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世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

筑波大は2000年に藤井善隆の不正疑惑を本当に知らなかったのか?

2012-12-26 23:30:50 | 社会

『論文60本に不正確認 筑波大、講師の在職中
2012.12.26 14:30

 東邦大の藤井善隆元准教授=麻酔科医=の論文多数にデータ捏造があったとされる問題で、筑波大は26日、藤井氏が講師として在職中に発表した論文60本に不正があったことを確認したと発表した。

 日本麻酔科学会のこれまでの調査では、藤井氏の論文212本のうち、少なくとも171本に不正があったとしている。

 筑波大によると、藤井氏は1997~2005年に在職。発表した論文103本のうち臨床研究に関する60本に、実際には得ていない倫理委員会の承認を得たと記載するなどの虚偽があった。

 不正がなかったのは動物実験に関する5本で、残りは不正の有無を判定できなかった。藤井氏は2本について改ざんを認めたが、その他は認めていないという。[1]』

藤井善隆が筑波大に所属していた時の論文でも大量の不正が確認された。しかし私が問題にしたいのはそれではない。藤井の不正が明るみになったとき、『米国の専門誌が00年にも不正の疑いを指摘していたのに、藤井医師が97~05年に講師で在籍した筑波大は疑惑について調査していなかったことが分かった[3]』と報じられ、同記事で筑波大は『現在、大学内で00年当時の対応を含めて調査を進めている。調査が終わったらきちんと結果を公表する[3]』と回答した。

しかし、[2]をみても2000年に不正の指摘を受けたのに調査をしなかったことについては何ら言及されていない。この件については毎日の取材に対し「当時の上司が口頭で注意したのみで、大学側は関知していなかった。もし把握できていたら調査していた[6]」と回答した。

大学側が関知していなかったというのは嘘くさい。[3]では『海外の専門家が、不正を疑う文章を00年4月発行の米専門誌「アネステジア&アナルジジア(麻酔学と無痛学)」に投稿した。・・・ 筑波大の関係者によると、この投稿がきっかけとなって藤井医師への疑惑が学内に広がったというが、大学によると、学内で調査は行われなかった。』

学内中に疑惑が広まったのに大学が疑惑を関知していなかったということはないだろう。上司も口頭注意しただけだったので、不十分な対応だったといえる。不正疑惑を認知したのだから、監督責任としてもっと上に報告して調査を促す等の行動をしなければならなかったのにしなかった。やはり問題をわざと避けていたという印象を受ける。

この問題は不正を指摘されても調査しなかったことなど不正の問題をわざと避けてきた筑波大や研究者等の悪い体質が重大な問題だ。[2]では過去に比べれば規定ができているから不正の防止が実現できるという趣旨の記載がある。これも今では不十分な対処だと思う。東北大や東邦大のように規定があっても不正を認めなかった事例もいくつか存在する[4]。規定を作るだけでは実効性が担保されないのは過去の事例から明らかだが、筑波大はそれについてどう考えているのか。

この質問をすれば筑波大は「他大はそうかもしれないが、本学ではそういうことは決してない」と答えるかもしれない。しかし、それは同じことを東邦大や東北大に尋ねても同じ返事をするだろう。それでも都合が悪ければ規定を守らない。2000年に不正が指摘され学内中に疑惑が広まっていたにも関わらず大学は知らなかったなどと不合理な説明した筑波大の対応をみると、都合が悪いので嘘の弁明をしている印象を受け、規定ができても東北大や東邦大と同じではないかと感じる。そもそも大学が当事者となっている問題を自分たちで判断させても構造的に適切な判断を期待できない。被告発者が自分で不正の判断をするようなものだ。前から何度もいっているが、こうした問題はきちんと第三者機関が判断しなければならない。

規定は単に作るだけでなく実効性が担保される仕組みもあわせて作らなければだめだ。

そのためには監督機関である文科省や資金配分機関である日本学術振興会が積極的に動かなければならない。違反に対しては予算停止、返還要求など何か罰則を与える仕組みや強制的に調査する仕組みを作るのは一つの方法として考えられるだろう。少なくとも今のように被疑者の所属機関に丸投げして何もしない態度では絶対にだめだ。

[2]の防止策もお決まりの防止策を述べているだけという印象を受け、根本的な問題改善になっていないと思う。結局同じことが繰り返されるということか。その都度不正の問題をわざと避けたり、「自分たちには責任はない」といって責任逃れをするのだろう。何も変らない。

次回は筑波大が抱えるもう一つの不正問題について紹介する。筑波大としては不正防止の十分な対応策を出した直後に、仮に不正の隠蔽や激甘処分などが行われたら大笑いだ。決してそういうことがないといい。

参考
[1]msn 産経ニュース 2012.12.26
[2]筑波大学の調査結果ページ資料 2012.12.26
[3]毎日新聞 2012.6.25
[4]東北大学の井上明久前総長の事件は不正行為の対応規定があっても、告発が何度も不受理となり、受理の段階で特別の対応委員会で調査されるなど規定が全く守られなかった。

藤井の当時の所属機関・東邦大でも文科省のガイドライン等では生データ等の不存在で不正の疑いを覆せないときは不正と認定するという規定がありながら、生データの不存在が立証されても捏造を認定しなかった。
[5]世界変動展望 著者:"筑波大学、藤井善隆への不正告発を握りつぶし!" 世界変動展望 2012.6.26
[6]毎日新聞の記事 2012.12.26

『論文捏造:元東邦大准教授 筑波大が60本「不正」と認定

毎日新聞 2012年12月26日 20時05分

 元東邦大准教授の藤井善隆医師(52)が書いた麻酔学の論文の大半が捏造(ねつぞう)だった問題で、筑波大は26日、藤井医師が在籍していた97~05年の論文103本のうち60本を「不正」と認定したと発表した。藤井医師はすでに退職しているため、処分は見送るという。

 この問題は今年4月、国内外の専門誌の編集長が連名で疑問を表明したことから表面化。藤井医師が所属していた日本麻酔科学会が6月、「論文212本のうち172本に捏造があった」と認定した。212本のうち筑波大時代のものが最多で、同大の調査委員会が不正の有無を調べた。

 その結果、患者対象の臨床研究を基にした60本は、事前に義務づけられた実施の承認を得ていなかったのに、得たように記載していた。5本は、藤井医師とは別の研究者が責任著者で、不正がないことを確認した。残り38本については「データが本物と証明できない」と判断を保留した。

 藤井医師は調査に対し、不正認定された60本のうち2本についてのみデータの改ざんなどを認めたが、承認をめぐる虚偽記載は認めず、38本についても不正を否定している。

 「不正なし」と認定された5本は、同大が責任著者から実験ノートの提出を受けて調べたところ、実験で使った動物の数が、同大が提供した頭数の記録と一致したという。

 同大在籍中の00年、米国の専門誌が藤井氏の論文に疑義を呈していたが、調査されなかった。これについて同大は26日、「当時の上司が口頭で注意したのみで、大学側は関知していなかった。もし把握できていたら調査していた」と述べた。【久野華代】』