公司作)など230手を超える作品もある。
本当にこういう作品や作家はすごいと思う。初代伊藤看寿の時代は詰将棋の作成にも力を入れていたと何かの文献で読んだことがあるが、こういう作品を作る人たちに敬意を表する。
参考
[1]詰将棋博物館のページ 第99番 煙詰 は左下。
[2]Wikipedia "煙詰" 2012.10.9